国際関係
条約に入った国でも、一部の条項を適用しないことがある?
条約へ入るとき、一部の条項の適用を除外したり変更したりしようとする「留保」を付ける国があります。ただし、どんな留保も許されるわけではありません。条約の規定と趣旨・目的、他国の受諾や異議を読み、国どうしの約束の範囲を確かめます。
基本の用語
同じ条約の締約国になったことと、各国が全く同じ範囲の義務を負うことは同じではありません。条約本文に加え、参加時の声明を読む意味があります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 条約に署名したら、すぐその国の義務になる?署名の効果と、批准等が必要かを条約本文で読む。
留保は条項の適用を変えようとする
ウィーン条約法条約の留保は、署名、批准、受諾、承認、加入の際に国が出す一方的な声明です。その国への適用について、特定の条項の法的効果を除外又は変更しようとします。「この条項をこの範囲では適用しない」という内容なら、義務の範囲へ関わることが分かります。
留保かどうかは、文書の名前だけでなく、何の効果を意図しているかで見ます。条約を自国がどう解釈するか述べた声明と、適用する義務を変えようとする声明は同じとは限りません。「声明を出した」という見出しから、直ちに条項の適用が除かれたと読むことはできません。
この仕組みを理解すると、締約国数だけでなく、特定国の留保も読む理由が見えます。一つの国が参加しているかという問いと、ある条項がその国と相手国の関係でどう適用されるかという問いは別です。署名や批准の時期だけを確認して終わらないようにします。
どんな留保でも許されるわけではない
留保は国が自由に義務を選び直す制度ではありません。条約自体が留保を禁止している場合、特定の留保だけ認めていてそれに当たらない場合、条約の趣旨・目的と両立しない場合には許されません。最初に、その条約の留保についての規定を確認します。
「条約が明示的に禁じていない」という一つの情報だけでは十分ではありません。趣旨・目的と両立するかという条件もあるからです。逆に、一部の義務が変更されることだけで全ての留保を無効と決めることもできません。許される範囲は条約と留保の具体的な内容に依存します。
個別の人権条約などの留保を評価するときは、留保文のどの部分がどの条項に関わるかを読みます。条約に加入した国だから全ての留保が正当だとも、別の国が批判したからそれだけで法的効果が確定したとも言えません。許容性の問いを、政治的な賛否と区別します。
相手国の受諾と異議も読む
他の締約国が留保を受け入れたり異議を述べたりすると、その国どうしの条約関係にも関わります。条約法条約には留保を明示的に認めた場合や、全当事国の受諾が必要な場合、国際機関の設立条約の場合など、異なる条件が置かれています。全ての条約へ一つの答えを当てはめません。
一般の規則では、留保への異議があっても、異議国が反対の意思を明確に表さない限り、それだけで両国間の条約発効が妨げられるわけではありません。異議の有無だけでなく、条約関係を成立させない意思まで述べたかを読む必要があります。
適法に成立した留保の影響は、関係する国と条項の範囲で考えます。一国の留保が、他の締約国どうしの条項まで書き換えるわけではありません。ニュースでは留保した国、対象条項、相手国の反応、条約固有の条件という組合せを確認すると、影響を広げすぎずに説明できます。
三国が同じ条約に入るとき
架空の例
A国、B国、C国が、二つの義務を定めた条約に入る例を考えます。A国が一つの条項への留保を出し、条約上許され、B国との関係で成立したとします。A国とB国の間では、その条項について留保の範囲で効果が変わります。
このことから、B国とC国の間の同じ条項も変わったとは言えません。またC国が異議を述べた場合には、その文言と条約関係を否定する意思の有無を追加で読みます。留保が「一つ出た」という件数だけでは、三国の全ての関係を表せません。
持ち帰る見方
- 留保は、自国への条項の適用を除外・変更しようとする声明。
- 禁止規定、許容される留保、趣旨・目的との両立を確認する。
- 相手国の受諾や異議を含め、国どうしの関係ごとに読む。
次に広がる疑問
- 署名・批准・発効の違い
- 国際法の義務と履行
- 人権条約の履行を点検する仕組み
順番に読んでいる方へ
出典
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
留保は条項の適用を変えようとする
留保は締結時等の一方的声明で、特定条項の法的効果を自国への適用について除外又は変更しようとする。
- 対象
- 国家間条約の留保と、留保国・相手国間の条約関係:留保は条項の適用を変えようとする
- 条件
- 署名・批准・受諾・承認・加入時。名称でなく意図する効果
- 例外・限界
- 単なる解釈声明と必ず同じではない
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
どんな留保でも許されるわけではない
条約が禁じる留保、許容する留保以外のもの、条約の趣旨・目的と両立しない留保は許されない。
- 対象
- 国家間条約の留保と、留保国・相手国間の条約関係:どんな留保でも許されるわけではない
- 条件
- 条約固有の留保規定をまず読む
- 例外・限界
- 個別留保の許容性は具体的文言に依存
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
相手国の受諾と異議も読む
留保と他国の受諾・異議は国どうしの条約関係に影響する。異議だけで両国の条約関係が必ず消えるわけではなく、留保は他の締約国相互の条項を変更しない。
- 対象
- 国家間条約の留保と、留保国・相手国間の条約関係:相手国の受諾と異議も読む
- 条件
- 第19・20・23条に従う留保。条約関係を否定する意思表示の有無
- 例外・限界
- 全員受諾や国際機関設立条約の特別条件もある
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf