国際関係
条約を改正したら、参加国全部の義務が一度に変わる?
多国間条約の改正案に賛成が集まっても、すべての参加国が同じ日に新しい文章へ拘束されるとは限りません。一般則では改正合意に参加しない既存当事国を拘束しませんが、条約独自の改正方式もあります。提案、参加、拘束、国どうしの適用関係を分けて読みます。
基本の用語
解釈は条文の意味を読むこと、改正は合意で条文を変えることです。締結時に一部の適用を変えようとする留保とも違います。ここでは条約法条約の一般則と、条約固有の定めを分けます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 同じ条約の文章を、国が好きな意味に読んでよい?通常の意味、文脈、趣旨・目的を合わせて誠実に読む。
- 条約に入った国でも、一部の条項を適用しないことがある?留保は、自国への条項の適用を除外・変更しようとする声明。
改正の提案と拘束を分ける
ウィーン条約法条約第39条は、当事国の合意で条約を改正できるとします。どの文書への同意が必要かは、元の条約の改正条項も読む必要があります。条文を変更する提案が公表されたことだけで、元の義務がすでに消えたとは判断しません。
多国間条約について、別段の定めがなければ、全当事国間の改正案を全締約国へ通知します。各締約国には、案をどう扱うかの決定や、改正合意の交渉・締結に参加する権利があります。一部の国だけが話し合ったという情報から、全体の改正が完成したとはいえません。
交渉に参加できることと、改正後の義務に拘束される同意を示したことは別です。「改正を支持」「会議で採択」「改正合意へ参加」「発効」という発表が、それぞれどの段階を指すかを確認します。
国どうしの関係で適用文を読む
第40条の一般則では、改正合意の当事国にならない既存当事国は、その合意に拘束されません。改正に参加する国同士と、参加しない国との関係が残るため、条約名だけで適用する文章を決められない場合があります。
改正合意が発効した後に条約へ新しく入る国は、異なる意思を示さなければ、改正条約の当事国とされます。同時に、改正に拘束されない国との関係では未改正の条約の当事国とされます。新規参加国が一つ増えたという情報だけで、相手国ごとの適用関係が全部分かったわけではありません。
ただし第40条は条約に別段の定めがない場合の規則です。国連憲章のように、条件を満たす改正がすべての加盟国へ効力を生じる特則を、一般則で否定してはなりません。まず元の条約に改正手続があるかを読みます。
一部の国だけの変更にも条件がある
全体の改正とは別に、二国以上の当事国が自分たちの間だけで多国間条約を変更する合意があります。第41条は、条約が認める場合や、禁止せず所定の条件を満たす場合にこれを認めます。
禁止がない場合でも、他の当事国の権利の享受や義務の履行に影響せず、条約全体の趣旨・目的の実効的な実現を害さないことが必要です。原則として他の当事国へ変更の意図と内容を通知します。一部だけの合意だから全体の利益を無視してよい、という意味ではありません。
例えば改正に参加した二国間で新しい義務が適用されることと、未参加の相手との関係も新しくなることは別です。比較する組合せを変えると必要な文書が変わります。原条約と改正合意を手元に置き、相手国の参加状況をそろえて読むと、改正後の条約名だけを引用する説明よりも、どの条文が根拠なのかを具体的に示せます。制度を古い・新しいの二択だけにしません。
同じ条約名でも適用関係を確認する
A国、B国、C国が架空の条約の当事国で、A国とB国だけが改正合意に参加したとします。元の条約に特則がなく、第40条の一般則を使うなら、改正合意がC国を自動的に拘束するとは説明しません。
読者が確認するのは、改正前後の文章、元の改正条項、各国の参加と発効です。改正に賛成した国の数だけを足しても、A国とC国の間にどの約束が残るかまでは分かりません。
持ち帰る見方
- 元の条約の改正条項を先に読む。
- 改正合意への参加と国どうしの適用関係を確かめる。
- 一部の国の変更にも他国の権利等を守る条件がある。
次に広がる疑問
- 条約に署名したら、すぐその国の義務になる?
- 同じ条約の文章を、国が好きな意味に読んでよい?
- 条約に入った国でも、一部の条項を適用しないことがある?
- 国連憲章は、多数の国が賛成すれば変更できる?
順番に読んでいる方へ
出典
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
改正の提案と拘束を分ける
条約は当事国間の合意で改正できる。多国間条約の全当事国間での改正案は原則として全締約国へ通知し、各国に決定と交渉・締結へ参加する権利がある。
- 対象
- 国家間の書面条約。第4条による時間的適用と、独立して働く国際法規則の適用を区別する。
- 条件
- 条約に別段の規定がない場合の一般則。
- 例外・限界
- 参加できる権利は改正合意に拘束される同意と同一でない。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
国どうしの関係で適用文を読む
条約に別段の規定がない場合、改正合意に参加しない既存当事国は改正合意に拘束されない。改正後に参加した国も、別の意思を示さなければ改正に拘束されない国との関係では未改正条約の当事国とされる。
- 対象
- 国家間の書面条約。第4条による時間的適用と、独立して働く国際法規則の適用を区別する。
- 条件
- 本条の一般則と条約固有の改正方式を確認。
- 例外・限界
- 国連憲章第108条のような特則へ一般則を上書きしない。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
一部の国だけの変更にも条件がある
一部当事国間だけで多国間条約を変更する合意は、条約が認める場合又は禁止せず他国の権利・義務や全体の趣旨・目的の実効的実現を害さない場合に認められ、原則として他の当事国へ通知する。
- 対象
- 国家間の書面条約。第4条による時間的適用と、独立して働く国際法規則の適用を区別する。
- 条件
- 条約による許容、又は禁止なしと第41条1項(b)の二条件。
- 例外・限界
- 第41条1項(a)の場合、条約が通知について別段の定めを置くことがある。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf