統計の読み方

追跡が終わった人を、生存時間のグラフでどう扱う?

出来事が起きる前に追跡が終わった人は、その時点まで未発生と分かりますが、その後いつ起きるかは分かりません。生存分析ではこの打切りを、発生したとも永久に起きないとも扱いません。残る観察から曲線を推定する条件も確かめます。

基本の用語

生存分析は、死亡だけでなく再就職など、定義した出来事までの時間を扱います。「生存」はその出来事がまだ起きていないという意味で使われます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

分かった時間と、その後を分ける

ある人を6か月追跡し、その間に出来事が起きなかったとします。分かるのは出来事までの時間が6か月より長いことで、何か月なのかは未確定です。このように観察が終わる側へ時間の情報が限られることを、右打切りと呼びます。

研究全体が予定の日に終わる場合も、途中で連絡が取れなくなる場合も、出来事を最後まで観察できないことがあります。ただし打切りの理由は同じではありません。開始日、定義した出来事、観察できた最後の時点をそれぞれ記録します。

観察終了を出来事発生と置くと、知らない発生時刻を作ってしまいます。反対に終了後もずっと未発生と置けば、観察していない時間の結果を決めたことになります。打切りは情報ゼロではなく、そこまで未発生という部分情報です。

各時点で観察できる人を比べる

Kaplan–Meier、カプラン・マイヤー推定では、各時点でまだ未発生かつ観察中の人を分母に、次の区間を未発生で過ごす割合を計算します。その条件付き割合を順に掛けて、生存曲線を推定します。出来事発生のたびに曲線が下がる形になります。

打切りは、出来事として曲線を下げる理由にしません。ただし、その人の打切り後の未観測時間は、その後に観察できる人数の分母へ入れません。全員の最初の人数を固定して、最後まで観察できた人だけを分子にする方法とも違います。

ここでの分母は、各時点で結果を知ることのできる未発生の人の集まりです。追跡時間が人ごとに違う場合に、発生時点ごとの観察情報を利用します。実際の図を読む際は、時間軸、出来事の定義、時点ごとの観察人数も確認します。

観察が終わる理由を確認する

残る人から打切り後の分布を補うためには、打切りについて独立性などの条件が必要です。例えば状態の悪化した人ほど追跡から抜けるなら、観察が続く人だけで全員のその後を表せるとは限りません。計算法の名前だけで偏りは解決しません。

予定された共通の終了日と、状態に関わる途中脱落を分けます。また観察開始日が人ごとに違う場合も、その違いが結果へ関わらないか確かめます。独立な打切りを仮定する単純な方法例と、実研究の条件を区別して読みます。

調べたい出来事を不可能にする別の出来事、例えば病気の発症前の別原因の死亡も、普通の打切りへ無条件に入れません。何の確率を知りたいかが変わるからです。さらに二群の曲線の差が、介入の因果効果かは比較設計の別の問いです。

曲線の高さと観察情報を読む

曲線のある時点の高さを読む前に、追跡開始から何か月か、何を未発生としたかを確認します。後半の高さも、そこで観察できる人数と打切りの理由に支えられています。小さな架空例の推定値を現実の予後へ転用しません。

報告では打切りの定義、脱落の数と理由、時点ごとの分母、推定の不確かさを探します。見えている発生だけを人数で割るのでも、追跡を終えた人を全員失敗とするのでもなく、部分情報を使う方法と条件を一緒に読みます。

架空4人の曲線を計算する
  1. 1か月

    4人中1人に発生。未発生割合3/4

  2. 2か月

    1人が未発生で観察終了。曲線を発生として下げない

  3. 3か月

    観察中2人中1人に発生。3/4×1/2=37.5%

独立な打切り等を仮定した例。途中脱落の理由が結果に関わる場合は別の検討が要る。

4人の追跡を順に数える

架空の4人を時点0から追跡します。1か月で1人に出来事が発生すると、その区間を未発生で過ごす割合は3/4です。2か月で別の1人の観察が未発生のまま終わっても、発生として曲線を下げません。

3か月で、まだ観察中の2人のうち1人に発生すると、その区間の未発生割合は1/2です。生存率の推定は3/4×1/2=3/8、37.5%です。独立な打切り等を仮定した計算法の例で、実際の病気や就職の見通しではありません。

持ち帰る見方

  • 打切りは、その時点まで未発生という部分情報。
  • 各時点の未発生割合を掛けて曲線を推定する。
  • 打切りの理由と、推定に必要な条件を読む。

次に広がる疑問

  • 平均の変化と、同じ人の変化は同じ?
  • リスクが半分になったら、何人の結果が変わる?
  • 統計表の空欄や「―」は、ゼロという意味?
  • 二つの数字が一緒に動けば、原因が分かる?

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出典

  • Causal Inference: What If(Miguel A. Hernán / James M. Robins(著者サイト))https://miguelhernan.org/s/hernanrobins_WhatIf_19aug26.pdf

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

分かった時間と、その後を分ける

生存分析は出来事までの時間を扱い、右打切りでは観察終了まで未発生と分かるが、その後いつ発生するかは分からない。

対象
第17.1節pp.227~228
条件
開始日・対象出来事・追跡終了を定める
例外・限界
生存はその出来事が未発生という意味で、死亡だけに限定しない
  • Causal Inference: What If(Miguel A. Hernán / James M. Robins(著者サイト))https://miguelhernan.org/s/hernanrobins_WhatIf_19aug26.pdf

各時点で観察できる人を比べる

Kaplan–Meier推定は各区間の未発生条件付き割合を掛け合わせて生存曲線を推定する。打切りは発生として曲線を下げず、後のリスク集合から外れる。

対象
第17.2~17.3節pp.230~234
条件
打切り後の未観測を発生又は永続未発生と決めない
例外・限界
全体人数に対する追跡完了生存者の割合と別の推定
  • Causal Inference: What If(Miguel A. Hernán / James M. Robins(著者サイト))https://miguelhernan.org/s/hernanrobins_WhatIf_19aug26.pdf

観察が終わる理由を確認する

打切り後の分布を観察が続く人から補うには打切りについて独立性等の条件が必要で、状態に関わる脱落は選択の偏りを生じ得る。

対象
第17.1・17.3節、8.4~8.5節
条件
共通の終了日と途中脱落を区別、群比較の交絡は別に点検
例外・限界
competing eventを普通の打切りとして無条件に扱わない
  • Causal Inference: What If(Miguel A. Hernán / James M. Robins(著者サイト))https://miguelhernan.org/s/hernanrobins_WhatIf_19aug26.pdf