数字と報道

別の尺度で測った効果を、同じ大きさとして比べられる?

平均の差を標準偏差で割ると、元の単位が違う差を一定の尺度で表せます。ただし、どの標準偏差を使うかをそろえる必要があります。同じ効果量でも、元の差や実際の重要性まで同じになるわけではありません。

基本の用語

二つの集団の得点差を見比べるとき、得点の単位やばらつきが違えば、差の数字だけでは比較しにくくなります。標準化した効果量は、差が何個分の標準偏差に当たるかを表す方法です。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

平均差を標準偏差で割って比べる

独立した二群の平均差を表すCohenのdでは、両群のばらつきをまとめたプールした標準偏差を分母に使います。分母が正であることが必要です。どちらの平均からどちらを引くかで、符号の意味も決まります。

差を標準偏差で割るため、元の得点の単位は残りません。しかし、何を測った尺度かという意味まで消えるわけではありません。元の平均差、使った標準偏差、二つの群の設定を一緒に見ることが必要です。

前後比較では分母も変わる

同じ人の前後の値を比べる場合には、各人の差を使う方法があります。Cohenのdzは、その差の平均を、差の標準偏差で割ります。独立した二群の標準偏差をまとめた分母と同じものではありません。

前後の値の相関も、差のばらつきに関わります。二群比較と前後比較でどちらもdと呼ばれる値があっても、分母を確認せずに同じ意味で並べることはできません。研究の設計と、採用した定義を残します。

同じ数値でも元の差は同じとは限らない

効果量0.5は、採用した分母の標準偏差の半分に当たる平均差を意味します。同じ正の平均差でも、比較する集団のばらつきが大きければ、割り算の結果は小さくなります。

同じ効果量でも、元の尺度での差が同じとは限りません。標準化した値が同じだから、その尺度での変化や、異なる分野の成果の重要性まで等しいとは言えません。標準化の便利さと、元の単位で読む必要を分けます。

大きさの目安だけで重要性は決まらない

小・中・大などの効果量の目安は、全ての分野に共通する重要性の基準ではありません。例えば同じ標準化差でも、何を改善し、どの程度の差が実際に意味を持つかは対象によります。目安の分類だけで価値を決めないことが要点です。

統計的有意性と効果量も別の問いです。有意かどうかだけでは差の大きさや実用上の重要性は分かりません。どの平均差を、どのばらつきで割ったかを確認した上で、対象の意味と不確かさを考えます。

架空の例分母を明示して平均差を比べる
  • 尺度A

    平均差2点÷プールした標準偏差4点=0.5。

  • 尺度B

    平均差5点÷同じ定義の標準偏差10点=0.5。

独立した二群の比較を置いた例。同じ0.5でも、点数の意味や重要性が等しいとは限らない。

同じ0.5でも差の点数は異なる

架空の例

独立した二群の比較を二つ置きます。一方は平均差2点・プールした標準偏差4点、他方は平均差5点・同じ定義の標準偏差10点とします。どちらも平均差を分母で割ると0.5です。

前者の2点と後者の5点の意味は、それぞれの尺度で考えます。同じ0.5という計算は、成果の価値や変化した人の割合が同じだという計算ではありません。前後比較の差の標準偏差とも区別します。

持ち帰る見方

  • 平均差と分母の標準偏差を、研究の設計に合わせて確認する。
  • 同じ効果量でも元の差・実際の重要性・有意性を同一視しない。

次に広がる疑問

  • 差を割るばらつきの尺度を読む
  • 確率の差と比で変わる効果の表示を比べる
  • 差の大きさと有意性の問いを区別する

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出典

  • Calculating and reporting effect sizes to facilitate cumulative science: a practical primer for t-tests and ANOVAs(Daniël Lakens / Frontiers in Psychology)https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2013.00863/full

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

平均差を標準偏差で割って比べる

連続量の二群の平均差は、選んだ標準偏差で割ることで単位のない効果量にできる。独立した二群のCohenのdでは、平均差を両群の標準偏差から作るプールした標準偏差で割る。

対象
独立二群の平均差の標準化効果量。
条件
分子の群の順序と、プールした標準偏差という分母を指定する。分母は正。
例外・限界
リスク比・相関係数や、対応のある測定の全効果量と同じ計算ではない。
  • Calculating and reporting effect sizes to facilitate cumulative science: a practical primer for t-tests and ANOVAs(Daniël Lakens / Frontiers in Psychology)https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2013.00863/full

前後比較では分母も変わる

同じ人の前後を比べる対応のある測定では、差の標準偏差を分母にするCohenのdzなどがある。独立二群のdと対応ありのdzは分母が異なり、同じ値でも同じ意味とは限らない。

対象
対応のある測定と独立二群の標準化平均差。
条件
dzは各人の差の平均を、その差の標準偏差で割る。前後の相関は差のばらつきに関わる。
例外・限界
対応ありにはdz以外の標準化もあるため、記事や研究間で設計と分母を確認する必要がある。
  • Calculating and reporting effect sizes to facilitate cumulative science: a practical primer for t-tests and ANOVAs(Daniël Lakens / Frontiers in Psychology)https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2013.00863/full

同じ数値でも元の差は同じとは限らない

標準化効果量0.5は、指定した標準偏差の半分だけ平均が違うことを表す。同じ平均差でも比較する集団のばらつきが異なれば効果量は変わり、同じ効果量でも元の尺度での差が同じとは限らない。

対象
平均差を正の標準偏差で割った効果量。
条件
どの集団・尺度の標準偏差を使ったかをそろえて比較する。例えば差2/SD4と差5/SD10はいずれも0.5。
例外・限界
尺度が異なる効果量を比べただけで、健康・学力など異なる結果の価値を同じにできない。
  • Calculating and reporting effect sizes to facilitate cumulative science: a practical primer for t-tests and ANOVAs(Daniël Lakens / Frontiers in Psychology)https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2013.00863/full

大きさの目安だけで重要性は決まらない

効果量の大きさ、統計的に有意かどうか、現実に重要な差かどうかは別の問いである。小・中・大の目安だけで重要性を判断せず、元の単位の差や対象となる状況と合わせて読む。

対象
標準化平均差の解釈と報告。
条件
研究設計、分母、元の単位の差、推定の不確かさを区別する。
例外・限界
0.2・0.5・0.8などの慣用的な目安を、全分野に共通する価値判断や有意差の基準にはできない。
  • Calculating and reporting effect sizes to facilitate cumulative science: a practical primer for t-tests and ANOVAs(Daniël Lakens / Frontiers in Psychology)https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2013.00863/full