経済の基礎
需要が減っても、店はすぐ値下げしないのはなぜ?
価格を変えるには、需要を調べ、料金記録やラベルを更新する費用がかかります。そのため、需要が変わっても価格がすぐ動かず、先に販売量や生産が変わる模型があります。これが価格の硬直性です。永久に同じ価格を続けるという法則ではありません。
基本の用語
名目価格は円などの金額で表示した価格です。需要が減った時点と、店が新しい価格を決めて実行する時点を分けて考えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 商品の値段は、どう決まる?需要・供給モデルと使える条件
価格を変える作業にも、費用がかかる
値札を書き換えるだけなら、簡単に価格を変えられそうに見えます。しかし企業は、どの価格なら売れるかを調べ、商品ごとの採算を確認し、請求の記録や販売資料も直す必要があります。頻繁な価格変更が客を混乱させる負担も考えられます。価格を変える作業は、生産する作業と別に資源を使います。
こうした変更費用を、レストランが新しいメニューを刷る例からメニュー費用と呼びます。実際の店に紙のメニューがなくても、価格を再設定するための分析や更新に費用があれば、同じ論点になります。変更した場合の利益の増分がその費用に届かなければ、しばらく旧価格を維持する選択を置けます。
変更費用の額は、値下げの金額そのものではありません。値下げにより一個あたりの収入が減る効果は、新価格を選んだ場合の利益へ入れます。メニュー費用は、それとは別に分析や更新で必要な資源です。両者を同じ費用として足すと、比較を誤ります。また、一回の更新費と、一か月だけの利益増分を比べたのか、何か月も続く増分を比べたのかをそろえる必要があります。価格が残る理由を考えるときにも、価格差だけでなく調整の費用と時間を読むことが重要です。
価格が残れば、先に販売量が変わる
以前の価格のままで、買いたい人が減った場合には、その価格で売れる量が小さくなります。価格が直ちに下がる模型なら価格と数量の両方で調整を考えますが、価格が残る短期の模型では、販売量の減少が先に現れることがあります。値段が同じというだけで、商売の状態まで同じとは言えません。
売れ残りが増えれば、生産計画や働く時間を変える判断へつながりえます。ただし、これは需要低下と価格維持を置いた経路です。在庫の持ち方、売れない期間、設備や勤務の調整費用でも対応は変わります。すべての企業が値下げを避けるとも、販売量が必ず同じ率で減るとも決められません。
全体への波及と、個別店の判断を分ける
個別店にとって価格変更を待つことが有利でも、経済全体で多数の価格がゆっくり調整すれば、需要の不足が生産や雇用へ長く響く場合があります。短期の景気模型は、この違いを考えます。一店の経営判断と、全体の生産が元へ戻る速さは、範囲の異なる問いです。
価格の硬直性は、価格が供給と需要へまったく反応しないという意味ではありません。変更する便益が大きくなったり、通常の更新日が来たりすれば、調整することがあります。ニュースで価格が据え置かれたと聞いたら、販売量、変更の頻度、費用の対象期間を合わせて見ます。この模型だけでは、現在の不況の原因や必要な政策の規模までは判断できません。
架空の価格更新で、便益と費用を比べる
ある店は、価格を変えると次の一か月の利益が80円増えると見込みますが、料金記録などを直す費用が100円かかるとします。この比較なら差はマイナス20円で、今は旧価格を維持する理由があります。80円は需要を調べて置いた見込みで、値下げ幅だけから計算できる数字ではありません。
状況が変わり、同じ一か月の利益の増分を200円と見込むなら、更新費100円を引いても100円残ります。価格変更の費用があっても、いつまでも据え置くとは限らないことが分かります。比較期間をそろえ、将来の売上の見込みと実際の結果を区別します。
持ち帰る見方
- 価格の再設定にも資源を使い、販売量の変化が先に現れる場合がある。
- 個別の判断と全体への波及を分け、据置きの期間と費用を確認する。
次に広がる疑問
- 給料が下がりにくいことには、価格変更と違う理由もあるだろう?
順番に読んでいる方へ
出典
Principles of Economics 3e §25.2 The Building Blocks of Keynesian Analysis(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/25-2-the-building-blocks-of-keynesian-analysis
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
価格を変える作業にも、費用がかかる
価格変更には需要分析・料金記録・ラベル更新などのメニュー費用がかかるため、価格がすぐ動かない模型がある。
- 対象
- The Building Blocks of Keynesian Analysis のsticky prices / menu costs、Figure 25.4
- 条件
- 価格変更に分析・ラベル更新等の資源が必要で、需要低下後もしばらく名目価格が維持される。
- 例外・限界
- 永久に固定する法則ではない。実際の価格変更頻度や政策効果は推定しない。
Principles of Economics 3e §25.2 The Building Blocks of Keynesian Analysis(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/25-2-the-building-blocks-of-keynesian-analysis
価格が残れば、先に販売量が変わる
需要低下後もしばらく旧価格が続けば、その価格で需要される数量が減り、生産や雇用の調整へ関わる。
- 対象
- The Building Blocks of Keynesian Analysis のsticky prices / menu costs、Figure 25.4
- 条件
- 価格変更に分析・ラベル更新等の資源が必要で、需要低下後もしばらく名目価格が維持される。
- 例外・限界
- 永久に固定する法則ではない。実際の価格変更頻度や政策効果は推定しない。
Principles of Economics 3e §25.2 The Building Blocks of Keynesian Analysis(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/25-2-the-building-blocks-of-keynesian-analysis
全体への波及と、個別店の判断を分ける
多数の価格がゆっくり調整する短期の模型では需要不足の回復が遅れうるが、個別店の価格永久固定や特定政策の効果を示すものではない。
- 対象
- The Building Blocks of Keynesian Analysis のsticky prices / menu costs、Figure 25.4
- 条件
- 価格変更に分析・ラベル更新等の資源が必要で、需要低下後もしばらく名目価格が維持される。
- 例外・限界
- 永久に固定する法則ではない。実際の価格変更頻度や政策効果は推定しない。
Principles of Economics 3e §25.2 The Building Blocks of Keynesian Analysis(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/25-2-the-building-blocks-of-keynesian-analysis