経済の基礎
来週なら我慢できるのに、今日だと先延ばしするのはなぜ?
未来の二つの選択肢なら待つ方を選ぶのに、一方が今日になるとすぐ受け取る方へ変えることがあります。現在偏重の模型は、今日と未来の間だけを特に重く割り引くことで、この逆転を説明します。新しい情報や生活の事情で予定を変えた場合とは分けて考えます。
基本の用語
先の便益を小さく評価することを割引と呼びます。将来の予算が足りるかという問題と、同じ予算でもいつの便益を好むかという問題は別です。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 貯蓄や借入は、今日と将来の買い物をどうつなぐ?借入と貯蓄は、消費を時期の間で移す。
- 無料でも費用があるとはどういうこと?代金がゼロでも、時間や資源の別の使い道は失われる。
未来同士の比較と、今日の比較が違う
今日の1,000円と来年の1,000円を同じと考えないことだけでは、現在偏重とは言えません。通常の指数割引でも、時間が遠いほど便益の重みは小さくなります。ポイントは、待つ期間が同じ二択なのに、両方が未来にある場合と、一方が今日になった場合で、比較の重みが変わるかです。
準双曲割引の模型では、未来の便益には通常の時間の割引に加えて、今日から未来へ移る段階で追加の割引を置きます。未来同士では両方にその追加割引が掛かるため、相対的な比較には同じ形で効きます。ところが、一方が今日へ近づくと、その便益には追加割引を掛けなくなり、好む選択が逆転しえます。
予定を変えることと、時間不整合を分ける
このように、新しい情報や条件の変化がなくても、以前立てた計画と、実行時に好む選択が食い違うことを時間不整合と呼びます。遠い日に勉強をする計画を立て、当日には目の前の楽しみを優先するという場面も、同じ構造を置ける例です。ただし、一度先延ばししただけで原因は確定しません。
急な仕事、体調、必要な支出などが変われば、合理的に予定を変更する理由があります。後の自分が知った情報を無視して、すべての変更を意志の弱さと評価するのは適切ではありません。模型を使うときは、同じ選択肢、同じ便益と費用、同じ予想を置いた比較であることを確かめます。
通常の割引だけで比較する場合との違いも確かめられます。例えば一日先の便益を0.9倍にするだけなら、今日の1,000円と翌日の1,200円は1,000対1,080で、待つ方を好みます。両方が遠い日にあっても、二つに同じ日数分の割引が掛かるので、この順位は変わりません。現在偏重の例では、今日になった便益だけが追加割引から外れることが逆転の理由です。便益が遠いほど小さいという性質だけで、時間不整合を説明したつもりにならないようにします。
先に自分を縛る方法にも、費用がある
自分が当日に選択を変えると予想すれば、前もって予定を守る仕組みを欲する場合があります。後では使いにくい形でお金を置く、期限を先に決めるなど、将来の選択肢を制限する方法をコミットメントと呼びます。今の自分と後の自分の選択をそろえるための工夫です。
ただし拘束は無料ではありません。予想外の必要が生じたときに使えるお金や時間を減らすことがあります。また、自分の選択をどれほど見通せるかによって、仕組みを求めるかも変わります。現在偏重があるなら厳しく縛るほどよい、という結論ではありません。守りたい目的と、失う柔軟性を合わせて比べます。
- 7日前に選ぶ
1,000円の評価500、1,200円の評価600 → 後を選ぶ
- 受取当日に選ぶ
今日の1,000円の評価1,000、翌日の1,200円の評価600 → 今日を選ぶ
今日以外の便益に半分の重みを置き、短期間の通常割引は省略。
架空の重みで、選択の逆転を確かめる
短い期間の通常の割引は省き、今日以外の便益をすべて半分の重みで評価するとします。今日、7日後の1,000円と8日後の1,200円を比べると、評価は500と600で、8日後を選びます。
7日後になると、今日の1,000円は1,000、翌日の1,200円は600と評価し、今日を選びます。金額や受取日は変わらず、いつを現在とするかだけが違います。半分は説明用の仮定で、個人の割引率を推定した数字ではありません。
持ち帰る見方
- 未来を割り引くことと、今日だけを特に重く見ることを区別する。
- 予定変更の情報を確かめ、拘束策の便益と柔軟性の負担を比べる。
次に広がる疑問
- 初期設定に従う選択にも、判断を後回しにすることが関わるだろう?
順番に読んでいる方へ
出典
Lectures 3 and 4: Time Preference (Theory), MIT 14.13 Spring 2020(Frank Schilbach/MIT OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/14-13-psychology-and-economics-spring-2020/cbf97eb1c56637d630a791e13cd80872_MIT14_13S20_lec3_4.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
未来同士の比較と、今日の比較が違う
準双曲割引の模型では現在から未来への便益に追加割引を置き、将来同士の比較と今日を含む比較が違う。
- 対象
- PDF pp.28–29 Dynamic consistency、pp.40–42 Quasi-hyperbolic discounting、pp.46–51 Sophistication / Commitment
- 条件
- 準双曲割引で現在と未来の間に追加割引、未来同士では共通の指数割引。予想と事情を固定。
- 例外・限界
- 新情報・生活制約で予定が変わることと区別。全員に現在偏重を仮定せず拘束策の負担も考える。
Lectures 3 and 4: Time Preference (Theory), MIT 14.13 Spring 2020(Frank Schilbach/MIT OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/14-13-psychology-and-economics-spring-2020/cbf97eb1c56637d630a791e13cd80872_MIT14_13S20_lec3_4.pdf
予定を変えることと、時間不整合を分ける
新情報等を固定しても日が近づくと好む選択が逆転する場合が時間不整合であり、単に先の便益を小さく見ることとは違う。
- 対象
- PDF pp.28–29 Dynamic consistency、pp.40–42 Quasi-hyperbolic discounting、pp.46–51 Sophistication / Commitment
- 条件
- 準双曲割引で現在と未来の間に追加割引、未来同士では共通の指数割引。予想と事情を固定。
- 例外・限界
- 新情報・生活制約で予定が変わることと区別。全員に現在偏重を仮定せず拘束策の負担も考える。
Lectures 3 and 4: Time Preference (Theory), MIT 14.13 Spring 2020(Frank Schilbach/MIT OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/14-13-psychology-and-economics-spring-2020/cbf97eb1c56637d630a791e13cd80872_MIT14_13S20_lec3_4.pdf
先に自分を縛る方法にも、費用がある
現在偏重を自覚して事前に選択を拘束するコミットメントの需要が生じうるが、柔軟性を失う負担もある。
- 対象
- PDF pp.28–29 Dynamic consistency、pp.40–42 Quasi-hyperbolic discounting、pp.46–51 Sophistication / Commitment
- 条件
- 準双曲割引で現在と未来の間に追加割引、未来同士では共通の指数割引。予想と事情を固定。
- 例外・限界
- 新情報・生活制約で予定が変わることと区別。全員に現在偏重を仮定せず拘束策の負担も考える。
Lectures 3 and 4: Time Preference (Theory), MIT 14.13 Spring 2020(Frank Schilbach/MIT OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/14-13-psychology-and-economics-spring-2020/cbf97eb1c56637d630a791e13cd80872_MIT14_13S20_lec3_4.pdf