数字と報道

同じ人の前後を比べるとき、二つの独立した集団として計算してよい?

同じ人の前後の値は対応させ、一人ごとの「後−前」を作って平均差を調べます。精度の計算に使うのも、この差のばらつきとペア数です。前後の二列を別々の人の集団として扱う計算とは異なります。

基本の用語

平均の変化と、個人の変化は別の問いです。ここでは両時点で測れた同じ対象の二つの数値を扱い、各対象の差の平均を考えます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

一人ごとの差を作る

研修前後の得点を比べるなら、同じ人の前後を一組にします。人ごとの「研修後−研修前」を計算し、その差の平均を調べます。対応する人が同じなら二列の平均の差も同じになりますが、精度を求める際に必要なばらつきは違います。

もともと高得点の人と低得点の人が混ざっていても、一人の中の差なら、その人がどちらの列にいるかを取り違えません。前後の得点の散らばりと、前後差の散らばりを区別します。対応を消して並べ替えると、差のばらつきの計算に必要な情報を失います。

同じ人数を二回調べたことだけでは対応データになりません。別々の回答者なら対応のない二集団の比較で、観測の独立性は別に確認します。二つの地域から似た対象を一対ずつ選ぶ設計などでは、何を根拠に一組としたかを記録します。対応があると呼ぶ前に、ペアの定義を確認します。

精度は差のばらつきから計算する

対応t検定は、差の母平均が指定した値と等しいかを調べる方法です。差の標本平均から仮定した母平均を引き、差の標本標準偏差をペア数の平方根で割った標準誤差で比べます。平均差を何点と推定したかと、その推定の精度を一緒に示します。

同じ人を二度測った20組は、差が20個の標本です。40人を独立に測った標本ではありません。通常の対応t検定の自由度はペア数−1です。対応する二つの値の関係を無視して独立な二群の公式を使うと、研究設計と計算の前提がずれます。

この方法ではペア間の独立性などを置きます。小標本の正規模型で確かめるのは、差の分布です。前の値と後の値をそれぞれ描くだけでは、極端な対応差がないかを十分に見られません。差の一覧や分布と、差ができた理由も確認します。

差の分布と設計を確認する

差が精密に推定できても、その間に起きた変化をすべて研修の効果とできるわけではありません。前後だけの比較には、研修以外の同時変化が入り得ます。対応は計算の設計であり、支援がなかった場合との比較を自動的に作るものではありません。

実際の報告には、前の平均、後の平均だけでなく、平均差の区間を探します。前後で対象人数が違う表なら、そのままペアの平均差の表と読めません。差を計算できた組の人数を表の近くに示すと、どの対象の変化をまとめたかが分かります。

両時点で記録がある人だけを集計した場合、最初の全参加者と分析対象が違うこともあります。報告では、誰の平均差なのか、何組が残ったかを読みます。全参加者の改善と、測定を完了した人の平均差を、同じ表現でまとめないようにします。

まずペアの作り方と差の向き、次に差の平均とばらつき、最後に原因の比較設計を見ます。差が有意でない場合も変化ゼロの証明ではありません。対応データだからと安心せず、何を推定した数字かを一文で言えることが判断の出発点です。

前後の値から対応差を作る
  1. 対応づけ

    同じ対象の前と後を一組にする

  2. 差を作る

    各組で後−前を計算する

  3. 差をまとめる

    差の平均と差のばらつき、ペア数を見る

模型と用途を区別する説明図です。実際の調査や測定の結果を示していません。

研修得点4組の対応差(架空)

4人の得点を、前は40、60、80、100点、後は45、64、86、105点とします。差は5、4、6、5点で、平均差は5点です。二列は大きく散らばっていますが、対応差は4〜6点に集まっています。

前後各4人の計8測定を、独立な8人と数えません。差を4組の情報として扱います。この小例は差の作り方を示すだけで、正規性や研修の因果効果を検証した結果ではありません。

持ち帰る見方

  • 対応差を作り、人数とペア数、統計の条件と政策効果の条件を分けられる。
  • 前後差の統計的検定は、同時の別要因を除く因果識別を自動的には与えない。

次に広がる疑問

  • 前後で特に悪かった人だけを選ぶと、対応差はどう変わる?

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出典

  • Introductory Statistics 2e §10.4 Matched or Paired Samples(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/10-4-matched-or-paired-samples

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

一人ごとの差を作る

対応のある二つの観測では、ペアごとの差を作り、その差の母平均を推定・検定する。

対象
同じ対象の前後測定など、対応する二つの値の差の母平均。
条件
同じ人や事前に対応させた組の観測。差の向きを固定する。
例外・限界
同人数の二集団が自動的に対応データになるわけではない。
  • Introductory Statistics 2e §10.4 Matched or Paired Samples(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/10-4-matched-or-paired-samples

精度は差のばらつきから計算する

対応t検定では差の標本平均、差の標本標準偏差、ペア数を使い、自由度はペア数−1となる。

対象
対応する観測の差を使うt検定。標本数は測定値の個数ではなくペア数。
条件
ペア間の独立性、差の分布についてt推論に合う条件を置く。
例外・限界
同じ人の前後二観測を独立な二人分として数えない。
  • Introductory Statistics 2e §10.4 Matched or Paired Samples(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/10-4-matched-or-paired-samples

差の分布と設計を確認する

小標本の対応t検定では、元の各測定値だけでなく、対応差が正規母集団から来るという条件を確認する。

対象
小標本の対応t検定における、ペアごとの差の分布。
条件
小標本の正規模型。
例外・限界
前後差の統計的検定は、同時の別要因を除く因果識別を自動的には与えない。
  • Introductory Statistics 2e §10.4 Matched or Paired Samples(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/10-4-matched-or-paired-samples