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数値の測り間違いは、平均すれば全部消える?

全ての測り間違いが平均で消えるわけではありません。平均が0の偶然誤差と、同じ方向に残るずれは違います。説明変数に誤差がある回帰では、観測数を増やしても推定の偏りが残る模型もあります。

基本の用語

測定値は、知りたい真の値に誤差が加わったものとして考えられます。誤差の平均、ほかの変数との関係、何を測った値なのかによって、平均や回帰に与える影響は異なります。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

平均で小さくなるばらつきと、残るずれ

同じ真値を繰り返し測り、誤差が独立・同一分布で平均0、有限の分散を持つなら、平均することで誤差のばらつきを小さくできます。個々の測定が正確になるという意味ではなく、平均した測定値の性質です。

測定器の目盛りが一定量ずれているような系統的なずれは、繰り返し測定しても同じ方向に残ります。多く測ったというだけで、誤差の平均が0だったことや、ずれが取り除かれたことは確認できません。

説明する側の測定誤差は残差にも入る

真の説明変数をX、測定誤差をeとすると、観測した説明変数はXobs=X+eです。元の模型をY=β0+β1X+uとし、uはその模型に残る誤差とします。XをXobs−eへ置き換えるとY=β0+β1Xobs+(u−β1e)です。測定誤差eは新しい残差にも入ります。

このため、観測した説明変数と残差との関係を、真値を測った場合と同じだと仮定できません。誤差を含むXobsで回帰して観測数を増やすことと、真のXを正確に測ることは、別の対応です。

単回帰では条件付きで傾きが縮む

古典的な単回帰の模型では、観測は独立・同一分布で、推定の収束に必要な平均・分散などが有限になる条件を置き、真値と元の回帰誤差は無相関とします。eの平均は0で、真値と元の回帰誤差の双方と無相関、真値の分散は正で、eの分散も有限という条件を置きます。

この下で傾きの推定値は、真の傾きに「真値の分散÷(真値の分散+測定誤差の分散)」を掛けた値へ近づきます。測定誤差の分散が正で真の傾きが0でなければ、0に近い方向へ縮みます。有限標本の毎回の推定値が必ず縮むという意味ではありません。

誤差があれば全部小さめになるとはいえない

この縮みを、測定誤差がある全ての分析へ当てはめることはできません。複数の説明変数を使う場合や、結果・交絡要因に誤差がある場合などでは、誤差の構造とほかの変数との関係を別に調べます。

一般には、誤差があるから必ず効果を小さく見積もる、という一方向の結論は出せません。対象となる値を検証できる資料なども使い、何がどう測り違えられ、採用した模型の条件が成り立つかを考える必要があります。

標本を増やしても残る傾きの違い

架空の例

単回帰の前述の条件を満たす模型で、真値の分散を4、測定誤差の分散も4、真の傾きを2と置きます。観測した説明変数で求める傾きは、観測数が増えると2×4÷(4+4)=1へ近づきます。

観測数を増やして2へ戻るという模型ではありません。ただし有限の標本で推定した値が毎回ちょうど1になるわけでもありません。反復測定の平均、観測数の増加、誤差を含む回帰を分けて考える例です。

持ち帰る見方

  • 平均0の偶然誤差と、同じ方向に残るずれを区別する。
  • 回帰の偏りの方向は、測る変数と誤差の構造・模型条件に合わせて判断する。

次に広がる疑問

  • 質問の意味を回答者へ正しく伝える検証を読む
  • 測定した変数で条件をそろえる回帰を読む
  • 選ぶ対象によって生じる偏りと比べる

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出典

  • Central Limit Theorem and the Law of Large Numbers, Class 6, 18.05(Jeremy Orloff and Jonathan Bloom / MIT OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/18-05-introduction-to-probability-and-statistics-spring-2022/mit18_05_s22_class06-prep-b.pdf

    確認日:2026-10-05

  • Introduction to Econometrics with R — 9.2 Threats to Internal Validity of Multiple Regression Analysis(Christoph Hanck, Martin Arnold, Alexander Gerber, Martin Schmelzer / University of Duisburg-Essen)https://www.econometrics-with-r.org/9.2-ttivomra.html

    確認日:2026-10-05

  • Introduction to Econometrics with R — 6.4 OLS Assumptions in Multiple Regression(Christoph Hanck, Martin Arnold, Alexander Gerber, Martin Schmelzer / University of Duisburg-Essen)https://www.econometrics-with-r.org/6.4-ols-assumptions-in-multiple-regression.html

    確認日:2026-10-05

  • Causal Inference: What If(Miguel A. Hernán / James M. Robins(著者サイト))https://miguelhernan.org/s/hernanrobins_WhatIf_19aug26.pdf

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

平均で小さくなるばらつきと、残るずれ

同じ量を測る際の独立な平均ゼロの誤差は、条件を満たせば測定を平均することで小さくできる。一方、測定器がいつも同じ方向へずれるなら、測定回数を増やしてもそのずれは残る。

対象
固定した真値を繰り返し測る加法的誤差モデル。
条件
偶然誤差が独立・同分布で平均ゼロ、有限分散を持つ場合と、一定の校正ずれがある場合を比べる。
例外・限界
異なる対象を大量に一回ずつ測ることと、同じ真値を繰り返し測って平均することは同じ操作ではない。
  • Central Limit Theorem and the Law of Large Numbers, Class 6, 18.05(Jeremy Orloff and Jonathan Bloom / MIT OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/18-05-introduction-to-probability-and-statistics-spring-2022/mit18_05_s22_class06-prep-b.pdf

説明する側の測定誤差は残差にも入る

回帰の説明変数を誤差のある観測値に置き換えると、その測定誤差が回帰の残差にも入り、観測された説明変数と残差が関連することがある。観測数を増やすだけでは、この推定上の問題を解消できない。

対象
真値Xでの線形モデルY=β0+β1X+uと、観測値Xobs=X+eを使う単回帰。
条件
残差はu−β1eとなる。真値と元の回帰誤差が適切に無相関でも、Xobsに含まれるeは新しい残差にも含まれる。
例外・限界
測定誤差がない場合やβ1が0の場合など、必ず偏りが発生するとは限らない。
  • Introduction to Econometrics with R — 9.2 Threats to Internal Validity of Multiple Regression Analysis(Christoph Hanck, Martin Arnold, Alexander Gerber, Martin Schmelzer / University of Duisburg-Essen)https://www.econometrics-with-r.org/9.2-ttivomra.html

  • Introduction to Econometrics with R — 6.4 OLS Assumptions in Multiple Regression(Christoph Hanck, Martin Arnold, Alexander Gerber, Martin Schmelzer / University of Duisburg-Essen)https://www.econometrics-with-r.org/6.4-ols-assumptions-in-multiple-regression.html

単回帰では条件付きで傾きが縮む

古典的な単回帰の測定誤差モデルでは、傾きの推定値は、真値の分散を「真値の分散+測定誤差の分散」で割った割合を真の傾きに掛けた値へ近づく。測定誤差の分散が正で真の傾きが0でなければ、0に近い方向へ縮む。

対象
一つの説明変数を持つ線形回帰の古典的測定誤差モデル。
条件
観測は独立・同分布で必要な有限モーメントを持つ。真値と元の回帰誤差は無相関。eは平均ゼロで、真値と元の回帰誤差の双方と無相関。真値とeの分散は有限で、真値の分散は正。
例外・限界
測定誤差の分散が0なら縮まらず、有限標本の全推定値が必ず真値より0に近いという意味ではない。
  • Introduction to Econometrics with R — 9.2 Threats to Internal Validity of Multiple Regression Analysis(Christoph Hanck, Martin Arnold, Alexander Gerber, Martin Schmelzer / University of Duisburg-Essen)https://www.econometrics-with-r.org/9.2-ttivomra.html

  • Introduction to Econometrics with R — 6.4 OLS Assumptions in Multiple Regression(Christoph Hanck, Martin Arnold, Alexander Gerber, Martin Schmelzer / University of Duisburg-Essen)https://www.econometrics-with-r.org/6.4-ols-assumptions-in-multiple-regression.html

誤差があれば全部小さめになるとはいえない

測定誤差が推定結果をどの方向へ動かすかは、何をどのように測り間違えるかと推定モデルによる。古典的単回帰の縮小則を、あらゆる誤差や多変量回帰の全係数へ一律に当てはめることはできない。

対象
測定誤差の構造と推定モデルの適用範囲。
条件
説明変数の誤差が真値や結果と関連する場合などは、単回帰の古典的仮定から外れる。
例外・限界
一般の測定誤差では関連が0に近づく場合も離れる場合もあり、因果図だけでは偏りの量は定まらない。
  • Causal Inference: What If(Miguel A. Hernán / James M. Robins(著者サイト))https://miguelhernan.org/s/hernanrobins_WhatIf_19aug26.pdf

  • Introduction to Econometrics with R — 9.2 Threats to Internal Validity of Multiple Regression Analysis(Christoph Hanck, Martin Arnold, Alexander Gerber, Martin Schmelzer / University of Duisburg-Essen)https://www.econometrics-with-r.org/9.2-ttivomra.html