経済の基礎

賃金上昇で人を減らす量は、長期の方が必ず大きい?

賃金上昇で労働を減らす幅が長期に大きいというLeChatelier原理には、技術の補完・代替関係などの条件があります。長期に選べる案が増えるだけでは十分ではありません。短期は休止し、長期は別の技術で再開する反例を考えられます。

基本の用語

短期は設備量を固定して労働だけを変え、長期は両方を変えられるとします。同じ賃金上昇に対する労働量を比べます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

調整できる案が多いことと、労働の減り幅は違う

短期に設備を動かせない会社でも、長期には別の設備構成へ替えられます。だから長期の方が調整する案が多いことは言えます。しかし「労働を減らす幅」まで常に大きいとは、その候補の数だけでは分かりません。

長期で新しく選べる案が、短期の休止より多く労働を使う再開案かもしれません。選択の自由が最大利益を高めることと、特定の投入をさらに減らすことは、異なる比較です。

基準となる賃金で使っていた労働・資本と、上昇後に短期で何を固定するかを指定します。別々の出発設備で短期と長期を比べれば、調整範囲だけでなく初期条件まで異なってしまいます。

労働が人数か時間かもそろえます。両模型で同じ労働単位を使い、同じ賃金上昇を与え、その後の最適な量を比べることで、減り幅の問いを明確にします。

例の短期は設備ゼロなので、設備一を必要とする方法Bを選べません。高い賃金でBが黒字でも、短期の候補に加えないことが重要です。

短期に休み、長期に別の方法で再開する

講義の反例には、労働二単位だけで一定の製品を作る方法と、労働一・設備一で同じ製品を作る方法があります。基準価格では前者が安いので、設備ゼロで労働二を使います。休止も可能です。

賃金が上がると、設備ゼロを固定した短期では前者の採算が悪化し、休止が最適になります。労働は二からゼロへ減ります。設備が使える長期では後者に替えることで採算が合い、労働一を使って再開できます。

短期の労働減少は二、長期では一です。長期の減り幅の方が小さくなります。これは単なる調整の遅れではなく、各問題で利益を最大にする案を選んだ結果です。

この技術では、設備が労働の一部分を置き換える関係と、設備と一緒に残りの労働を使う補完関係が混在します。使用量で代替と補完が入れ替わるため、安定した符号を前提にする原理へそのまま入れられません。

長期でAとBの両方が候補でも、Bを選ぶのは利益1が休止0より高いためです。単に設備を使えることだけで再開が決まるわけではありません。

長期の方が大きいと言うための条件

滑らかな二投入の模型で、生産関数の労働・資本の交差微分の符号が全ての対象範囲で非負または非正など、講義の最適化の条件を置くと、賃金上昇への労働減少は長期で大きいという原理を得られます。比較する最適解が存在し一意であることも条件にします。

補完性が一部の使用量だけで成立することと、全範囲で安定した関係を持つことは違います。また弱い大小関係なので、短期と長期で同じ減り幅でも原理の不等式を満たす場合があります。

全体の利益最大化や同率解の扱いもそろえます。短期で一つの局所解、長期で別の全体最大を選んだ比較だけでは、同じ原理を検証したことになりません。

長期の反応を読む際は、「調整できるから大きい」と終えず、固定投入、可能な生産方法、補完・代替の範囲、休止案を確認します。具体的な技術の表を計算すれば、原理の適用と反例を区別できます。

原理の弱い大小関係を使うには、符号条件だけでなく最適解の存在や扱う範囲もそろえます。反例の離散技術と滑らかな条件を混ぜません。

調整範囲と、労働の減り幅の条件
  • 短期の比較

    基準の設備を固定し、労働量と休止を選ぶ。

  • 長期の比較

    設備も選び直し、別の生産方法で再開できる。

  • 原理を支える条件

    補完・代替の安定した符号などを全範囲で確認する。

出発の設備と賃金上昇をそろえ、休止案も比較する。

架空の例:短期0、長期1へ労働が戻る

製品の売上を10、労働単価2、設備単価3とします。方法Aは労働2・設備0で費用4、利益6。方法Bは労働1・設備1で費用5、利益5です。最初はAを選びます。

労働単価が6へ上がるとAの利益は10−12=−2で、設備0の短期では休止利益0を選びます。長期はBの利益10−6−3=1なのでBへ替え、労働1です。基準の2から、短期は2減り、長期は1減るため、大きさが逆転します。

持ち帰る見方

  • 調整できる案の増加だけでは、特定投入の反応幅を保証できない。
  • 長期の反応が大きい原理と、休止・再開の反例の条件を分ける。

次に広がる疑問

  • 投入同士の補完性は、どのように価格反応へつながる?

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出典

  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

調整できる案が多いことと、労働の減り幅は違う

長期に調整できる投入が増えるだけでは、労働の反応が必ず短期より大きいとは言えない。

対象
LeChatelier原理の条件と、短期休止・長期技術変更による逆転例を具体計算で対比する。
条件
短期は資本固定・労働可変、長期は両方可変。定理は安定した補完/代替の符号など、講義の最適化条件を置く。
例外・限界
代替と補完が使用量で切り替わる技術では、短期休止で労働ゼロ・長期再開で正になる反例がある。
  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf

短期に休み、長期に別の方法で再開する

講義の反例では賃金上昇後、短期は休止し長期は労働と資本を一単位ずつ使う。

対象
LeChatelier原理の条件と、短期休止・長期技術変更による逆転例を具体計算で対比する。
条件
短期は資本固定・労働可変、長期は両方可変。定理は安定した補完/代替の符号など、講義の最適化条件を置く。
例外・限界
代替と補完が使用量で切り替わる技術では、短期休止で労働ゼロ・長期再開で正になる反例がある。
  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf

長期の方が大きいと言うための条件

滑らかな二投入模型で交差偏微分の符号が全範囲で一定などの条件を置くと、賃金上昇への労働減少が長期で大きい原理を得られる。

対象
LeChatelier原理の条件と、短期休止・長期技術変更による逆転例を具体計算で対比する。
条件
短期は資本固定・労働可変、長期は両方可変。定理は安定した補完/代替の符号など、講義の最適化条件を置く。
例外・限界
代替と補完が使用量で切り替わる技術では、短期休止で労働ゼロ・長期再開で正になる反例がある。
  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf