国際関係

外国船が沖へ逃げたら、沿岸国は追跡を続けられる?

沿岸国は、所定の条件で始めた外国船への追跡を、中断せずに領海等の外へ続けられることがあります。ただし違反を疑う理由、開始位置、停止信号、公的な追跡主体が必要です。追跡された船が自国又は第三国の領海へ入ると、追跡権は終わります。

基本の用語

公海では船は原則として旗国の管轄に服します。追跡権は、所定水域で始めた取締りを連続して続ける制度で、公海で外国船を見つけたことだけによる自由な取締権ではありません。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

追跡を始める位置と違反を読む

国連海洋法条約第111条は、沿岸国の権限ある当局が法令違反を信じる十分な理由を持つときの追跡を定めます。船又はその艇等が内水、群島水域、領海、接続水域などの所定範囲にいる間に開始することが必要です。

船が領海の外へ出た後も続けられるのは、追跡が中断していない場合です。「違反の疑いを記録した」「数日後に別の海域で発見した」という情報だけでは、連続した追跡を確認できません。開始した時点と、その後の継続を別に読みます。

EEZや大陸棚について条約に従って適用される沿岸国法令の違反にも、追跡権の規定が準用されます。ただしEEZのすべての外国船の行動を、領海内と同じように規制できるわけではありません。接続水域での開始も、その水域を設けた権利を侵害する違反に限られます。

停止信号と公的な追跡が要る

追跡船は、実行可能な方法で対象船等が所定範囲内にいることを確認する必要があります。追跡を始めるのは、外国船が見聞きできる距離で視覚的又は聴覚的な停止信号を出した後です。船の位置と命令の伝達を一緒に確かめます。

追跡を行えるのは軍艦、軍用航空機、又は公用であると明確に識別でき、その権限を与えられた他の船や航空機です。沿岸国の一般の漁船が自主的に追えば、条約上の追跡権になるという制度ではありません。

航空機による追跡も、違反船を目撃しただけでは足りません。停止命令を出して実際に追い、引き継ぐ公的な船や航空機が到着するまで追跡を続けるなどの条件があります。担当が交代したこと自体と、追跡が中断したことは区別します。

続けられる限界もある

追跡された船が、自国又は第三国の領海へ入ると追跡権は終了します。「始めた追跡は必ず最後まで続けられる」という説明ではありません。他国の領海への入域という、終了の条件を確認します。

また、追跡権を正当化できない事情で領海外の船を停止・拿捕した場合には、その損失や損害を補償する規定があります。強い取締権限を認めるだけでなく、条件を満たさない行使にも規則があることが分かります。

実際の事件は、適用法令と疑いの根拠、開始位置、停止信号、追跡主体、中断の有無、終了位置の順に読みます。この説明だけで具体的な船の違反や追跡の適法性を認定したことにはなりません。

追跡を評価する資料では、地図だけでなく時刻の記録も重要な手がかりです。航跡に線が描かれていても、それだけで見聞きできる停止信号や中断のない追跡を示したことにはなりません。位置の記録と命令・継続の記録を並べ、どの条件を何の資料が確認するかを対応させると、不明な点を具体的に絞れます。

架空の追跡例で確認する時点
  1. 開始

    所定水域の位置・疑いの理由・停止信号を確認。

  2. 継続

    公的な主体が中断なく追跡しているか読む。

  3. 終了

    対象船が自国又は第三国の領海へ入れば終了。

追跡の開始・継続・終了は、それぞれの要件を分けて読む。

追跡の記録を時系列で読む

架空の外国船がA国の領海で法令違反をしたと疑われ、権限ある公用船が位置を確認し、見聞きできる停止信号を出して追跡を開始したとします。領海の外へ出ても、中断なく続いたかが次の条件です。

その船がB国の領海へ入ったなら、この追跡権は終了します。図は実在の事件の航路や適法性を示さず、必要な時点を整理するための架空の例です。

持ち帰る見方

  • 違反の理由と所定水域での開始を確認する。
  • 停止信号、公的な権限、連続性が要る。
  • 自国又は第三国の領海へ入れば追跡権は終わる。

次に広がる疑問

  • 公海なら、船はどんな行動をしてもよい?
  • 領海と排他的経済水域では、国にどんな権限がある?
  • 領海の外でも、沿岸国が取締りをする海域がある?

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出典

  • United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

追跡を始める位置と違反を読む

沿岸国当局が法令違反を信ずる十分な理由を持ち、外国船又はその艇等が所定の水域にいる間に追跡を開始し、追跡が中断しなければ領海等の外へ続け得る。EEZ・大陸棚の条約適合の法令違反にも準用される。

対象
海洋法条約の海域・権利・管轄の区分。個別国家の境界主張を認定する資料ではない。
条件
内水・群島水域・領海・接続水域等の開始位置。
例外・限界
接続水域での開始にはその水域を設けた権利の侵害が必要。EEZ内の全行動を一括して沿岸国法違反にしない。
  • United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf

停止信号と公的な追跡が要る

追跡前には対象船等が所定範囲内にいると確認し、船が見聞きできる距離で視覚的又は聴覚的な停止信号を出す必要がある。追跡できるのは軍艦・軍用航空機又は明確に識別でき権限を与えられた公用船等である。

対象
海洋法条約の海域・権利・管轄の区分。個別国家の境界主張を認定する資料ではない。
条件
停止信号、位置確認、公的識別と権限。
例外・限界
航空機が目撃しただけで足りず停止命令と中断なき追跡が必要。一般私人の船の追跡権ではない。
  • United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf

続けられる限界もある

追跡された船が自国又は第三国の領海へ入ると追跡権は終わる。追跡権を正当化できない事情で領海外の船を停止・拿捕した場合には損失・損害を補償する。

対象
海洋法条約の海域・権利・管轄の区分。個別国家の境界主張を認定する資料ではない。
条件
国連海洋法条約の追跡権の終了・補償規則。
例外・限界
一度追い始めればどこまでも追えるとしない。
  • United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf