数字と報道

地図の区切りを変えるだけで、地域の格差は変わる?

同じ人の同じ値でも、どの地区を一つにまとめるかで地域の平均や格差は変わりえます。地域の大きさと境界の配置は集計の条件です。地図の結果を比べる前に、区切りをそろえたかを確認し、妥当な別の区分でも結果を調べます。

基本の用語

地域の平均は、その地域にまとめた対象についての値です。同じ個人の情報でも、集団の作り方が変われば、平均を比べる問いも変わります。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

区切り方も集計の条件になる

細かい地区をどうまとめるかによって、地域を単位にした分析結果が変わることがあります。これは地理的集計のmodifiable areal unit problem、MAUPと呼ばれます。元の人数や個人の値を測り間違えなくても起こりえます。

Nievesらの2024年原研究は、地域の大きさと配置に対する分析結果の敏感さを説明しています。ここではその概念を読み、原研究の人口模型の結果を現実の所得格差の実測値へ転用しません。

大きさと境界の配置を分ける

一つ目は、細かな地域を広い地域へまとめる大きさの違いです。小地区間に差があっても広くまとめれば、平均の中へ入って地図に見えにくくなる場合があります。

二つ目は、同じ数の地域を作っても、どの小地区を組み合わせるかという配置の違いです。高い値の地区どうしをまとめる場合と、高い地区と低い地区を組み合わせる場合では、地域平均の並びが変わりえます。

平均や率をまとめるなら、各地区の人数や分母の重みも合わせます。同じ大きさの地図上の区域が、同じ人数を持つとは限りません。区域の平均を一票ずつ平均する計算と、そこにいる全対象の平均を求める計算を区別します。

別の区切りでも確かめる

地域を使った分析では、なぜその単位を選び、どうまとめたかを明示する必要があります。行政区の問いならその区分が役立ちますが、同じ境界が全ての問いに唯一の最適な区分とは限りません。

ほかの妥当な区分で結果がどう変わるかを調べると、結論が特定の切り方にどれほど依存するかを考えられます。結果を好みの方向へ動かすために境界を選ぶのでなく、目的に合う区分と集計の理由を確認します。

時点間で比較する場合も、地域の境界が変わっていれば、その変更が混ざります。新旧で同じ範囲へ集計した資料があるかを探し、単に同じ地域名だから同じ集団という判断を避けます。

例えば問いが二地域の平均差なのか、細かな地区間のばらつきなのかで、集計後に残すべき情報は違います。広くまとめた地図の差が小さくても、元の小地区の差がなくなったとは読めません。何をまとめ、何を比べたかを言葉でも残します。

個人の結論へは別の情報がいる

同じ人の情報をまとめ直して地域平均が変わっても、その人自身の所得や行動が変わったわけではありません。地図の集計の変化と個人の状態の変化を分けます。

地域の平均から個人の関係へ結論を移す問題も別に残ります。地域差を分析することが無意味という話ではなく、どの地域の何を比べた結果かを保って使います。区域の定義と分母を残すと、地図の色の違いを具体的な比較へ戻せます。

架空の例:4地区の値を二地域にまとめる
  • 似た値どうし

    10と10→平均10、30と30→平均30。

  • 高い値と低い値

    10と30→平均20が二地域。

各地区の人数を同じとします。元の値が変わらなくても、二地域の差は20から0へ変わります。

架空の例:同じ4地区を違う二地域へまとめる

人数の等しい4地区の値が10、10、30、30とします。低い2地区と高い2地区をそれぞれまとめると、二地域の平均は10と30で、差は20です。

10の地区と30の地区を一つずつ組み合わせて二地域を作ると、両方の平均は20で差は0です。個人や地区の値は一つも変わらず、二地域へのまとめ方だけが変わっています。

持ち帰る見方

  • 集計地域の大きさと、境界の配置を分けて読む。
  • 地図の差が区切り方にどれほど依存するか確かめる。
  • 地域平均の変化を個人の実際の変化へ移さない。

次に広がる疑問

  • 比較する地図は、同じ境界と同じ分母を使っているか。
  • 目的に合う別の集計区分でも、結論は同じか。

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • A simulated sandbox for exploring the modifiable areal unit problem(Jeremiah J. Nievesほか/Scientific Data)https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10894218/fullTextXML

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

区切り方も集計の条件になる

地域をどう大きくまとめ、どの境界で区切るかによって分析結果が変わりうる性質は、modifiable areal unit problem(MAUP)と呼ばれる。

対象
2024年原研究の概念説明。原シミュレーション数値を現実の格差へ転用しない。
条件
同じ基礎情報を別の地域区分へ集計する。
例外・限界
データの誤りだけで起こる問題ではない。
  • A simulated sandbox for exploring the modifiable areal unit problem(Jeremiah J. Nievesほか/Scientific Data)https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10894218/fullTextXML

大きさと境界の配置を分ける

小地区を大きな地域へまとめる規模の違いと、同じ数の地域でも組合せを変える配置の違いを区別して考える。

対象
2024年原研究の概念説明。原シミュレーション数値を現実の格差へ転用しない。
条件
平均や率で対象人口の重みを合わせる。
例外・限界
境界を変えた地域平均の変化は個人の実際の変化とは別。
  • A simulated sandbox for exploring the modifiable areal unit problem(Jeremiah J. Nievesほか/Scientific Data)https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10894218/fullTextXML

別の区切りでも確かめる

地域の分析では、使った地域区分や集計の理由を明示し、ほかの妥当な区分で結果がどう変わるかを検討することが必要になる。

対象
2024年原研究の概念説明。原シミュレーション数値を現実の格差へ転用しない。
条件
分析目的と地域の範囲を対応させる。
例外・限界
どの区切りでも完全に同じ結果となる唯一の境界があるとは限らない。
  • A simulated sandbox for exploring the modifiable areal unit problem(Jeremiah J. Nievesほか/Scientific Data)https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10894218/fullTextXML

個人の結論へは別の情報がいる

同じ人の値をまとめ直すだけで地域平均の並びが変わるため、地域差の変化を各個人の状態の変化と混同しない。

対象
2024年原研究の概念説明。原シミュレーション数値を現実の格差へ転用しない。
条件
基礎情報を固定する架空の加重平均例。
例外・限界
地域分析が無意味という話ではなく、答える地域の問いに合わせる。
  • A simulated sandbox for exploring the modifiable areal unit problem(Jeremiah J. Nievesほか/Scientific Data)https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC10894218/fullTextXML