経済の基礎
買い手が値上げに敏感だと、上乗せ価格は小さくなる?
単一の価格で売る企業の利益最大化模型では、価格と限界費用の差の割合は、その企業の需要が値上げにどれだけ敏感かと結び付きます。価格弾力性の絶対値が大きいほど、最適な上乗せ割合は小さくなります。この割合だけで会社全体の利益は分かりません。
基本の用語
価格弾力性は価格が1%変わると需要が何%変わるかの比です。通常の下向き需要なら負の符号で表します。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 独占企業は好きなだけ値上げできる?市場を定め、近い代替品があるかを見る。
価格のうち、限界費用を超える割合を見る
価格100円、追加一個の費用60円なら、価格のうち費用を超える部分は40円です。この差を価格で割ると40%になります。価格と限界費用の差の比率を、Lerner指数と呼びます。限界費用で割る上乗せ率とは分母が違います。
限界費用は追加一単位の費用であり、固定費も含めた平均費用とは違います。Lerner指数は価格設定の余地を見る指標ですが、売上から会社の全費用を差し引いた利潤率でもありません。固定費、販売量、ほかの活動の費用をまだ計算していないためです。
単一価格企業は、数量を増やすために価格を下げると、既に売る予定だった分の収入も減ります。価格と追加収入が同じでないことを含め、限界収入と限界費用が等しい内点の解を求めます。この模型の条件が、弾力性と上乗せを結び付けます。
弾力性が大きいほど、最適な割合は小さい
滑らかな需要を置くと、限界収入は価格に「1+弾力性の逆数」を掛けた値になります。限界収入が限界費用と等しい条件を変形すると、(価格−限界費用)÷価格=−1÷弾力性という式を得ます。負の弾力性を使うので、右辺は正の数です。
弾力性が−5なら上乗せ部分は価格の20%、−10なら10%です。買い手が価格へ強く反応するほど、価格を高くして失う販売が大きいため、最適な価格の費用超過割合は小さくなります。ここでは利益最大化をしている地点の弾力性を使います。
同じ限界費用80円で比較すると、20%の費用超過割合は価格100円、10%なら約88.89円です。100円と80円の差20円を80円で割ると25%ですが、式の20%は100円で割った比率です。上乗せという言葉を見たら、分母を確かめます。
上乗せ率と、会社全体の利益は別に計算する
必要なのは企業自身の需要です。市場全体の需要が価格に鈍感でも、一社だけが値上げしたときに客が他社へ移るなら、その一社の需要は敏感かもしれません。市場の弾力性を自社へそのまま代入するのは、どの価格の変化を見たかが異なる比較です。
また、実際に値上げした時期に売上が減っただけでは、この式の弾力性を測れません。所得、競合価格、商品内容なども変わっていれば、自社価格だけによる需要反応を分ける必要があります。式は、どの比較の数字が必要かを示す道具です。
数量や価格に制限がある、複数商品が互いに需要を変えるなどの条件を加えると、単純な内点式だけでは判断できません。利益が最大になるという前提、企業の需要、限界費用をそろえてから使います。上乗せが大きいという観測だけで、全体の利益や違法性を決めることもできません。
符号の約束にも注意します。資料が弾力性を正の絶対値5と示す場合、費用超過割合は1÷5です。負の−5と示す場合に使う−1÷弾力性の式へ、正の5を入れると負の割合になってしまいます。同じ内容でも表記が異なるので、式と数字を一緒に読みます。
- 弾力性−5
価格の20%が費用超過部分。価格100円。
- 弾力性−10
費用超過部分は10%。価格約88.89円。
単一価格の内点利益最大化を置き、負の自社需要弾力性を使います。
同じ費用で需要の敏感さを変える架空の比較
限界費用80円として、利益最大の地点で需要弾力性が−5なら(価格−80)÷価格=0.2となり、価格100円です。弾力性−10なら0.1となり、価格は80÷0.9=約88.89円です。
固定費が高ければ、どちらも会社全体では赤字の可能性があります。この例は二つの地点の需要条件を置いた比較で、実在店舗の弾力性や価格を推定したものではありません。
持ち帰る見方
- Lerner指数は、価格と限界費用の差を価格で割る。
- 式に使う弾力性は、その企業の需要の利益最大地点の値。
- 限界費用超過割合、平均費用、全体利益を分ける。
次に広がる疑問
- 同じ値上げでも需要の反応が違う理由は?
- 価格競争では、限界費用との差がなぜ消える?
出典
Market Power — MIT 15.010 (2004)(MIT OpenCourseWare / Sloan School of Management)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/f953bfcd8322b6f9971eadeb8d44d29e_market_power.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
価格のうち、限界費用を超える割合を見る
単一価格企業の内点利益最大化では限界収入と限界費用が等しい。
- 対象
- 単一価格独占の内点解で価格と限界費用の差を需要の価格弾力性につなぐLerner式を、粗利率との違いも含め検算する。
- 条件
- 単一価格で売る企業、滑らかな下向き需要、内点の利益最大解、限界収入=限界費用、弾力性はその企業が直面する需要の当該点、負の符号。
- 例外・限界
- 式は平均費用・固定費・経済利潤を直接表さない。需要変化前後の実売上から単純推定した弾力性や市場全体の弾力性を自社へ代入しない。
Market Power — MIT 15.010 (2004)(MIT OpenCourseWare / Sloan School of Management)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/f953bfcd8322b6f9971eadeb8d44d29e_market_power.pdf
弾力性が大きいほど、最適な割合は小さい
価格と限界費用の差を価格で割った比率は、負の需要価格弾力性の逆数にマイナスを付けた値となる。
- 対象
- 単一価格独占の内点解で価格と限界費用の差を需要の価格弾力性につなぐLerner式を、粗利率との違いも含め検算する。
- 条件
- 単一価格で売る企業、滑らかな下向き需要、内点の利益最大解、限界収入=限界費用、弾力性はその企業が直面する需要の当該点、負の符号。
- 例外・限界
- 式は平均費用・固定費・経済利潤を直接表さない。需要変化前後の実売上から単純推定した弾力性や市場全体の弾力性を自社へ代入しない。
Market Power — MIT 15.010 (2004)(MIT OpenCourseWare / Sloan School of Management)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/f953bfcd8322b6f9971eadeb8d44d29e_market_power.pdf
上乗せ率と、会社全体の利益は別に計算する
同じ限界費用の比較で価格への反応が強い需要ほど、最適な価格に占める限界費用超過割合が小さくなる。
- 対象
- 単一価格独占の内点解で価格と限界費用の差を需要の価格弾力性につなぐLerner式を、粗利率との違いも含め検算する。
- 条件
- 単一価格で売る企業、滑らかな下向き需要、内点の利益最大解、限界収入=限界費用、弾力性はその企業が直面する需要の当該点、負の符号。
- 例外・限界
- 式は平均費用・固定費・経済利潤を直接表さない。需要変化前後の実売上から単純推定した弾力性や市場全体の弾力性を自社へ代入しない。
Market Power — MIT 15.010 (2004)(MIT OpenCourseWare / Sloan School of Management)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/f953bfcd8322b6f9971eadeb8d44d29e_market_power.pdf