お金と金融
短期金利が上がっても、長期金利が下がることはある?
あります。長期金利には、将来の短期金利への予想と、長く保有するリスクへの対価が関わります。現在の短期金利が上がっても、将来は低下すると予想されたり、リスクへの対価が下がったりすれば、長期金利は下がり得ます。
基本の用語
同じ時点で、期間の違う債券の利回りを並べた線をイールドカーブと呼びます。比較する通貨や信用、商品の条件をそろえないと、期間以外の違いも混ざります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 金利は、何の値段?借入期間・リスクと名目実質
- 日銀は金利をどう動かす?会合の方針と、日々の市場操作を分ける。
長い金利には、将来の短い金利の予想が入る
長くお金を貸す代わりに、短い貸出を繰り返す案を考えます。一年の金利を今知っていても、その後の一年の金利がどうなるかは分かりません。長い債券を選ぶ際には、こうした将来の短い金利の見通しも比較材料になります。
期間構造のモデルでは、長期国債利回りを、将来の短期金利の予想経路と期間プレミアムに分けて考えます。短期金利の予想経路とは、今日の一つの値だけではなく、保有期間を通じて短い金利がどのように推移すると思われているかです。
このため、今日の政策金利と十年先までの金利への予想は同じではありません。今日の利上げがあっても、将来の景気や政策についての考え方が変われば、より先の金利予想が下がる可能性があります。期間の違う金利を、同じ政策金利の単なる別表示としないようにします。
予想とは別に、長く持つリスクがある
予想どおりの短期金利にならない不確実性もあります。長期の債券を保有してそのリスクを引き受ける対価として考える部分が期間プレミアムです。現在の短期金利にも、将来の金利の平均予想だけにも、還元しない部分です。
ただし、期間プレミアムは取引画面でそのまま観測できる一つの価格ではありません。利回りからモデルで分けたり、予想調査を使ったりして推計します。モデルの前提や利用情報によって、推計した値が異なることがあります。
長く貸せば必ず一定の上乗せが付くと決めることもできません。研究では期間プレミアムが負となる推計もあり、常に正だと置かない点が大切です。ここでは米国国債に関する研究の考え方を使い、過去の推計値を現在の日本の実測値として示していません。
短い金利と長い金利が、逆に動く理由
現在の短期金利の上昇と同時に、先々の短期金利の予想が低下すれば、長期金利を押し下げる方向に働きます。期間プレミアムも動くため、どちらの動きが大きいかによって長期金利の方向が変わります。短期と長期が逆に動いても、仕組みとして矛盾するわけではありません。
長い金利が短い金利より低い形は、逆イールドと呼ばれます。その形だけで将来の景気後退を確定したとは言えません。市場の予想と期間プレミアムが重なった価格の関係だからです。何がどれだけ動いたかを知るには、予想や推計方法などを別に確認します。
金利のニュースでは、政策の誘導対象、国債の利回り、銀行の契約金利のどれを指すか、期間はいくつかを先に見ます。いまの短期の金利を確かめたことと、長期金利の原因や今後の景気を判定したことは別です。期間構造は、同じ経済の中に異なる金利がある理由を考える道具です。
現在は利上げでも、先の平均予想が下がる
架空の例
長期利回りを「将来短期金利の平均予想+期間プレミアム」と近似して考えます。平均予想2%、期間プレミアム0.5%なら2.5%です。現在の短期金利が上がった後も、先々の平均予想が1.5%へ下がり、プレミアムが0.5%のままなら、長期側は2%になります。
現在の金利が上がったことと、これからの期間全体の平均予想が下がったことは両立します。複利や満期ごとの厳密な価格計算を省いた例で、現実の金利の予測や推計ではありません。期間プレミアムも動けば、結果はさらに変わります。
持ち帰る見方
- 長期金利は、今日の短期金利だけで決まらない。
- 予想短期金利と期間プレミアムを分けて考える。
- 期間プレミアムはモデル等に依存する推計で、常に正とは限らない。
次に広がる疑問
- 日銀が誘導する市場金利を読む
- 将来の予想が現在の選択に関わる理由を読む
順番に読んでいる方へ
出典
Treasury Term Premia: 1961-Present(ニューヨーク連邦準備銀行 Liberty Street Economics/Tobias Adrianほか)https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2014/05/treasury-term-premia-1961-present/
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
長い金利には、将来の短い金利の予想が入る
期間構造モデルでは長期国債利回りを予想される将来短期金利の経路と期間プレミアムに分けて考える。
- 対象
- NYFed研究者2014年の米国国債モデルによる考え方
- 条件
- 比較する信用・通貨・商品条件をそろえる
- 例外・限界
- 近似的説明で現在の日本の金利水準や厳密価格式を示さない
Treasury Term Premia: 1961-Present(ニューヨーク連邦準備銀行 Liberty Street Economics/Tobias Adrianほか)https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2014/05/treasury-term-premia-1961-present/
予想とは別に、長く持つリスクがある
期間プレミアムは金利が予想どおりにならないリスクを持つ対価で、直接観測できず推計方法で値が違う場合がある。
- 対象
- モデルでのリスク補償と推計
- 条件
- 無裁定期間構造モデルや調査予想等に依存
- 例外・限界
- 常に正とは限らず、2014年実測値を2026年の値へ置換しない
Treasury Term Premia: 1961-Present(ニューヨーク連邦準備銀行 Liberty Street Economics/Tobias Adrianほか)https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2014/05/treasury-term-premia-1961-present/
短い金利と長い金利が、逆に動く理由
現在の短期金利が上がっても、将来の金利への予想や期間プレミアムが低下するなら、長期利回りは下がる可能性がある。
- 対象
- 二要素による条件付き比較
- 条件
- 他条件を固定し方向を示す架空例
- 例外・限界
- 逆イールドは景気後退の確定予言ではなく、現在の景況判定をしない
Treasury Term Premia: 1961-Present(ニューヨーク連邦準備銀行 Liberty Street Economics/Tobias Adrianほか)https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2014/05/treasury-term-premia-1961-present/