数字と報道

調整していない要因が残ると、結論はどれくらい変わる?

測っていない交絡が結論を変える強さを、仮定した関連の大きさで調べるのが感度分析です。E値は、その一つの方法で未測定要因と処置・結果の関連に必要な強さを表します。因果効果が正しい確率でも、自動で交絡を除いた効果でもありません。

基本の用語

年齢などを調整しても未測定の共通原因が残ることがあります。感度分析はその要因を観測した代わりではなく、どんな条件で結論が変わりうるかを可視化します。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

未測定の関係の強さを仮定する

支援利用と再就職の関連を観測した場合、未測定の意欲などが利用と再就職の両方に関係する可能性を考えます。一次論文の方法は、その要因と処置との関連、要因と結果との関連という二つの強さを用います。

これらは既に調整した共変量を条件とする強さです。年齢調整前の関連をそのまま使うなど、条件の異なる値を混ぜません。未測定のものについて仮定を置く分析なので、その要因が実際に存在すると証明するものでもありません。

例えば意欲の有無だけを思い浮かべても、その要因と支援利用、再就職の関係がどれほど強いかは別の情報です。感度分析は考えられる要因の名前を列挙するだけでなく、関連の強さを条件として結論に結び付けます。

最大の変化を境界として計算する

調整共変量を固定し、各処置群内で未測定要因の異なる値を取る群間の結果リスク比の最大をaとします。bは未測定要因の値ごとに、処置あり群でその値を取る割合を処置なし群の割合で割った比の最大です。最大バイアス因子はB=ab÷(a+b−1)です。aとbは1以上で、観測リスク比RRが1を超える場合にはRR/Bが交絡によって下がりうる限界となります。

これは仮定した強さの下での境界です。RR/Bが補正済みの唯一の真の効果だと読みません。aとbの定義や調整条件を確認して初めて、どれほどの未測定交絡まで考えた分析かが分かります。

aとbを大きく置けば許容する交絡も強くなります。ただしBの式では単純にaとbを掛けるだけではありません。二つの強さがどちらの関連を表すかを定め、論文の最大リスク比という定義に合わせて計算します。

E値は確率ではない

RRが1以上ならE値はRR+√(RR×(RR−1))です。二つの関連強度を等しく置いた場合に、観測した関連を1へ説明できる境界を表します。RRが1未満の保護的な関連では、逆数にして計算します。

E値は「交絡がある確率」ではありません。また両方が必ず同じ強さであるとの主張でもありません。一方がE値より小さくても他方が十分強い場合があるので、「各関連がこの値未満なら絶対に大丈夫」という単純な読みにしません。

点推定が大きくても、その周りの区間が1へ近ければ、区間側を動かすための強さは小さい場合があります。点推定のE値だけを強調すると、推定の不確かさを別に示した区間の情報を読み落とすことになります。

区間とほかの偏りも併せて読む

点推定のE値と、信頼区間の1に近い端のE値を分けます。区間が1を含むなら、その端について関連を無効果まで動かす追加交絡は不要で、区間側のE値は1です。

大きなE値も、測定誤差、対象者の選抜、欠測による偏りなど全てへの頑健さを示しません。未測定交絡に対する条件付きの分析として、研究の設計や他の強み・弱みと併せて読むのが適切です。

研究の頑健さを表すときは「未測定交絡に対して」という対象を添えます。別の偏りで関連が生じる可能性を、この分析は全て排除していません。研究設計を省略する代わりの一つの数字として使わないようにします。

観測RRが2という架空例

架空の調整後リスク比が2なら、E値は2+√2で約3.41です。未測定要因に関する二つの最大リスク比がともにこの強さなら、Bは2となり、境界のRR/Bは1です。

これは仮定した関連を使う計算例です。その要因が実在することも、真の因果効果が1であることも示していません。何があれば関連を説明しうるかを考える条件を示します。

考えるときの注意点

  • ここでは原論文の相対リスク尺度の方法を扱う。オッズ比などを無条件でRRとして代入しない。

持ち帰る見方

  • 未測定交絡に仮定を置いて感度を調べる。
  • バイアス因子とE値は境界として読む。
  • 区間と他の偏りも併せて判断する。

次に広がる疑問

  • 年齢などを調整した比較なら、政策の効果が分かる?
  • 二つの数字が一緒に動けば、原因が分かる?
  • オッズ比が2なら、起きる確率も2倍?

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出典

  • Sensitivity Analysis in Observational Research: Introducing the E-Value(Tyler J VanderWeele / Peng Ding(原論文、Harvard DASH))https://dash.harvard.edu/server/api/core/bitstreams/7312037e-0f45-6bd4-e053-0100007fdf3b/content

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

未測定の関係の強さを仮定する

未測定交絡の感度分析は、調整後の関連をどれほどの未測定要因が説明しうるかを、処置と未測定要因/未測定要因と結果の関連の強さで評価する。

対象
2017年著者最終稿。相対リスク尺度の未測定交絡感度分析。
条件
既に調整した共変量を条件にする。
例外・限界
未測定要因を実際に測ったり自動除去したりする方法ではない。
  • Sensitivity Analysis in Observational Research: Introducing the E-Value(Tyler J VanderWeele / Peng Ding(原論文、Harvard DASH))https://dash.harvard.edu/server/api/core/bitstreams/7312037e-0f45-6bd4-e053-0100007fdf3b/content

最大の変化を境界として計算する

本方法で関連強度をa,bと置くと最大バイアス因子B=ab/(a+b−1)。観測RR>1ではRR/Bを、交絡によって低下しうる限界として読む。

対象
2017年著者最終稿。相対リスク尺度の未測定交絡感度分析。
条件
a,bは論文定義の条件付き最大リスク比、1以上。
例外・限界
RR/Bを補正済みの唯一の真の効果と扱わない。
  • Sensitivity Analysis in Observational Research: Introducing the E-Value(Tyler J VanderWeele / Peng Ding(原論文、Harvard DASH))https://dash.harvard.edu/server/api/core/bitstreams/7312037e-0f45-6bd4-e053-0100007fdf3b/content

E値は確率ではない

RR≥1のE値はRR+√(RR(RR−1))で、二つの関連強度を等しく置いたとき関連を1へ説明しうる境界を表す。

対象
2017年著者最終稿。相対リスク尺度の未測定交絡感度分析。
条件
RR<1は逆数へ換算。調整共変量と対象を明示。
例外・限界
片方がE値未満でも他方がより強ければ説明しうる。因果効果の確率ではない。
  • Sensitivity Analysis in Observational Research: Introducing the E-Value(Tyler J VanderWeele / Peng Ding(原論文、Harvard DASH))https://dash.harvard.edu/server/api/core/bitstreams/7312037e-0f45-6bd4-e053-0100007fdf3b/content

区間とほかの偏りも併せて読む

点推定だけでなく信頼区間の1に近い端のE値も評価する。区間が1を含むならそのE値は1。測定誤差や選抜/欠測の偏りは別に点検する。

対象
2017年著者最終稿。相対リスク尺度の未測定交絡感度分析。
条件
同じ効果尺度/モデルの区間を用いる。
例外・限界
大きなE値はあらゆる偏りへの頑健さを示さない。
  • Sensitivity Analysis in Observational Research: Introducing the E-Value(Tyler J VanderWeele / Peng Ding(原論文、Harvard DASH))https://dash.harvard.edu/server/api/core/bitstreams/7312037e-0f45-6bd4-e053-0100007fdf3b/content