経済の基礎
成果の量より、順位で賞金を決めると何が変わる?
順位で報酬を決める場合、努力によって上位になる可能性をどれだけ増やせるかと、賞金の差を比べます。共通の景気などの揺れを除く情報が得られる場合もありますが、順位だけでは成果の差の大きさを捨てます。競争させれば常に最適という模型ではありません。
基本の用語
個人の成果給は自分の成果の量へ支払います。トーナメント型は他者との順位により賞金や報酬を変えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 仕事を任せると、なぜ監督が必要になる?利害の違いと、契約で保証できない行動に注目する。
差が付くのは、成績の量より順位
一位へ大きな賞金、二位へ小さな賞金を払うとします。本人は努力によって勝つ可能性を高められるなら、増える期待報酬と努力の費用を比べます。順位による報酬でも、努力が受取額を変える誘因を作れます。
ここでは勝つこと自体の満足とは別に、金銭の差による誘因を考えます。一位と二位の賞金を同じだけ増やしても、勝つことで増える額は変わりません。同じ賞金差のまま総額を増やすことと、差を広げることは別の比較です。
努力しても順位が変わらないなら、賞金差を増やすだけでは努力の得は増えません。もともとの能力差、努力による成績の変化、偶然の揺れが、順位を変える確率へどう関わるかが必要です。賞金表だけから努力量は決まりません。
共通の揺れを除ける場合がある
二人の販売成果が同じ景気の変化で上がるとします。各成果をそのまま見ると、売上の上昇が努力なのか共通の好況なのか分けにくいですが、他者の成果を参照することで共通の揺れの情報を得られる場合があります。
この相対成績評価の利点は、競争という形そのものではなく、他者の成果が本人の努力を見分ける情報を持つことです。相手の成果も同じショックを受けるという条件が重要です。共通に加わる同じ大きさの揺れなら、差を取ると打ち消せます。
反対にショックが独立なら、他者の数字を足すことで本人と無関係な揺れを追加する場合があります。誰と比較しても精度が上がるわけではありません。同じ環境の人かどうかを、順位を付ける前に考えます。
相対評価と、順位のみの評価も同じではありません。二人の売上の差を使う契約なら、共通ショックを除きながら差の大きさも残せます。一位か二位かだけで払う契約はその大きさを捨てるので、情報の使い方として別に比較します。共通環境にいることだけで、順位が最適な統計になるわけではありません。
順位だけでは、捨ててしまう情報もある
順位は、一位が僅かに上回ったのか、大差だったのかを区別しません。成果の量に契約できる模型なら、この捨てられる情報も報酬設計に使える場合があります。トーナメントが一般に最適だという結論は出せません。
評価する順位の範囲も関わります。異なる市場で働く人をそのまま並べると、環境の違いが能力や努力の評価へ混ざるかもしれません。相対評価の比較対象と、何を成果と数えるかを先に定める必要があります。
基本の数例では他者の成果を妨害する行動を選べないとします。現実に別の行動が選べるなら、努力だけを増やすゲームの条件が変わります。賞金差、勝率への努力効果、比較対象、使える成果情報をそろえ、順位の報酬がどんな誘因を作るかを見ます。
- 一位10万円・二位2万円
差8万円。勝率の上昇10%なら追加期待報酬8,000円。
- 一位11万円・二位3万円
差は8万円のまま。追加期待報酬も8,000円。
追加努力で勝率が50%から60%へ増える、リスク中立の設定です。
賞金差と努力を比べる架空の二人
一位10万円、二位2万円。追加努力で勝つ確率が50%から60%へ上がり、その費用が5,000円なら、増える期待報酬は10%×8万円=8,000円です。費用を引くと3,000円なので、リスク中立の本人には努力する理由があります。
両方の賞金を一万円ずつ増やしても差は8万円のままで、追加努力の得は同じです。この勝率変化は設定値です。成果の共通ショックや能力差を推定した値ではありません。
持ち帰る見方
- 努力の誘因は、勝率の変化と賞金差で考える。
- 相対成果が努力の情報を増やすかは、ショックの関係に依存。
- 順位だけでは、成果差の大きさを失う。
次に広がる疑問
- 測れる仕事だけの成果給は何を見落とす?
- 後の報酬を失う費用は、今の努力に関わる?
順番に読んでいる方へ
出典
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
差が付くのは、成績の量より順位
トーナメント型の報酬では、働き手の順位に基づく支払が努力誘因を作る模型がある。
- 対象
- 相対成績の賞金差が努力誘因を作るトーナメントと、共通ショックを相殺する条件を説明する。
- 条件
- 本人の成果と他者成果が共通ショックの情報を持ち、賞金総額が決まり順位へ配分する模型。独自数例は努力による勝率増加を所与とする。
- 例外・限界
- 順位は一般に十分統計ではなく、個々の測定可能な成果を捨てる損失がある。独立ショックの場合は他者比較が余分なノイズを加える場合。妨害は本記事の数例で選択不可。
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf
共通の揺れを除ける場合がある
相対成績評価は共通ショックから努力の情報を得る手段だが、独立ショックではノイズだけ増す場合がある。
- 対象
- 相対成績の賞金差が努力誘因を作るトーナメントと、共通ショックを相殺する条件を説明する。
- 条件
- 本人の成果と他者成果が共通ショックの情報を持ち、賞金総額が決まり順位へ配分する模型。独自数例は努力による勝率増加を所与とする。
- 例外・限界
- 順位は一般に十分統計ではなく、個々の測定可能な成果を捨てる損失がある。独立ショックの場合は他者比較が余分なノイズを加える場合。妨害は本記事の数例で選択不可。
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf
順位だけでは、捨ててしまう情報もある
順位が十分な情報となる技術条件は限定的で、トーナメントが常に最適な報酬とは限らない。
- 対象
- 相対成績の賞金差が努力誘因を作るトーナメントと、共通ショックを相殺する条件を説明する。
- 条件
- 本人の成果と他者成果が共通ショックの情報を持ち、賞金総額が決まり順位へ配分する模型。独自数例は努力による勝率増加を所与とする。
- 例外・限界
- 順位は一般に十分統計ではなく、個々の測定可能な成果を捨てる損失がある。独立ショックの場合は他者比較が余分なノイズを加える場合。妨害は本記事の数例で選択不可。
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf