経済の基礎

赤字でも、すぐ生産を止めない方がよいことがある?

生産を止めても払う固定費が残るなら、赤字でも続けた方が損失を小さくできる場合があります。比べるのは、売上と、続けることで追加にかかる費用です。今月の操業を止めることと、長期に事業をやめることは別の判断です。

基本の用語

固定費は、この短期の模型では生産量を変えても残る費用です。変動費は、生産を止めると避けられる費用として置きます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

休止しても残る費用を分ける

売上より全費用が大きければ、企業は赤字です。しかし赤字という事実だけでは、休止した場合に損失がなくなるとは分かりません。契約のため今月の設備費が残るなら、売上をゼロにしてもその費用は払います。操業した場合の赤字と、休止した場合の赤字を両方計算する必要があります。

生産を続けた売上が、材料などの変動費を上回れば、残りの額を固定費の一部へ充てられます。全ての固定費を回収できなくても、休止して固定費を全額負担するより、損失が小さい場合があります。「もうかっていない」と「止めれば損失が減る」は同じではありません。

ここで固定費を比較から落とせるのは、二つの選択で同じ額が残るという条件だからです。固定費という名前が付いていても、解約で払わずに済むなら条件が違います。何を払ったかだけでなく、これからの各案で何の支払を避けられるかを確認します。

値段と、追加で避けられる費用を比べる

企業が市場価格を受け入れる完全競争の模型では、売る量を選んだうえで、売上が変動費を賄えるかを見ます。一単位当たりで表せば、価格と平均変動費を比べることになります。価格が平均総費用より低くても、平均変動費より高い範囲では、赤字のまま操業する余地があります。

価格が最小の平均変動費より低ければ、どの量を作っても変動費さえ回収できません。その条件では短期休止が有利になります。価格がちょうど最小平均変動費なら、固定費への上乗せがゼロとなり、休止と操業の損失が同じになりうるため、一律に必ず続けるとは言えません。

全費用を賄える価格に対応する損益分岐点と、短期に操業を止める基準は違います。また、もう一個作るかの判断で比べる限界費用と、全体の操業を続けるかで比べる回避可能な費用も区別します。一個の追加取引が得だということだけで、期間全体が黒字とは決まりません。

今月の休止と、事業からの退出は違う

今月は固定費を避けられなくても、契約が終わる時期には設備を借り続けるかを選べます。そこで固定費を含めた収入と費用を比べるなら、短期の休止とは判断の範囲が変わります。短期に損失を小さくする選択は、その事業をずっと続ける根拠にはなりません。

模型では休止や再開そのものの費用を省いています。現実にその費用や別の契約義務があるなら、比較する案へ加えます。「固定費を払うから続ける」と言うだけで、新たな損失を増やしていないかの確認を省くことはできません。

採算と、支払日に現金があるかも別です。休止より損失が小さくても、必要な支払を実行できる保証にはなりません。赤字企業のニュースでは、比較した期間、避けられる費用、休止と退出のどちらかを確かめると、同じ赤字という言葉の中の判断を分けられます。

工房の今月の二つの案(架空)
  • 操業

    売上20万円−変動費15万円−固定費10万円=マイナス5万円

  • 休止

    売上0円−変動費0円−固定費10万円=マイナス10万円

休止しても固定費が残り、休止・再開費用がない条件です。

売上が固定費の一部を回収する場合

架空の工房で、今月は休止しても設備費10万円が残り、操業すると材料などに15万円かかるとします。売上20万円なら、操業時の利益は20万円−25万円=マイナス5万円、つまり損失5万円です。休止時は売上も変動費もゼロで、損失は10万円です。

この条件では操業の方が損失は5万円小さくなります。一方、売上が12万円しかなければ、操業の損失は13万円で、休止の10万円より大きくなります。支払時期や再開費用は、この計算に含めていません。

持ち帰る見方

  • 赤字と、休止すれば有利になる状態を分ける。
  • 売上と回避可能な費用を、二つの案で比べる。
  • 短期休止・長期退出・支払能力は別の問い。

次に広がる疑問

  • 各案で変わらない過去費用を分ける
  • もう一個作るときの追加費用を比べる

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出典

  • Principles of Microeconomics 3e, 8.2 How Perfectly Competitive Firms Make Output Decisions(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/8-2-how-perfectly-competitive-firms-make-output-decisions

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

休止しても残る費用を分ける

短期の固定費が休止しても残る場合、操業による売上が回避可能な変動費を上回れば、赤字でも休止より損失が小さくなる。

対象
固定費を回避できない短期の、完全競争企業の操業・休止模型。
条件
短期には休止しても固定費が残り、操業を止めると変動費を回避できる。企業は市場価格を受け入れ、生産量を選べる模型。
例外・限界
固定費が回避できる場合や休止・再開費用がある場合は比較が変わる。最小平均変動費に等しい価格では操業と休止の損失が同じになりうる。採算と支払能力は別。
  • Principles of Microeconomics 3e, 8.2 How Perfectly Competitive Firms Make Output Decisions(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/8-2-how-perfectly-competitive-firms-make-output-decisions

値段と、追加で避けられる費用を比べる

完全競争の標準模型では、価格が最小平均変動費より低ければ短期休止が有利となる。総費用を賄える損益分岐点とは異なる。

対象
固定費を回避できない短期の、完全競争企業の操業・休止模型。
条件
短期には休止しても固定費が残り、操業を止めると変動費を回避できる。企業は市場価格を受け入れ、生産量を選べる模型。
例外・限界
固定費が回避できる場合や休止・再開費用がある場合は比較が変わる。最小平均変動費に等しい価格では操業と休止の損失が同じになりうる。採算と支払能力は別。
  • Principles of Microeconomics 3e, 8.2 How Perfectly Competitive Firms Make Output Decisions(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/8-2-how-perfectly-competitive-firms-make-output-decisions

今月の休止と、事業からの退出は違う

短期に操業した方が損失が小さくても、長期に固定費を含む費用を賄えない状況が続くなら退出の判断は別に必要である。

対象
固定費を回避できない短期の、完全競争企業の操業・休止模型。
条件
短期には休止しても固定費が残り、操業を止めると変動費を回避できる。企業は市場価格を受け入れ、生産量を選べる模型。
例外・限界
固定費が回避できる場合や休止・再開費用がある場合は比較が変わる。最小平均変動費に等しい価格では操業と休止の損失が同じになりうる。採算と支払能力は別。
  • Principles of Microeconomics 3e, 8.2 How Perfectly Competitive Firms Make Output Decisions(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/8-2-how-perfectly-competitive-firms-make-output-decisions