経済の基礎
書面で強制できない約束も、取引を続けるために守られる?
当事者には分かっても第三者に証明しにくい成果には、強制できる報酬条件を付けにくいことがあります。それでも、約束を破ると将来の関係を失う損が大きいなら、約束を守る誘因を作れます。継続利益と不払いの得を比べる関係的契約の考え方です。
基本の用語
仕事を任せると、努力や成果の評価を契約へどう入れるかが問題になります。ここでは評価を当事者が知ることと、裁判所へ証明できることを分けます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 仕事を任せると、なぜ監督が必要になる?利害の違いと、契約で保証できない行動に注目する。
- 取引先専用の設備を造ると、後の値下げ要求が心配になるのはなぜ?ホールドアップ、代替用途と準レント、契約・所有の比較を説明する。
見える成果と、第三者へ証明できる成果は違う
当事者には観察できるが裁判所に検証できない成果や、事前に細かく書く費用が高い成果は、強制できる成果報酬の条件にしにくい。
丁寧な対応や引継ぎのよさを双方が理解していても、後から外部の人へ、どの程度だったかを確認できる資料がない場合を考えます。観察できる成果が全て、そのまま強制できる支払条件になるわけではありません。
また細かな状況を全て書く費用が大きい場合もあります。この模型は書面にすると無効という法律の説明ではありません。成果を第三者が検証できない、あるいは十分な条件を先に記述しにくいという契約上の制約を置きます。
関係を失う損が、約束を守る理由になる
関係的契約は、将来の関係の価値により、第三者が強制できない約束を自己履行させる考え方である。
関係的契約では、言葉を信用する性格だけへ理由を求めません。約束を守れば残る将来の取引、破れば失う取引の価値を比べます。強制できない部分にも、継続を大切にする当事者の誘因が働く条件があります。
仕事を受けた側だけでなく、報酬を払う側にも守る理由が必要です。よい成果を出せば賞与を払うという約束で、成果が出た後に支払を拒めるなら、働く側はその可能性を先に考えます。努力の報酬表だけでは完結しません。
払わない得と、継続する利益を比べる
主観的成果に対する賞与の模型では、雇用者が賞与を払わず得する額より、払って維持する将来利益の現在価値が大きいと、支払を守る誘因がある。
例えば成果後の賞与10を払わないと、今10を節約できます。ただし不払いで関係が終わり、将来得る利益の現在価値15を失うなら、払って続ける方が5だけ有利です。時間の異なる利益は今日の価値へ直してそろえます。
比較する継続価値は、約束を破った後の代替取引で得られるものとの差も含めて考えます。売上の全額を将来利益として足す計算ではありません。継続する場合の純利益と、破った場合に何が残るかを確かめます。
大きな約束ほど、信用できるとは限らない
賞与を大きくすると努力の誘因を高められても、雇用者の不払い益が継続利益を上回るなら約束は自己履行できない。
賞与を増やせば働く側の努力を引き出せるとしても、払う側にはその分だけ不払いの得が増えます。将来利益15のまま賞与を20へ上げる約束なら、この単純比較では守る誘因がなくなります。高い報酬の宣言だけでは信用を増やせません。
将来の取引が終わる、評価を双方で共有できないなどの条件も考える必要があります。反復ゲームの一般的な協力の計算に加え、このページでは何が契約へ書けず、誰が支払を変えられ、どの利益を失うかを具体的に追います。
約束を評価するときは、成果を出す前の働く側の判断と、成果後の払う側の判断を順に見ます。賞与が努力を引き出しても、最後の支払を守る理由がなければ、先の努力も支えにくくなります。
条件を置いた具体例
架空の例
成果を双方が観察できるが、第三者は検証できないとします。成果後の賞与は10、支払えば維持できる将来の純利益の現在価値は15、不払いなら関係が終わり、その追加の継続価値は0と置きます。
払わず10を節約するより、払って15を維持する方が有利です。将来の価値を6に変えると不払いの方が得になります。架空の誘因比較で、どの実際の約束が裁判で強制できるかを判断した例ではありません。
持ち帰る見方
- 当事者には分かっても第三者に証明しにくい成果には、強制できる報酬条件を付けにくいことがあります。
- 賞与を大きくすると努力の誘因を高められても、雇用者の不払い益が継続利益を上回るなら約束は自己履行できない。
次に広がる疑問
- 仕事を任せると、なぜ監督が必要になる?
- 一度きりなら損な協力も、付き合いが続けば維持できる?
順番に読んでいる方へ
出典
Lecture Note2: Relational Contracts, MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%202%20S10.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
見える成果と、第三者へ証明できる成果は違う
当事者には観察できるが裁判所に検証できない成果や、事前に細かく書く費用が高い成果は、強制できる成果報酬の条件にしにくい。
- 対象
- 裁判所で検証できない主観的成果と継続関係による自己履行。
- 条件
- 双方が成果を観察できても第三者が検証できない。約束を破るとその後の協力が失われる戦略と、将来利得の比較を置く。
- 例外・限界
- 書面契約の法的有効性一般についての説明ではない。双方に履行誘因が必要で、将来関係の価値が低ければ同じ約束は支えられない。
Lecture Note2: Relational Contracts, MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%202%20S10.pdf
関係を失う損が、約束を守る理由になる
関係的契約は、将来の関係の価値により、第三者が強制できない約束を自己履行させる考え方である。
- 対象
- 裁判所で検証できない主観的成果と継続関係による自己履行。
- 条件
- 双方が成果を観察できても第三者が検証できない。約束を破るとその後の協力が失われる戦略と、将来利得の比較を置く。
- 例外・限界
- 書面契約の法的有効性一般についての説明ではない。双方に履行誘因が必要で、将来関係の価値が低ければ同じ約束は支えられない。
Lecture Note2: Relational Contracts, MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%202%20S10.pdf
払わない得と、継続する利益を比べる
主観的成果に対する賞与の模型では、雇用者が賞与を払わず得する額より、払って維持する将来利益の現在価値が大きいと、支払を守る誘因がある。
- 対象
- 裁判所で検証できない主観的成果と継続関係による自己履行。
- 条件
- 双方が成果を観察できても第三者が検証できない。約束を破るとその後の協力が失われる戦略と、将来利得の比較を置く。
- 例外・限界
- 書面契約の法的有効性一般についての説明ではない。双方に履行誘因が必要で、将来関係の価値が低ければ同じ約束は支えられない。
Lecture Note2: Relational Contracts, MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%202%20S10.pdf
大きな約束ほど、信用できるとは限らない
賞与を大きくすると努力の誘因を高められても、雇用者の不払い益が継続利益を上回るなら約束は自己履行できない。
- 対象
- 裁判所で検証できない主観的成果と継続関係による自己履行。
- 条件
- 双方が成果を観察できても第三者が検証できない。約束を破るとその後の協力が失われる戦略と、将来利得の比較を置く。
- 例外・限界
- 書面契約の法的有効性一般についての説明ではない。双方に履行誘因が必要で、将来関係の価値が低ければ同じ約束は支えられない。
Lecture Note2: Relational Contracts, MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%202%20S10.pdf