数字と報道

貧困率が同じでも、貧困線までの不足額は違う?

貧困率は貧困線を下回る人数の割合なので、どれくらい下回ったかは分かりません。貧困ギャップ指数は、線までの不足を線で割り、非貧困者をゼロとして全人口で平均します。同じ貧困率でも不足の深さは違いえます。

基本の用語

所得や支出などの福祉指標と貧困線をそろえます。ここでいう貧困ギャップは、貧困者だけの不足率の平均でも、政策に必要な現実の予算額でもありません。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

貧困線までの距離を測る

世界銀行の方法ハンドブックでは、貧困線zより低い所得yiの人の不足をz−yiとし、線以上ならゼロにします。その不足をzで割れば、貧困線に対する比例的な距離となります。

これを全人口で平均したものが貧困ギャップ指数です。線より高い人の余剰をマイナスにして不足と相殺しません。高所得の人がいても、貧困者の線までの不足が消えた計算にはならないという定義です。

同じ貧困線という数値でも、通貨、価格時点、世帯規模の扱いが異なれば比較条件が変わります。指数を並べる前に、何の所得や支出とどの線を使ったかを対応させます。ここでは単位を抽象化した例を用います。

人数が同じでも深さは違う

線を下回る人数が変わらなくても、その人たちの所得が低くなれば不足は増えます。貧困者の割合を示す率だけでは、この変化が表示されません。貧困ギャップは人数に加え、線からの深さに情報を足す指標です。

反対に、貧困者の所得が上がってもまだ線の下なら、貧困率は同じままギャップが小さくなることがあります。貧困率が動かないという報告だけから、線未満の人の状態が全く変わらないとはいえません。

ただしギャップ一つで貧困者内の分布を全て読めるわけでもありません。誰の不足が大きいかを個別に示すものではなく、線までの比例的な不足を平均した要約として読みます。人数指標を置き換える万能の尺度ではありません。

一人あたりの不足と総不足を分ける

貧困者だけの平均不足率を計算し、それに貧困者の人口割合を掛けると、全人口の貧困ギャップ指数になります。非貧困者の不足をゼロとして平均した式を分けた関係です。

例えば貧困者の平均不足が15%でも、人口の半分が貧困なら全人口平均は7.5%です。7.5%を貧困者一人の平均不足と読めば、分母を取り違えています。「誰の平均か」を確認します。

調査標本から人口を推定する場合は、標本の人数を全て同じ重みで平均できるとは限りません。各人の不足を集計する手順でも、元の調査の重みに対応させます。以下の四人の例では、その違いを省略しています。

必要予算そのものとはいえない

不足額の合計をそのまま貧困解消の最低費用と呼ぶ解釈には、全ての貧困者を正しく特定し、不足分だけ完全に効率よく移転できるという条件があります。原ハンドブックもこの条件の強さを説明します。

実際の制度の予算には対象把握や運営の費用があり、行動などの変化も別に考えます。指数は不足の要約であって、その条件を検討せず現実の必要予算と同一視しません。

貧困率とギャップを一緒に見れば、線を越えた人数と、線未満の距離のどちらが変わったかを説明できます。ただし特定の政策の原因や将来の効果を決めるには、指標の変化とは別に比較の設計が必要です。

貧困率50%の二つの集団

架空の四人の所得をAでは80、90、120、150、Bでは40、50、120、150とし、貧困線を100とします。両方とも二人が線未満で、貧困率は50%です。

ギャップ指数はAで(20+10)÷(4×100)=7.5%、Bで(60+50)÷(4×100)=27.5%です。同じ人数割合でも、Bの不足は深いことが分かります。

考えるときの注意点

  • 例の100は任意単位の貧困線。現在の国際貧困線や日本の実測値を示してはいない。

持ち帰る見方

  • 線未満の不足を全人口で平均する。
  • 貧困率と不足の深さは違う情報。
  • 指数を現実の政策予算と同一視しない。

次に広がる疑問

  • 貧困率は、何を貧しいと数える数字?
  • 調査した人の人数を、そのまま全国の割合にできる?
  • 平均所得が増えても、格差は広がる?

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出典

  • Handbook on Poverty and Inequality — Chapter 6 Inequality Measures(Jonathan Haughton / Shahidur R Khandker/世界銀行)https://documents1.worldbank.org/curated/en/488081468157174849/pdf/483380PUB0Pove101OFFICIAL0USE0ONLY1.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

貧困線までの距離を測る

貧困ギャップは貧困線と所得/支出の差で、貧困線以上ではゼロとする。貧困ギャップ指数はその差を貧困線で割り、全人口で平均する。

対象
2009年方法論。貧困線は例の任意単位であり現行国際貧困線を使わない。
条件
同一の貧困線・福祉指標/価格基準。
例外・限界
貧困者だけの平均とは分母が異なる。
  • Handbook on Poverty and Inequality — Chapter 6 Inequality Measures(Jonathan Haughton / Shahidur R Khandker/世界銀行)https://documents1.worldbank.org/curated/en/488081468157174849/pdf/483380PUB0Pove101OFFICIAL0USE0ONLY1.pdf

人数が同じでも深さは違う

貧困者数が同じでも、貧困者の所得が貧困線から離れるほど貧困ギャップ指数は大きくなる。

対象
2009年方法論。貧困線は例の任意単位であり現行国際貧困線を使わない。
条件
同じ全人口人数と貧困線の架空例で定義式を比較する編集上の整理。
例外・限界
実測の政策効果ではない。
  • Handbook on Poverty and Inequality — Chapter 6 Inequality Measures(Jonathan Haughton / Shahidur R Khandker/世界銀行)https://documents1.worldbank.org/curated/en/488081468157174849/pdf/483380PUB0Pove101OFFICIAL0USE0ONLY1.pdf

一人あたりの不足と総不足を分ける

貧困ギャップ指数は貧困者の比率と貧困者内の平均比例不足の積として読める。非貧困者をゼロとして平均するためである。

対象
2009年方法論。貧困線は例の任意単位であり現行国際貧困線を使わない。
条件
同じ貧困線、調査では標本の重みを用いる。編集上の平均の分解。
例外・限界
指数を貧困者一人の不足率と読まない。
  • Handbook on Poverty and Inequality — Chapter 6 Inequality Measures(Jonathan Haughton / Shahidur R Khandker/世界銀行)https://documents1.worldbank.org/curated/en/488081468157174849/pdf/483380PUB0Pove101OFFICIAL0USE0ONLY1.pdf

必要予算そのものとはいえない

不足額の合計を貧困解消の最低費用とみなす解釈は、誰が貧困者かを知り、完全に効率よく不足分だけ移転できるという条件を使う。

対象
2009年方法論。貧困線は例の任意単位であり現行国際貧困線を使わない。
条件
完全な対象把握と定額移転の理論条件。
例外・限界
行政費用や行動変化等を含む現実の予算予測ではない。
  • Handbook on Poverty and Inequality — Chapter 6 Inequality Measures(Jonathan Haughton / Shahidur R Khandker/世界銀行)https://documents1.worldbank.org/curated/en/488081468157174849/pdf/483380PUB0Pove101OFFICIAL0USE0ONLY1.pdf