経済の基礎

水道の会社を増やせば、料金は必ず安くなる?

会社を増やすために設備を重複させると、かえって供給の費用が高くなる市場もあります。需要を満たす範囲で、一社がまとめて供給する方が低費用となる状態を自然独占と呼びます。低い費用で供給できることと、利用者へ適切な料金で届けることは別です。

基本の用語

ここでは、一社で供給する場合と、複数社がそれぞれ設備を造る場合の費用を比べます。水道管は仕組みを考える例で、日本の全ての水道の費用を測った説明ではありません。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

設備を二重に造る費用が大きい場合

配管のような設備に大きな固定費がかかり、一人多くへ供給する費用がそれに比べて小さい市場を考えます。同じ設備で多くの利用者へ届けられるほど、設備費を多くの単位へ分けられます。市場の全需要を満たすまで平均費用が低下する条件なら、二社で設備を別々に造るより、一社で全体へ届ける方が低費用になりえます。

この条件が自然独占です。単に会社が大きいことや、競争相手が現在いないことだけから決まる呼び名ではありません。需要がどれほどあり、供給する量に対して費用がどう変わるかを調べる必要があります。規模の経済が一部の範囲にあることだけで、市場全体を一社にすべきとも言えません。

会社を分ければ競争が生まれるという案にも、設備の造り直しや重複の費用があります。一方、まとめる案では、買い手が別の会社へ移りにくい問題が残ります。生産費用を抑えることと、価格を低く保つ競争を強めることが、同じ方向へ動かない場合を考えています。

追加一単位の費用だけでは、全費用を賄えない

取引の効率を考える標準模型では、追加一単位を作る限界費用と、その一単位への買い手の評価を比べます。料金を限界費用へそろえる案は、追加の供給を考える基準になります。しかし大きな固定費がある自然独占では、その料金が平均費用より低い場合があります。

平均費用より低い価格で全てを売ると、売上は全費用を下回ります。追加分の費用を賄えても、設備全体を含めた費用は回収できません。料金をその低い水準へ定めるなら、ほかの資金の手当てをどうするかも必要です。低料金を命じたことだけでは、継続的な供給を成立させたことになりません。

平均費用を回収できる料金にする案なら、費用を賄う一方で、限界費用と料金の間に差が残ります。どちらを選ぶかには、利用できる量、負担する人、資金の用意という比較があります。模型上の費用曲線が分かることと、現実の必要な費用を正確に把握できることも別です。

費用を回収する料金にも、監督が必要

かかった費用へ一定の収益を加えて料金を決める方法は、費用の回収を考えやすい一方、増えた費用を料金へ反映できるなら、企業が費用を節約する誘因が弱まるという問題があります。費用を回収させれば、効率化の課題も解決するとは限りません。

一定期間の価格上限を先に決める方法では、企業が費用を減らせば、料金との差を収益として得られる余地があります。一方、上限が低すぎたり供給条件が大きく変わったりすると、費用を賄えない場合があります。費用加算と価格上限は、同じ料金規制でも企業の選択に働く向きが違います。

料金を見る際には、対象とする需要範囲と設備、回収する費用、料金を更新する条件を確認します。供給する品質も固定されているかを確かめます。安い料金と必要な品質を同時に確保できるかは、価格だけの図では決まりません。日本の水道料金の具体的な制度は、別の記事で確認します。

設備を一組にする場合と二組にする場合

架空の供給設備で、一組の設備の固定費を100万円、利用者一人への供給費を1,000円とします。一社が1,000人へ供給すると、総費用は200万円、一人当たり2,000円です。

二社が同じ固定費の設備を別々に造り、500人ずつへ供給するなら、全体の費用は300万円、一人当たり3,000円です。設備を共用できない、この費用条件での比較です。料金や適切な事業者数を、実際の水道で算出したものではありません。

持ち帰る見方

  • 自然独占は、需要範囲全体での費用条件を指す。
  • 限界費用を賄う料金と、全費用を回収する料金は違う。
  • 料金規制の誘因と、供給条件・品質も確かめる。

次に広がる疑問

  • 一社の価格設定と需要の制約を読む
  • 日本の水道料金の制度を確認する

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出典

  • Principles of Microeconomics 3e, 11.3 Regulating Natural Monopolies(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/11-3-regulating-natural-monopolies

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

設備を二重に造る費用が大きい場合

需要を満たす範囲で平均費用が下がると、一社が全需要を供給する方が複数社で設備等を重複させるより低費用となる自然独占の模型がある。

対象
需要を満たす生産範囲で平均費用が下がる、自然独占の料金規制模型。
条件
市場の需要を満たす生産範囲で平均費用が低下し、一社で総需要を供給した方が複数社より費用が小さい教材模型。
例外・限界
大企業すべてが自然独占ではない。費用構造や需要範囲が変われば条件も変わる。費用情報、供給する品質、費用削減の誘因は別に確かめる。
  • Principles of Microeconomics 3e, 11.3 Regulating Natural Monopolies(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/11-3-regulating-natural-monopolies

追加一単位の費用だけでは、全費用を賄えない

自然独占の教材模型で価格を限界費用へそろえると、平均費用より低い価格となり、別の資金手当てがなければ赤字となる場合がある。

対象
需要を満たす生産範囲で平均費用が下がる、自然独占の料金規制模型。
条件
市場の需要を満たす生産範囲で平均費用が低下し、一社で総需要を供給した方が複数社より費用が小さい教材模型。
例外・限界
大企業すべてが自然独占ではない。費用構造や需要範囲が変われば条件も変わる。費用情報、供給する品質、費用削減の誘因は別に確かめる。
  • Principles of Microeconomics 3e, 11.3 Regulating Natural Monopolies(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/11-3-regulating-natural-monopolies

費用を回収する料金にも、監督が必要

平均費用を回収する料金は供給継続を考える一案だが、現実の費用情報や費用削減の誘因、品質等を確認する必要がある。費用加算と価格上限は誘因が異なる。

対象
需要を満たす生産範囲で平均費用が下がる、自然独占の料金規制模型。
条件
市場の需要を満たす生産範囲で平均費用が低下し、一社で総需要を供給した方が複数社より費用が小さい教材模型。
例外・限界
大企業すべてが自然独占ではない。費用構造や需要範囲が変われば条件も変わる。費用情報、供給する品質、費用削減の誘因は別に確かめる。
  • Principles of Microeconomics 3e, 11.3 Regulating Natural Monopolies(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/11-3-regulating-natural-monopolies