お金と金融
担保を差し入れた取引で、追加の現金が必要になるのはなぜ?
証拠金は、取引開始時に一定額を置けば終わるとは限りません。取引の時価が変わると、時価評価による損益に対応する支払いが必要になり、担保の評価も変わり得ます。最終的な損益と、途中で必要な現金や担保を用意できるかを分けて考えます。
基本の用語
ここではデリバティブの当初証拠金と変動証拠金を扱います。国内の個人の信用取引の保証金率とは対象や仕組みが違います。取引の相手に何を払うか、担保を誰へ差し入れるか、いつ評価するかをそろえて読みます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 少ない元手で大きく取引すると、損失も元手までで済む?損益は保証金の額ではなく、取引した額にかかる。
当初証拠金は手仕舞いまでの将来変動に備える
当初証拠金は、相手方が不履行になった後、取引を手仕舞いしたり置き換えたりするまでに起こり得る将来の価格変動へ備えます。すでに生じた損失だけでなく、手仕舞いまでに価格が動くことで、相手方の不履行による損失がさらに増えるおそれも考える仕組みです。
当初という名前でも、取引開始時に一度払えば必要額が永遠に固定されるとは限りません。時価、価格の変動や手仕舞いの期間などに応じて額が変わり得ます。投資の買値や、取引全体の損失上限を表す数字とも同じではありません。
変動証拠金は現在の時価評価に対応する
変動証拠金は、取引を現在の市場価格で評価して生じる損益に対応します。受け取るべき利益がまだ支払われていなければ、相手方の不履行で失うおそれのある額が残るためです。デリバティブでは通常、現金を支払ったり受け取ったりするので、価格の変化がその時点の資金の必要へつながる場合があります。将来の変動に備える当初証拠金とは役割が違います。
どれほどの頻度で評価し、担保や決済としてどう扱うかは契約や清算の仕組みによります。すべての証拠金を、後から同額が戻る預け金と考えると、時価評価の損益に対応して支払われる現金を見落とします。
清算する相手と担保の条件を確かめる
証拠金は中央清算を通す取引だけでなく、相手方同士で行う取引にも使います。中央清算では中央清算機関(CCP)が間に入り、相対取引では契約の相手方が不履行になった場合の損失に備えます。相手が違えば、誰へいつ差し入れ、誰から受け取るかを読む必要があります。
担保にできる資産や評価の調整も、仕組み、契約、規制によって違います。非中央清算の国際基準では各法域の監督当局が適格担保を定めます。あらゆる市場の追加証拠金が、同じ率、期限、担保資産になるわけではありません。
値下がりと資金の必要が重なる場合を考える
取引の時価が悪化し変動証拠金が必要なとき、差し入れた非現金担保の価値も下がれば、別に追加担保を用意する必要が生じ得ます。支払いと担保評価の二つを比べ、どちらに対する追加なのかを分けることが大切です。
最終的な取引損益と、途中の支払いを実行できる流動性は別の問題です。十分な財産があっても、期限に使える現金や適格担保を用意する条件を確かめます。ただし必ず全額を現金で賄うとは限らず、必要額と期限は契約や仕組みによります。
- 当初証拠金
不履行後の手仕舞い・置換までに起こり得る将来の変動へ備える。
- 変動証拠金
現在の市場価格で評価した取引の損益に対応する。
必要額や支払いの頻度、担保資産の条件は契約と清算・規制の仕組みによります。
時価の変化と、担保評価を分ける
架空の例
ある契約で、時価評価に応じて変動証拠金20万円を現金で支払う必要が生じたと置きます。別に、必要な当初証拠金を100万円のままとし、差し入れた非現金担保の認定価値が100万円から90万円へ下がる設定を考えます。
担保の不足は10万円です。認められる追加資産を差し入れる条件があり、現金20万円の支払いとは役割が違います。この例では担保の不足も現金で埋めると仮定すれば合計30万円を用意しますが、すべての市場でその条件になるわけではありません。
持ち帰る見方
- 将来の変動に備える当初証拠金と、現在の時価評価に対応する変動証拠金を分ける。
- 取引損益だけでなく、評価日と支払期限の資金を確かめる。
次に広がる疑問
- 国内信用取引の保証金と倍率を別の仕組みとして読む
- 中央清算で相手方が替わる構造を読む
- 利払い交換にも残る相手の信用リスクを読む
順番に読んでいる方へ
出典
Margin requirements for non-centrally cleared derivatives(Basel Committee on Banking Supervision / IOSCO)https://www.bis.org/publications/202004-standards-margin-requirements-non-centrally-cleared-derivatives.pdf
確認日:2026-10-05
Review of margining practices(Basel Committee on Banking Supervision / CPMI / IOSCO)https://www.bis.org/publications/review-margining-practices.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
当初証拠金は手仕舞いまでの将来変動に備える
当初証拠金は、相手方の不履行後に取引を手仕舞い・置き換えるまでの間に起こり得る将来の価格変動に備える。名前に当初とあっても、取引開始時に一度払えば額がずっと変わらないとは限らない。
- 対象
- デリバティブの中央清算及び非中央清算で使われる当初証拠金の役割。
- 条件
- 不履行から手仕舞い・代替取引までの潜在的な将来エクスポージャーを考える。
- 例外・限界
- 必要額は時価・価格変動・手仕舞い期間等に応じて変わり得る。国内の個人信用取引の保証金率とは制度や対象が異なる。
Margin requirements for non-centrally cleared derivatives(Basel Committee on Banking Supervision / IOSCO)https://www.bis.org/publications/202004-standards-margin-requirements-non-centrally-cleared-derivatives.pdf
Review of margining practices(Basel Committee on Banking Supervision / CPMI / IOSCO)https://www.bis.org/publications/review-margining-practices.pdf
変動証拠金は現在の時価評価に対応する
変動証拠金は、取引を時価評価した時点の損益に対応する現在のエクスポージャーを扱う。中央清算又は相対のデリバティブ取引では、通常現金で支払う・受け取るため、価格が動けばその時点で資金が必要になる場合がある。
- 対象
- デリバティブの変動証拠金の機能と一般的な支払い。
- 条件
- 定期的な時価評価で生じる現在のエクスポージャーを担保又は決済の仕組みで解消する。
- 例外・限界
- 頻度や法的な扱いは契約・清算の仕組みによる。すべての証拠金を後で同額が戻る預け金とは考えない。
Margin requirements for non-centrally cleared derivatives(Basel Committee on Banking Supervision / IOSCO)https://www.bis.org/publications/202004-standards-margin-requirements-non-centrally-cleared-derivatives.pdf
Review of margining practices(Basel Committee on Banking Supervision / CPMI / IOSCO)https://www.bis.org/publications/review-margining-practices.pdf
清算する相手と担保の条件を確かめる
証拠金は中央清算を通す取引だけでなく、相対取引にも使われる。誰に差し入れるか、どの資産を担保にできるか、いつ追加が必要かは、取引の仕組みや契約・規制に応じて異なる。
- 対象
- 中央清算と非中央清算の証拠金の比較。
- 条件
- CCPを介する仕組みと、相手方同士で行う仕組みを分ける。
- 例外・限界
- 国際基準の適格担保は各法域で実施される。すべての市場の追証が同じ率・期限・担保資産になるわけではない。
Margin requirements for non-centrally cleared derivatives(Basel Committee on Banking Supervision / IOSCO)https://www.bis.org/publications/202004-standards-margin-requirements-non-centrally-cleared-derivatives.pdf
Review of margining practices(Basel Committee on Banking Supervision / CPMI / IOSCO)https://www.bis.org/publications/review-margining-practices.pdf
値下がりと資金の必要が重なる場合を考える
取引の時価が悪化して変動証拠金が必要になるときに、差し入れた非現金担保の価値も下がれば、資金や追加担保をさらに用意する必要が生じ得る。最終的な取引損益と、途中の証拠金を支払えるかという資金繰りは別の問題である。
- 対象
- 時価評価による証拠金と非現金担保の評価を組み合わせた条件付きの整理。
- 条件
- 変動証拠金を求められ、同時に担保評価が下がる状況を想定する。
- 例外・限界
- 必要額・認められる担保・追加の期限は仕組み次第であり、必ず全額を現金で調達するとは限らない。
Margin requirements for non-centrally cleared derivatives(Basel Committee on Banking Supervision / IOSCO)https://www.bis.org/publications/202004-standards-margin-requirements-non-centrally-cleared-derivatives.pdf
Review of margining practices(Basel Committee on Banking Supervision / CPMI / IOSCO)https://www.bis.org/publications/review-margining-practices.pdf