お金と金融

変動金利の借金を、固定金利の負担へ変えられる?

借入と同じ変動金利を受け取り、固定金利を払う金利スワップを組み合わせると、一定の条件の下で合計の利息負担を固定できます。借入元本の返済は残ります。指数や日程が合わない場合や相手の不履行まで消えるわけではありません。

基本の用語

金利スワップは利払いの条件を交換する契約です。ここでは同じ通貨の固定金利と変動金利を交換し、想定元本そのものは渡さない型を考えます。借入とスワップは別の契約として、払う側・受け取る側を書き分けます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

借金の元本ではなく、利払いの条件を交換する

利息を計算するための金額が想定元本です。想定元本が1,000万円であっても、スワップを組むためにその1,000万円を相手へ貸すという意味ではありません。BISの定義には固定と変動の交換だけでなく、違う指数を使う変動金利どうしの交換も含まれます。

ここで扱うのは固定と変動の利払いを交換する型です。その契約が今いくらの価値を持つかも、想定元本とは別の問いです。将来の受取りと支払いの差に価値があるので、想定元本をそのまま損失額や現在の市場価値として読むことはできません。

差額を払う側は、金利で変わる

同じ日に同じ通貨の支払いを相殺する有効な契約なら、二つの利払いの差額を一方が払います。固定3%を払って変動金利を受け取る側は、変動が5%なら差額を受け取り、変動が2%なら差額を支払う、という向きになります。

支払いの方向は固定金利を払うという名前だけでは決まりません。固定と変動の大小を比べる必要があります。また異なる通貨や異なる日の義務まで無条件に相殺できるわけではなく、対象範囲と契約の法的な有効性を確かめます。

借入とスワップを合わせて固定負担を考える

変動金利で借りた人が、同じ変動金利をスワップで受け取り、固定金利を払う場合を考えます。借入の支払いからスワップの受取りを差し引けば、変動部分が消えます。借入の上乗せ金利が一定なら、残るのは固定金利とその上乗せの和です。

この計算には、元本、参照指数、計算期間、見直し日と支払日をそろえる条件があります。双方が履行することも必要です。合計の利息を固定する組合せと、貸手との借入契約そのものを固定金利へ変更することは、同じ手続きではありません。

元本を渡さなくても相手の不履行に備える

元本を相手へ渡さないからといって、信用リスクがゼロにはなりません。受け取るはずの金額を相手が払えなくなる可能性が残ります。その時点で相手から支払いを受ける権利がどれだけの価値を持つか、同じ条件の取引を結び直すのにいくら必要かを考えます。

相手が不履行になった時点で契約が自分にとってプラスの価値を持つ場合、その価値が損失の危険にさらされます。この価値は契約期間中に変わり、想定元本の全額を一律に失うという説明ではありません。元本交換の有無と、相手の履行に依存する支払いの有無を分けて考えます。

指数や日程が合わないと変動が残る

借入が参照する金利とスワップで受け取る金利が違うと、同じ幅で動く保証はありません。固定金利を払う契約があっても、借入の変動分と受取額がずれれば、合計負担には変動が残ります。対象の元本が一部だけの場合も同様です。

借入の上乗せ金利自体が変わる場合にも、上乗せ一定という計算は使えません。金利の名前だけでなく、何の指数をいつの値で計算し、いくらに適用し、いつ払うかまで合わせて初めて、相殺できる範囲が分かります。

借入とスワップを足し合わせる

架空の例

一年の計算期間で想定元本と借入元本をともに1,000万円、借入を変動金利+1%、スワップを固定3%支払・同じ変動金利受取と置きます。手数料等を省き、計算と支払の日程をそろえて双方が履行する設定です。

変動金利5%なら借入利息60万円にスワップの純受取20万円を合わせ、純負担40万円です。変動金利2%なら借入利息30万円にスワップの純支払10万円を加え、やはり40万円です。借入元本1,000万円を返す義務は、この利息計算の外に残ります。

持ち帰る見方

  • 利払いの想定元本と、元本返済・契約時価を分ける。
  • 借入と受取りの指数・元本・日程がそろう範囲だけを相殺する。

次に広がる疑問

  • リスクを移す契約と残る条件を読む
  • 借入の利息と元本返済を分ける
  • 契約の時価に応じた証拠金を読む

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出典

  • Reporting guidelines for the amounts outstanding part of the 2025 Triennial Central Bank Survey(Bank for International Settlements)https://www.bis.org/publications/triennial-survey/2025survey-guidelinesoutstanding.pdf

    確認日:2026-10-05

  • Risk Management of Financial Derivatives, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/risk-mgmt-financial-derivatives/pub-ch-risk-mgmt-financial-derivatives.pdf

    確認日:2026-10-05

  • Interest Rate Risk, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/interest-rate-risk/pub-ch-interest-rate-risk.pdf

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

借金の元本ではなく、利払いの条件を交換する

BISの同一通貨金利スワップの定義には、固定金利と変動金利の利払い交換、または異なる指数による変動金利どうしの交換が含まれる。利払いを計算する想定元本と、スワップの市場価値は別である。

対象
想定元本を貸し借りせず、同じ通貨の固定金利と変動金利の利払いを交換する型の金利スワップ。
条件
元本授受を伴わない利払い交換を対象に、同じ通貨・想定元本・期間で比較する。
例外・限界
通貨スワップの元本交換や、想定元本と同額の損失を一律に意味するわけではない。
  • Reporting guidelines for the amounts outstanding part of the 2025 Triennial Central Bank Survey(Bank for International Settlements)https://www.bis.org/publications/triennial-survey/2025survey-guidelinesoutstanding.pdf

  • Risk Management of Financial Derivatives, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/risk-mgmt-financial-derivatives/pub-ch-risk-mgmt-financial-derivatives.pdf

差額を払う側は、金利で変わる

同じ日に同じ通貨で互いに払う金額を相殺する契約なら、固定利払いと変動利払いの差額を一方が支払う。変動金利が固定金利より高い場合と低い場合で、差額を払う側が変わる。

対象
想定元本を貸し借りせず、同じ通貨の固定金利と変動金利の利払いを交換する型の金利スワップ。
条件
支払日の一致、同じ通貨、相殺の有効な契約と対象範囲が必要。利率を年率、計算期間を一年としてそろえる。
例外・限界
異なる日・通貨の義務を無条件に相殺できるわけではない。
  • Risk Management of Financial Derivatives, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/risk-mgmt-financial-derivatives/pub-ch-risk-mgmt-financial-derivatives.pdf

  • Reporting guidelines for the amounts outstanding part of the 2025 Triennial Central Bank Survey(Bank for International Settlements)https://www.bis.org/publications/triennial-survey/2025survey-guidelinesoutstanding.pdf

借入とスワップを合わせて固定負担を考える

変動金利で借り、スワップで同じ変動金利を受け取り固定金利を支払うと、変動部分が相殺される。貸出の上乗せ金利が一定なら、合計の利息負担は固定金利とその上乗せ金利の和になる。

対象
想定元本を貸し借りせず、同じ通貨の固定金利と変動金利の利払いを交換する型の金利スワップ。
条件
借入とスワップの元本、金利指数、計算期間、見直し日・支払日をそろえ、借入の上乗せを一定とし、双方が履行する。
例外・限界
借入元本の返済義務自体は残る。合計の利息固定化と借入契約そのものを固定金利へ変更することは別。
  • Interest Rate Risk, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/interest-rate-risk/pub-ch-interest-rate-risk.pdf

  • Risk Management of Financial Derivatives, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/risk-mgmt-financial-derivatives/pub-ch-risk-mgmt-financial-derivatives.pdf

元本を渡さなくても相手の不履行に備える

元本を交換しなくても、スワップ相手が支払えなくなる信用リスクは残る。相手に対する現在の正の時価や、将来の再調達費用が信用曝露に関わる。

対象
想定元本を貸し借りせず、同じ通貨の固定金利と変動金利の利払いを交換する型の金利スワップ。
条件
同じ契約に相手が履行すべき利払い等があり、相手の不履行と契約価値を分けて考える。
例外・限界
信用曝露は時価や将来の条件で変わり、想定元本全額をそのまま損失額とする計算ではない。
  • Risk Management of Financial Derivatives, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/risk-mgmt-financial-derivatives/pub-ch-risk-mgmt-financial-derivatives.pdf

指数や日程が合わないと変動が残る

借入とスワップが参照する金利指数などが違えば、変動部分は同じ幅で動くとは限らない。固定金利を払うスワップを持つだけで、全ての金利負担が完全に固定されるわけではない。

対象
想定元本を貸し借りせず、同じ通貨の固定金利と変動金利の利払いを交換する型の金利スワップ。
条件
同じ指数と想定元本・期間を合わせる場合の固定化と、指数が異なる場合を比較する。
例外・限界
借入の上乗せが変動する場合や一部の元本だけをヘッジする場合にも、同じ完全相殺の式は当てはまらない。
  • Risk Management of Financial Derivatives, Comptroller’s Handbook(Office of the Comptroller of the Currency)https://www.occ.gov/publications-and-resources/publications/comptrollers-handbook/files/risk-mgmt-financial-derivatives/pub-ch-risk-mgmt-financial-derivatives.pdf