経済の基礎
仕事の提示を断って探し続ける判断は、何と比べる?
今の仕事を受けた価値と、断って次の提示を待つ価値を比べます。賃金以外の条件が同じという探索模型では、受け入れる境目が留保賃金になります。希望する給与を一方的に宣言した額や、法定最低賃金とは違います。
基本の用語
仕事を探す間にも時間が過ぎます。提示される仕事の分布と、待っている間の便益、将来をどれだけ重く見るかが、受諾の判断に関わります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 求人があるのに失業が残るのはなぜ?求人の総数と、仕事が合うことを分ける。
- 給料は、働く量だけで決まる?生産性・交渉・制度と労働条件
今受ける価値と、探し続ける価値を比べる
逐次探索では提示された賃金の仕事を受けた価値と、今期の失業中の便益に将来の探索価値を足したものを比べる。
受けた仕事が同じ賃金でずっと続く模型なら、受諾価値は今期の賃金だけでなく、その後の賃金も割り引いて足したものです。探索継続の方も、今期の状態に次回以降の選択の価値を足し、時点をそろえて比べます。
ここでは賃金以外は同じ仕事が、既知で変わらない分布から独立に一つずつ提示されると置きます。失業中の便益は模型の一期間の値で、現実の給付額だけを指す語ではありません。費用と便益をまとめた比較です。
受け入れる境目が留保賃金になる
賃金以外は同じという標準的な定常探索模型では、受諾価値が探索継続価値に等しくなる留保賃金があり、それより高い提示を受け低い提示を断る。
境目より上なら受ける価値が高く、下なら次回へ進む価値が高いと考えます。境目と等しい場合は二つの価値が同じです。応募できる最低額という意味でなく、提示を受けた後に探索を止める基準です。
同じ提示額でも、次回によい仕事を得る見込みが違えば判断は違います。留保賃金は今見えている最高賃金そのものではありません。後の可能性を含めた継続価値が、今日の提示の評価へ入ります。
探索の追加利益が、待つ費用に見合うか
留保賃金では、その賃金を今受けないことで失う便益と、もう一回探してより高い提示を得る期待便益がつり合う。
もう一回探すことで高い提示を得られる可能性があっても、低い提示が来ることもあります。期待便益は、都合のよい一つの結果だけで決めません。さらに将来の便益を割り引き、待つ間に得るものと失うものを合わせます。
境目では、今その仕事を受けず待つ費用と、探索で得られる改善の期待がつり合います。そのため、高い給与の仕事が世の中に存在するというだけでは、無期限に待つ方が得だとはいえません。出会う確率と時間の比較が必要です。
境目の高さは、探索条件で変わる
他の条件を固定したMcCall模型では、失業中の便益が高くなると探索継続価値が上がり、留保賃金が高くなる。
失業中の便益だけが高くなれば、待つ選択の価値が増えます。この比較では賃金分布、割引、仕事の継続などは変えません。給付制度を変えた現実で他の条件も動いた場合、その結果をこの一方向の比較だけで予測しません。
実際の職場には勤務時間、通勤、技能を学ぶ機会、雇用期間などの違いがあります。賃金一本の境目を使う前に、それらを省いてよい問いかを考えます。このページの模型は求職者の停止判断を整理し、個人に特定の内定を断るよう勧めるものではありません。
受諾価値と継続価値は、どちらも今日から先を含む値です。今月の賃金だけを、将来まで含んだ探索価値と比べると単位がそろいません。境目を読む際には、何期分を足した値かも確かめます。
条件を置いた具体例
架空の例
一期間の割引因子を0.9、受けた仕事は同じ賃金で続くとします。探索継続の価値が、その条件の下で既に1200と求まっている仮の状態を考えます。
受諾価値は賃金÷(1−0.9)です。賃金100なら1000なので探索、150なら1500なので受諾、120なら1200で等しくなります。1200はここで置いた値で、賃金分布から探索価値を解いた実例ではありません。
持ち帰る見方
- 今の仕事を受けた価値と、断って次の提示を待つ価値を比べます。
- 他の条件を固定したMcCall模型では、失業中の便益が高くなると探索継続価値が上がり、留保賃金が高くなる。
次に広がる疑問
- 求人があるのに失業が残るのはなぜ?
- 無料でも費用があるとはどういうこと?
出典
Lectures11–13: Search, Matching and Unemployment, MIT14.661 (2017)(MIT OpenCourseWare / Daron Acemoglu)https://ocw.mit.edu/courses/14-661-labor-economics-i-fall-2017/e1fd925bb0b2ab9452147baee5c1b0b5_MIT14_661F17_lec11_13.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
今受ける価値と、探し続ける価値を比べる
逐次探索では提示された賃金の仕事を受けた価値と、今期の失業中の便益に将来の探索価値を足したものを比べる。
- 対象
- McCall逐次探索模型の求職者の受諾/探索の停止判断。
- 条件
- 賃金以外は同じ仕事、定常の既知賃金分布から独立に一回ずつ提示、危険中立・割引因子一定、仕事は一度受けると続く。
- 例外・限界
- 現実の職場の質、有限契約、家計負担、分布学習等で単一の賃金閾値が変わりうる。留保賃金は法定最低賃金でも本人の実測希望額でもない。
Lectures11–13: Search, Matching and Unemployment, MIT14.661 (2017)(MIT OpenCourseWare / Daron Acemoglu)https://ocw.mit.edu/courses/14-661-labor-economics-i-fall-2017/e1fd925bb0b2ab9452147baee5c1b0b5_MIT14_661F17_lec11_13.pdf
受け入れる境目が留保賃金になる
賃金以外は同じという標準的な定常探索模型では、受諾価値が探索継続価値に等しくなる留保賃金があり、それより高い提示を受け低い提示を断る。
- 対象
- McCall逐次探索模型の求職者の受諾/探索の停止判断。
- 条件
- 賃金以外は同じ仕事、定常の既知賃金分布から独立に一回ずつ提示、危険中立・割引因子一定、仕事は一度受けると続く。
- 例外・限界
- 現実の職場の質、有限契約、家計負担、分布学習等で単一の賃金閾値が変わりうる。留保賃金は法定最低賃金でも本人の実測希望額でもない。
Lectures11–13: Search, Matching and Unemployment, MIT14.661 (2017)(MIT OpenCourseWare / Daron Acemoglu)https://ocw.mit.edu/courses/14-661-labor-economics-i-fall-2017/e1fd925bb0b2ab9452147baee5c1b0b5_MIT14_661F17_lec11_13.pdf
探索の追加利益が、待つ費用に見合うか
留保賃金では、その賃金を今受けないことで失う便益と、もう一回探してより高い提示を得る期待便益がつり合う。
- 対象
- McCall逐次探索模型の求職者の受諾/探索の停止判断。
- 条件
- 賃金以外は同じ仕事、定常の既知賃金分布から独立に一回ずつ提示、危険中立・割引因子一定、仕事は一度受けると続く。
- 例外・限界
- 現実の職場の質、有限契約、家計負担、分布学習等で単一の賃金閾値が変わりうる。留保賃金は法定最低賃金でも本人の実測希望額でもない。
Lectures11–13: Search, Matching and Unemployment, MIT14.661 (2017)(MIT OpenCourseWare / Daron Acemoglu)https://ocw.mit.edu/courses/14-661-labor-economics-i-fall-2017/e1fd925bb0b2ab9452147baee5c1b0b5_MIT14_661F17_lec11_13.pdf
境目の高さは、探索条件で変わる
他の条件を固定したMcCall模型では、失業中の便益が高くなると探索継続価値が上がり、留保賃金が高くなる。
- 対象
- McCall逐次探索模型の求職者の受諾/探索の停止判断。
- 条件
- 賃金以外は同じ仕事、定常の既知賃金分布から独立に一回ずつ提示、危険中立・割引因子一定、仕事は一度受けると続く。
- 例外・限界
- 現実の職場の質、有限契約、家計負担、分布学習等で単一の賃金閾値が変わりうる。留保賃金は法定最低賃金でも本人の実測希望額でもない。
Lectures11–13: Search, Matching and Unemployment, MIT14.661 (2017)(MIT OpenCourseWare / Daron Acemoglu)https://ocw.mit.edu/courses/14-661-labor-economics-i-fall-2017/e1fd925bb0b2ab9452147baee5c1b0b5_MIT14_661F17_lec11_13.pdf