経済の基礎

保険に入っていても、最初の一定額は自分で払うのはなぜ?

免責額は、保険の対象損失のうち本人に残す負担です。大きくすると保険料を抑えられる場合がありますが、損失時の負担も比べる必要があります。事故防止の誘因と、本人が負担に備えられるかは別の問いです。

基本の用語

ここでは一回の対象損失から定額の免責額を引き、支払上限や比例負担を別に置かない単純モデルを使います。保障対象が同じ二つの契約で、免責額の違いによる負担と給付を比べます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

保険の対象損失と、本人に残る負担を分ける

対象損失が免責額を超えれば、本人が免責部分を負担し、それを超える部分を保険が支えます。損失が免責額以下なら、このモデルでは保険の支払はなく、本人がその損失額を負担します。

損失の全額と保険の対象損失も分けます。現実の契約には、保障対象、割合で決める免責、事故ごとか期間合算かといった違いがあります。「免責」という言葉だけから、一律の計算方法を当てはめません。

免責額を大きくすると、保険の支払額はどう変わるか

同じ対象損失に対して免責額を大きくすれば、本人負担は増えうる一方、保険の支える部分は小さくなります。ただし、損失が双方の免責額以下なら、どちらも支払はゼロで本人負担も同じです。

対象保障や保険会社など他条件をそろえると、免責を大きくして保険料を抑えられる場合があります。しかし保険料の差額だけでなく、損失時に残る自己負担も比較します。更新のたびに必ず保険料が下がるという保証ではありません。

保障が変わると、予防の誘因も変わりうる

本人が選ぶ予防行動が損失に関わり、その行動を保険者が完全には観察できないモデルでは、保障条件が行動の誘因を変えます。保険が損失の一部を支えると、予防によって避けられる本人の負担も変わります。これが、契約後の見えにくい行動を考える理由です。

自己負担を残すことは、その誘因を考える設計の一つです。ただし、全事故を本人の努力で防げるわけではありません。免責を増やせば実際の事故が必ず減ると実証した結論や、事故に遭った本人が怠っていたという判断とは区別します。

大きな免責が、誰にでも最適とは限らない

契約を比べるなら、支払う保険料と、対象損失が起きたときの自己負担を合わせて考えます。自己負担が大きくても保険料が小さい方を選ぶかは、損失の可能性や本人の資金、保障条件によって変わります。

大きな免責が誰にとっても最適なわけではありません。保険料を払えることと、損失時の免責部分を払えることも違います。負担を引き受ける条件を具体化してから比べることが、免責額だけを見て決めないための出発点です。

定額免責と対象損失の関係
  • 損失が免責以下

    給付は0。本人は実際の対象損失額を負担。

  • 損失が免責を超える

    本人は免責額を負担。超えた部分を保険が支える。

一回の対象損失から定額を引くモデル。支払上限や比例負担は置いていません。

損失額によって、二つの免責の差が変わる

架空の例

対象損失8万円に対し、定額免責が1万円なら本人負担1万円・給付7万円、免責3万円なら本人負担3万円・給付5万円と置けます。支払上限や比例負担はなく、損失全体が保障対象という設定です。

損失が2万円なら、免責1万円の給付は1万円、免責3万円では給付は0です。損失が5,000円なら、どちらも給付0・本人負担5,000円になります。免責を大きくしたときの差は、損失額との組合せでも変わります。保険料の差はこの計算とは別に比べます。

持ち帰る見方

  • 免責額、対象損失、給付額を分けて計算する。
  • 保険料の差と、損失時に本人が負担できる額を合わせて比べる。

次に広がる疑問

  • 損失を共同で支える保険の考え方を読む
  • 契約前の情報と、契約後の行動を分ける
  • 平均の損得だけでは決まらない選択を考える

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Understanding your insurance deductibles(Insurance Information Institute)https://www.iii.org/article/understanding-your-insurance-deductibles

    確認日:2026-10-05

  • 14.01 Principles of Microeconomics, Lecture Summary 21: Asymmetric Information and Social Insurance(Massachusetts Institute of Technology OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec21.pdf

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

保険の対象損失と、本人に残る負担を分ける

定額免責の単純モデルでは、保険の対象損失のうち一定額を本人が負担し、その額を超える部分を保険が支える。損失が免責額以下なら、その損失についての支払はない。

対象
定額免責額を対象損失から差し引く単純な保険契約モデル。米国資料の一般説明を用い、日本の全保険の法定条件を示すものではない。
条件
損失が保障対象で、支払上限や比例負担を別に置かない一回の定額免責モデル。
例外・限界
現実の契約には割合免責、対象保障、事故ごと/期間合算等の違いがある。日本の全保険へ同じ計算を当てはめない。
  • Understanding your insurance deductibles(Insurance Information Institute)https://www.iii.org/article/understanding-your-insurance-deductibles

免責額を大きくすると、保険の支払額はどう変わるか

免責額を大きくすると、同じ対象損失に対する本人の負担は増えうる。その代わり保険が支える部分は小さくなるが、損失が両方の免責額以下なら、どちらも支払はない。他条件が同じなら保険料を抑えられる場合があり、損失時の負担との比較が必要になる。

対象
定額免責額を対象損失から差し引く単純な保険契約モデル。米国資料の一般説明を用い、日本の全保険の法定条件を示すものではない。
条件
対象保障、損失条件、保険会社等の他条件をそろえ、免責額だけが異なる契約を比べる。
例外・限界
更改のたびに保険料が必ず下がる保証ではない。大きな自己負担を払えるかも選択に関わる。
  • Understanding your insurance deductibles(Insurance Information Institute)https://www.iii.org/article/understanding-your-insurance-deductibles

保障が変わると、予防の誘因も変わりうる

保険で損失を他者が負担する条件になると、本人の予防等の行動が変わりうる。この隠れた行動の問題を考えるモデルでは、自己負担を残すことが誘因設計の一つになる。

対象
定額免責額を対象損失から差し引く単純な保険契約モデル。米国資料の一般説明を用い、日本の全保険の法定条件を示すものではない。
条件
本人が選べる予防行動が損失に関わり、その行動や効果を保険者が完全には観察できないモデル。
例外・限界
全事故を本人の努力で防げるとは限らない。免責額が実際の全事故を減らすと実証した主張ではない。
  • 14.01 Principles of Microeconomics, Lecture Summary 21: Asymmetric Information and Social Insurance(Massachusetts Institute of Technology OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec21.pdf

  • Understanding your insurance deductibles(Insurance Information Institute)https://www.iii.org/article/understanding-your-insurance-deductibles

大きな免責が、誰にでも最適とは限らない

自己負担は保険料を抑える余地と、損失時の本人の負担を合わせて比べる。免責額を高くするだけで、誰にとってもよい契約になるわけではない。

対象
定額免責額を対象損失から差し引く単純な保険契約モデル。米国資料の一般説明を用い、日本の全保険の法定条件を示すものではない。
条件
損失への備えと、支払う保険料を比べる定額免責の契約選択。
例外・限界
一つの普遍的な最適免責額を決めるモデルではない。本人の資金、保障条件、損失の可能性を踏まえる。
  • Understanding your insurance deductibles(Insurance Information Institute)https://www.iii.org/article/understanding-your-insurance-deductibles