数字と報道

別の出来事で追跡を終えた人を除けば、再就職の確率は分かる?

再就職前に死亡するなど、再就職を妨げる別の出来事が起きる場合は、競合リスクを考えます。その出来事を普通の追跡終了として除き、再就職だけの生存曲線を作ると、現実の再就職確率とは違う量を推定することがあります。

基本の用語

目的の出来事が観測されないまま観測期間が終わった人の右側打ち切りと、別の終点へ到達して目的の出来事が起こりえなくなった人を分けます。何を最初の出来事として数えるかが出発点です。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

最初の出来事を分ける

最初の再就職を追う人が、その前に死亡すれば、その後に最初の再就職は起こりません。こうした他の終点が競合する出来事です。単に観測期間が終わり、その後の再就職が不明な人とは、分からなくなった理由が違います。

出来事が本当に終点かは問い次第です。退職後にも仕事へ戻る人を追いたいなら、退職を永久の終点とする設定では答えが変わります。複数の状態を移る過程を扱う設計と、最初の終点だけを追う設計を区別します。

目的の再就職が一度起きた後の死亡は、最初の再就職の有無を変えません。ここで競合するのは目的の出来事より先に起きる終点です。何でも別の出来事があれば競合と呼ぶのではなく、問いの時系列に沿って整理します。

累積発生確率は全ての出口に依存する

時点までに再就職した確率を表す累積発生関数では、それぞれの時点にまだどの終点にも達していない確率と、そこから再就職する率を組み合わせます。目的の出来事の率だけでなく、他の終点に至る過程も関係します。

他の終点が増えると再就職へ進める人が変わるため、再就職のハザードと、期限までに再就職する確率は同じ指標ではありません。対象がまだどの状態にいる人なのかをそろえて、率と累積確率を読みます。

原因別の率を読むときの集団は、その時点までどの終点にも達していない人です。最初の人数からどの程度がその集団に残っているかが変われば、同じ率でも期限内の人数割合は変わりえます。

ほかの出来事を普通の打切りにしない

生存分析では、他の出来事を打ち切りにして、それぞれへ別々のKaplan–Meier曲線を当てることを、競合リスクでのよくある誤りと説明します。現実に他の終点へ移ったことを累積確率へ反映しないためです。

目的の出来事だけを残した計算結果に、そのまま「この集団の何%が期限内に再就職した」という解釈を付けません。競合する出来事のある現実の累積発生と、別の条件で構成した曲線を分けます。

通常の打ち切りも無条件で無視できるわけではありませんが、それを説明した記事の条件を競合終点へそのまま当てることはできません。「記録がそこで終わる」という見た目が同じでも、終わった理由を区別する必要があります。

割合と速さを読み分ける

原因別のハザードは各出来事について計算できますが、状態にいる確率を求めるには他の状態も一緒に扱います。特定の終点の累積確率と、まだどの終点にも達していない確率がどう組み合うかを確認します。

報告では、開始状態、終点、追跡の打ち切り、評価する期限を探します。支援が再就職過程を変えたかという問いでも、比較する率と確率のどちらを結論に用いたかが明確である必要があります。

期限を一年にするか三年にするかで、積み上げる累積発生は違います。終点の定義と期限をそろえた比較なら、支援のある群とない群で何が起きたかを説明できます。終点や期限の違う確率を一つの率として並べないようにします。

最初の終点を追うときの行き先
  • 目的の終点

    最初の再就職へ到達する。

  • 競合する終点

    再就職前の死亡などで、最初の再就職が起こりえなくなる。

  • どちらにも未到達

    期限まで終点に達していない。追跡終了は別に扱う。

競合する終点を普通の打ち切りとして消さず、期限内の累積確率へ反映する。

期限までの三つの行き先

架空の100人を全員期限まで確認し、その前の最初の出来事が再就職30人、死亡10人、どちらにも至らない60人だったとします。この設定の期限内再就職割合は30%です。

死亡した10人を分母から外して30÷90とする値は、最初の100人に対する30%とは違います。打ち切りのある実データでは適切な推定が必要ですが、行き先を消すと問いが変わることは同じです。

考えるときの注意点

  • 最初の終点を追う競合リスクを説明する。後に同じ状態へ戻る過程には別の状態遷移の設計が必要。

持ち帰る見方

  • 競合終点と観測終了を区別する。
  • 期限内の累積確率には他の終点も関係する。
  • ハザードと状態の確率を分けて読む。

次に広がる疑問

  • 追跡が終わった人を、生存時間のグラフでどう扱う?
  • 検査が陽性でも、病気のある人の割合が違うのはなぜ?
  • 二つの数字が一緒に動けば、原因が分かる?

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出典

  • Multi-state models and competing risks(Terry Therneau / Cynthia Crowson / Elizabeth Atkinson(survival原著者))https://cran.r-project.org/web/packages/survival/vignettes/compete.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

最初の出来事を分ける

競合リスクでは同じ開始状態から複数の終端状態のいずれかへ最初の移行をする。

対象
2026年9月9日付vignette。競合する最初のイベントの方法部分。
条件
各イベントを互いに競合する初回イベントとして定義。
例外・限界
後の再移行まで問うなら別の多状態設計が必要。
  • Multi-state models and competing risks(Terry Therneau / Cynthia Crowson / Elizabeth Atkinson(survival原著者))https://cran.r-project.org/web/packages/survival/vignettes/compete.pdf

累積発生確率は全ての出口に依存する

ある種類の累積発生確率は、その種類の発生の速さと、どの種類もまだ起きていない確率を合わせて計算する。

対象
2026年9月9日付vignette。競合する最初のイベントの方法部分。
条件
時点/開始集団/イベントをそろえる。
例外・限界
その種類の原因別ハザードだけで確率は決まらない。
  • Multi-state models and competing risks(Terry Therneau / Cynthia Crowson / Elizabeth Atkinson(survival原著者))https://cran.r-project.org/web/packages/survival/vignettes/compete.pdf

ほかの出来事を普通の打切りにしない

別種類のイベントを打切りとして種類ごとにKaplan–Meierを作り、1から引くと、競合がある実際の累積発生確率にはならない。

対象
2026年9月9日付vignette。競合する最初のイベントの方法部分。
条件
競合イベントのある最初の発生確率を知りたい場合。
例外・限界
原因別ハザードの分析で他原因をリスク集合から外す操作とは推定対象が違う。
  • Multi-state models and competing risks(Terry Therneau / Cynthia Crowson / Elizabeth Atkinson(survival原著者))https://cran.r-project.org/web/packages/survival/vignettes/compete.pdf

割合と速さを読み分ける

原因別のハザードは種類ごとに計算できるが、状態にいる確率は全てのハザードに依存する。

対象
2026年9月9日付vignette。競合する最初のイベントの方法部分。
条件
原因別ハザードはその時点でまだどのイベントも起きていない集団の発生の速さ。
例外・限界
ハザードが同じでも競合する出口が違えば累積発生確率は変わりうる。
  • Multi-state models and competing risks(Terry Therneau / Cynthia Crowson / Elizabeth Atkinson(survival原著者))https://cran.r-project.org/web/packages/survival/vignettes/compete.pdf