政治の仕組み

裁判所の鑑定人が出した結論で、判決も決まる?

鑑定人は裁判所が指定し、専門知識に基づく意見を述べます。その意見が判決を自動的に決めるわけではありません。鑑定人を選ぶ条件、誠実な鑑定を妨げる事情、意見の根拠と裁判所の事実認定を分けて読みます。

基本の用語

証人が経験した事実を話すのに対し、鑑定では専門的な学識経験を利用します。ここでは民事訴訟の鑑定を扱い、当事者が自分で集めた専門家の意見と裁判所の指定を同じにしません。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

鑑定人は専門知識を持つ人を裁判所が指定する

民事訴訟法212条は、鑑定に必要な学識経験を持つ人に鑑定の義務があると定めます。213条は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が鑑定人を指定するとします。専門家という肩書だけで、誰でもこの事件の鑑定人になるわけではありません。

一定の関係から証言や宣誓を拒める人と同じ地位にある人など、鑑定人となれない場合もあります。専門的な能力と、その事件で鑑定人を担当できるかは別の条件です。知識が豊富であることだけで、法定の制限を省けません。

また、当事者が専門家へ相談して意見を得たことと、裁判所が鑑定人を指定したことも区別します。文書の表題に「専門意見」とあっても、それだけで法定の鑑定と同じ経路を経たとは分かりません。作成者と指定の記録を合わせて読みます。

誠実な鑑定を妨げる事情があれば忌避できる

鑑定人について、誠実に鑑定することを妨げる事情があるときは、当事者が忌避を申し立てられます。原則として鑑定事項の陳述前に行います。自分に有利な結論を出しそうかという期待で、担当者を選び直す制度ではありません。

陳述後に忌避の原因が生じた場合や、その後に原因があることを知った場合は、陳述後にも申し立てられる例外があります。問題となる事情と、その事情をいつ知ったかを別々に整理します。結論への不満と、誠実な鑑定を妨げる事情を混ぜません。

忌避を認める決定には不服を申し立てられず、理由がないとする決定には即時抗告ができます。裁判官の忌避と似た言葉でも、対象は鑑定人です。この判断を、鑑定結果のすべてが正しい又は誤りだと決めたことに置き換えません。

鑑定の根拠と判決の判断を分ける

裁判長は、鑑定人に書面等又は口頭で意見を述べさせられます。意見を明瞭にしたり根拠を確認したりする必要があれば、裁判所は申立て又は職権でさらに意見を求められます。最初の結論だけでなく、何を前提にした意見かが重要です。

書面等で示された事項は当事者へ提示する規定があります。読むときは、鑑定の対象、使った資料、前提、結論の範囲を対応させます。ある条件のもとでの専門的判断を、条件が違う事実へ無制限に広げないようにします。

裁判所は、口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果を考慮し、自由な心証によって事実を認定します。鑑定は判断の材料ですが、それだけで判決を自動決定する規定ではありません。専門的な意見と、他の証拠を含む裁判所の認定を分けて確認します。

専門意見から判決へ
  1. 指定

    学識経験と担当できる条件を確認

  2. 鑑定

    対象・前提・意見・根拠を読む

  3. 事実認定

    裁判所が弁論と証拠全体を考慮

忌避は担当者の事情、追加意見は鑑定の内容や根拠という別の問いです。

架空の建物の損傷を巡る鑑定

建物の損傷原因を争う民事裁判で、裁判所が専門家Gを鑑定人に指定したとします。Gが特定の資料と前提のもとで原因について意見を述べたなら、その前提と結論の範囲を確認します。Gの名前と短い結論だけでは、判断の根拠が分かりません。

意見の前提が別の証拠と食い違うと考える場合は、どこが違うかを整理します。鑑定の内容を明瞭にする追加意見の問題と、Gの誠実な鑑定を妨げる事情による忌避は別です。専門家の意見が出たことから、最終判決の内容はまだ決まりません。

持ち帰る見方

  • 鑑定人の指定と、意見の前提・範囲を確認する。
  • 専門家の結論と裁判所の最終判断を同じにしない。

次に広がる疑問

  • 裁判官が当事者の親族なら、その裁判を担当してよい?
  • 民事裁判の証人は、質問に必ず全部答えなければならない?

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出典

  • 民事訴訟法(e-Gov法令検索(日本))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

鑑定人は専門知識を持つ人を裁判所が指定する

必要な学識経験を有する者は鑑定義務を負い、鑑定人は受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する。

対象
日本の鑑定人の指定・忌避・方法と証拠評価。2026年10月7日現在。
条件
民事訴訟法212・213条。
例外・限界
証言又は宣誓を拒める一定の地位等にある者には鑑定人になれない場合がある。
  • 民事訴訟法(e-Gov法令検索(日本))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109

誠実な鑑定を妨げる事情があれば忌避できる

鑑定人の誠実な鑑定を妨げる事情があるとき、原則として陳述前に当事者は忌避を申し立てられる。

対象
日本の鑑定人の指定・忌避・方法と証拠評価。2026年10月7日現在。
条件
214条。
例外・限界
陳述後に原因が生じ又は知った場合は陳述後も可能。結論が気に入らないことだけと区別する。
  • 民事訴訟法(e-Gov法令検索(日本))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109

鑑定の根拠と判決の判断を分ける

鑑定人には書面等又は口頭で意見を述べさせ、必要に応じ追加の意見を求められる。裁判所は弁論全趣旨と証拠調べ結果を考慮して事実認定する。

対象
日本の鑑定人の指定・忌避・方法と証拠評価。2026年10月7日現在。
条件
215・247条。216条は証人関連規定の準用。
例外・限界
鑑定人の専門意見だけが判決を自動的に決めるとは定めていない。
  • 民事訴訟法(e-Gov法令検索(日本))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109