政治の仕組み
裁判官が当事者の親族なら、その裁判を担当してよい?
民事訴訟では、法定の親族関係などがある裁判官は職務から除斥されます。公正を妨げる事情を当事者が申し立てる忌避と、裁判官が許可を得て担当を外れる回避も区別します。
基本の用語
政府から裁判官が独立していることと、特定の事件で当事者との利害関係がないことは別の問題です。ここでは日本の民事訴訟で、事件を担当する裁判官の制限を扱います。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 裁判官を内閣が任命するなら、判決も政府が決める?個々の裁判の独立、司法行政上の監督の限界、罷免・懲戒・任期の構造を説明する。
親族など法定の関係では除斥される
民事訴訟では、裁判官と当事者に法律が列挙する関係がある場合、その裁判官は職務の執行から除斥されます。例えば、裁判官本人、その配偶者又は配偶者だった人が事件の当事者である場合が含まれます。担当裁判官が有利な判断をしてくれそうかという予測で決める制度ではありません。
親族の場合にも具体的な範囲があります。当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族、同居の親族である又はあった場合などです。「親族らしい」という説明だけで、あらゆる遠い親族を自動的に除斥とはしません。また、親族だけが除斥の原因ではなく、事件について証人や代理人になった場合などの関係も列挙されています。
公正を妨げる事情について忌避を申し立てる
法定の親族関係などとは別に、裁判の公正を妨げる事情がある場合、当事者は裁判官の忌避を申し立てることができます。除斥が具体的な法定関係を基にするのに対し、忌避では当事者が公正を妨げる事情を示します。自分に不利な判断をされたことと、公正を妨げる事情があることは同じではありません。
申立ての時点にも条件があります。その裁判官の面前で弁論をしたり、弁論準備手続で申述したりした後は、原則として忌避できません。ただし、忌避の原因を知らなかった場合や、その後に原因が生じた場合は例外です。どんな事情があるかに加え、いつ知り、どの手続を既にしたかを確認します。
担当裁判官自身が自分の忌避を決めない
除斥・忌避の申立てでは、その原因を明示して、裁判官が所属する裁判所へ申し立てます。期日にする場合を除き書面で行い、原因は申立てをした日から3日以内に疎明する規定です。疎明は、原因を支える事情を示すことです。別の担当者にしてほしいという希望だけで、除斥や忌避の認定まで済んだとはいえません。
決定する裁判所にも規定があります。地方裁判所の裁判官の場合は所属する裁判所が合議体で判断し、簡易裁判所の裁判官の場合は、その所在地を管轄する地方裁判所が判断します。対象の裁判官は、自分の除斥・忌避についての裁判に関与できません。申立てを受ける場面と、認めるかどうかを判断する場面を分けます。
理由があるとする決定には不服を申し立てられず、理由がないとする決定には即時抗告ができると定められています。これは担当裁判官の除斥・忌避に関する決定の扱いです。事件そのものの判決へ控訴・上告することとは、対象となる判断が違います。
回避は裁判官から担当を外れる手続
当事者から申し立てる忌避に対し、回避の主体は裁判官です。除斥又は忌避に当たる法定事情があるとき、裁判官は監督権を持つ裁判所の許可を得て回避できます。裁判官が自分の好みだけで担当をやめる仕組みではありません。
除斥では法定関係、忌避では当事者の申立てとその原因、回避では裁判官側からの手続と許可に注目します。政府から独立して裁判するという原則があっても、個々の事件で当事者との関係を確認する必要は残ります。制度の主体と、どの事情を確認するかを分けて読むと整理できます。
担当裁判官が当事者の配偶者だった場合
架空の例
民事訴訟の当事者Aさんの配偶者が、担当裁判官であるという設定を考えます。この場合は、自分に不利な判決になりそうかを先に予想する問題ではなく、法律が列挙する除斥の関係を確認する問題になります。
一方、法定の親族関係などはないが、公正を妨げる具体的事情があると当事者Bさんが考える場面では、忌避の原因と申立ての条件を確かめます。「負けそうだから別の裁判官にしてほしい」という希望だけとは分けます。
持ち帰る見方
- 除斥は法定の関係、忌避は当事者が示す公正を妨げる事情を確かめる。
- 申立ての条件と、その対象の裁判官が決定に関与できないことを分ける。
- 回避は裁判官からの手続で、監督権を持つ裁判所の許可を要する。
次に広がる疑問
- 政府からの独立と、事件ごとの利害関係を分ける
- 公正を妨げる事情について、何を資料で示すか考える
- 担当への忌避と、判決への控訴・上告を分ける
順番に読んでいる方へ
出典
民事訴訟法(2026-06-24明示版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109_20260624_508AC0000000046
確認日:2026-10-04
民事訴訟規則(最高裁判所)https://www.courts.go.jp/assets/080521minnsokisoku.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
親族など法定の関係では除斥される
民事訴訟法23条は裁判官自身等が当事者である場合や、当事者の四親等内血族・三親等内姻族・同居親族である又はあった場合など、列挙する関係では職務執行から除斥されると定める。
- 対象
- 日本、2026年10月5日時点。民事訴訟法(2026年6月24日施行版)の該当規定。過去の手続・行為は経過措置により適用が異なる場合がある。
- 条件
- 民事訴訟の裁判官と当事者の、23条各号に定める関係。親族については四親等内の血族、三親等内の姻族、同居の親族である又はあった場合という範囲がある。
- 例外・限界
- あらゆる遠い親族まで自動的に除斥としない。前審関与等の6号には受託裁判官の例外がある。
民事訴訟法(2026-06-24明示版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109_20260624_508AC0000000046
公正を妨げる事情について忌避を申し立てる
民事訴訟の当事者は裁判の公正を妨げるべき事情がある裁判官を忌避できる。ただし、その裁判官の面前で弁論等をした後は、原因を知らなかった又は原因が後から生じた場合を除き忌避できない。
- 対象
- 日本、2026年10月5日時点。民事訴訟法(2026年6月24日施行版)の該当規定。過去の手続・行為は経過措置により適用が異なる場合がある。
- 条件
- 当事者による忌避。裁判の公正を妨げるべき事情という要件。
- 例外・限界
- 単に自分に不利な結果という説明だけで法定要件を満たすとしない。具体的な不公正事情の判断はこの教材で確定しない。
民事訴訟法(2026-06-24明示版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109_20260624_508AC0000000046
担当裁判官自身が自分の忌避を決めない
除斥・忌避は所属裁判所等が決定で裁判し、対象の裁判官はその裁判に関与できない。申立ては原因を明示し、期日外では書面で行い、原因は申立てから3日以内に疎明する。
- 対象
- 日本、2026年10月5日時点。民事訴訟法(2026年6月24日施行版)と民事訴訟規則第10・12条の該当規定。過去の手続・行為は経過措置により適用が異なる場合がある。
- 条件
- 民訴25の所属裁判所/簡裁では所在地を管轄する地裁、地裁の裁判は合議体。規則10の申立て手続。
- 例外・限界
- 理由あり決定は不服不可、理由なし決定は即時抗告可。申立てだけで除斥/忌避の認定が完了するとはしない。
民事訴訟法(2026-06-24明示版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/408AC0000000109_20260624_508AC0000000046
民事訴訟規則(最高裁判所)https://www.courts.go.jp/assets/080521minnsokisoku.pdf
回避は裁判官から担当を外れる手続
裁判官は除斥又は忌避の法定事情があるとき、監督権を有する裁判所の許可を得て回避できる。当事者が忌避を申し立てる手続とは主体が異なる。
- 対象
- 日本、2026年10月5日時点。民事訴訟規則第10・12条の該当規定。過去の手続・行為は経過措置により適用が異なる場合がある。
- 条件
- 民事訴訟規則12。規則が参照する民訴23条1項又は24条1項の事情。
- 例外・限界
- 裁判官の自由な好みだけで担当を外れる制度ではなく、監督権を有する裁判所の許可を要する。
民事訴訟規則(最高裁判所)https://www.courts.go.jp/assets/080521minnsokisoku.pdf