金融と企業のお金
引当金を計上したら、同じ額の現金を積み立てたことになる?
引当金は、将来払う時期や金額が不確実な義務を会計へ記録するものです。計上しただけで、現金を別口座へ移したことにはなりません。IFRSのIAS37では、現在の義務や資源流出の見込みなどを確かめ、引当金の認識と、偶発債務の注記を区別します。
基本の用語
負債には、金額と支払日がはっきりした借入だけでなく、不確実さを含む義務もあります。義務の記録と、支払に備えた資金の保有は別です。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 会社の資産が多ければ、使えるお金も多い?貸借対照表は一つの日の残高を示す。
支払の不確実さがあっても、義務を記録する
商品の保証修理や汚染した土地の原状回復などでは、義務があっても、最終的な支払額や時期が未確定の場合があります。IAS37は、時期又は金額が不確実な負債を引当金と定義します。見込みの全てを自由に費用として積む仕組みではありません。
義務には法律上の義務のほか、企業の行動によって責任を果たすとの期待を相手に作った推定的義務も含まれます。計上には、現在の義務、解決に資源が出ていく見込み、金額を信頼性をもって測れることなどを確かめます。
「来年の営業が赤字になりそう」という予想だけでは、期末時点の義務がないため、IAS37の引当金は認識しません。将来の不安と、既に引き受けた義務を分けることが大切です。測定でもリスクや不確実さを考慮し、将来の支払は現在価値で考えます。
引当金と現金の取り分けは別
引当金の計上は、義務を帳簿へ記録する行為です。その額の現金が金庫へ入ったり、専用口座へ移されたりするとは限りません。「引当金があるから支払資金も同額ある」と読むと、負債の記録と資産の内訳を混同します。
保証修理の見込額を20万円と記録しても、その日に20万円を修理先へ払ったとは限りません。後に修理費が発生して払うときは、実際の受払を別に追います。帳簿の見積額と、最終的な現金支払額が一致するとも限りません。
支払に備えて現金を持つ判断は、引当金の認識とは別に必要です。見積もりの不確実さ、いつ支払が来るか、資金を用意できるかを組み合わせます。義務を記録済みであることだけから、その会社の資金繰りが安全だとは結論できません。
計上されない不確実な義務も注記に出る
不確実な出来事で存在が確認される可能性のある義務や、流出の見込みが十分でない義務などは、偶発債務として扱う場合があります。IAS37では、これを貸借対照表の負債へ認識せず、資源流出の可能性が遠い場合を除き注記します。
したがって、表の負債合計だけを見て「不確実な支払の問題はない」とは判断できません。注記では対象、見通し、理由を確認します。逆に注記されていることだけで、支払が必ず生じるともいえません。認識する額と、説明する不確実さは役割が違います。
引当金を読むときは、どの義務を、どの時点で、どんな見積もりに基づいて記録したかを確かめます。IAS37の原理を説明しており、日本の全企業の個々の引当項目が同じ基準で決まるという意味ではありません。採用基準と、実際の資金準備も一緒に読みます。
保証修理の見込額を計上する店
架空の店が、販売済み商品の保証修理について、認識の条件を満たす見込義務20万円を計上したとします。その日に修理代を払わず、現金を別口座へ移すこともない例です。
負債には20万円が記録されますが、手持ちの現金が20万円増えたわけではありません。後の支払が18万円だったとしても、最初の20万円は支払の確定額ではなく、期末の見積もりだったと分けて読みます。
仮に店の現金残高が10万円なら、引当金20万円の記録があるだけでは、そのまま20万円の支払に使えません。必要になった時点の資金をどう用意するかは、義務の見積もりとは別に確かめる問いです。
持ち帰る見方
- 不確実な現在の義務と、将来の赤字予想を分ける。
- 引当金計上と現金積立を同一にしない。
- 表への認識と偶発債務の注記を合わせて読む。
次に広がる疑問
- キャッシュ・フローが増えたら、本業が好調になった?
- 監査済みの決算なら、会社の将来も保証される?
順番に読んでいる方へ
出典
IAS 37 Provisions, Contingent Liabilities and Contingent Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-37-provisions-contingent-liabilities-and-contingent-assets/
確認日:2026-10-04
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
支払の不確実さがあっても、義務を記録する
IAS37の引当金は時期又は金額が不確実な負債で、法律上又は推定的義務を含む。資源流出の蓋然性等が必要である。
- 対象
- IAS37の不確実な負債の認識と測定、偶発債務の注記、現金準備との違いを説明する。
- 条件
- 現在義務と信頼性ある測定
- 例外・限界
- 将来営業損失だけでは計上しない
IAS 37 Provisions, Contingent Liabilities and Contingent Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-37-provisions-contingent-liabilities-and-contingent-assets/
引当金と現金の取り分けは別
引当金は義務の記録で、計上しただけで現金が別口座へ移るわけではない。
- 対象
- IAS37の不確実な負債の認識と測定、偶発債務の注記、現金準備との違いを説明する。
- 条件
- 将来保証修理費を計上、当日支払なし
- 例外・限界
- 実際の資金準備の有無は別途確認
IAS 37 Provisions, Contingent Liabilities and Contingent Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-37-provisions-contingent-liabilities-and-contingent-assets/
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
計上されない不確実な義務も注記に出る
IAS37の偶発債務は貸借対照表へ認識せず、資源流出が遠い場合を除き注記する。
- 対象
- IAS37の不確実な負債の認識と測定、偶発債務の注記、現金準備との違いを説明する。
- 条件
- 可能性/信頼性要件の未充足等
- 例外・限界
- 注記は支払の確定でも問題不存在でもない
IAS 37 Provisions, Contingent Liabilities and Contingent Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-37-provisions-contingent-liabilities-and-contingent-assets/