政治の仕組み
代理人だと思って契約した人に、代理権がなかったら?
本人が追認しなければ、原則として本人に契約の効力は届きません。相手方は追認を求めたり、条件を満たせば取り消したりできます。代理人への請求と本人への請求も分けます。
基本の用語
代理とは、他人のために契約をして、その効果を他人へ直接帰属させる仕組みです。契約する人と、お金を払う義務を負う人が違うことがあります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 契約は紙に署名しないと成立しない?申込みと承諾、法令の特則を確かめる。
本人に効力が届く条件
代理の場面には、契約の効果を受ける本人、本人に代わって契約する代理人、取引の相手方がいます。民法の原則では、代理人が権限の範囲内で、本人のためにすることを示して契約すれば、本人へ直接に効力が生じます。代理人が自分のために買う契約とは違います。
ところが、代理権がない人が本人の代理人として契約した場合は、本人が後から認める「追認」をしなければ、本人には原則として効力が生じません。取引の相手方から見ると、代理人を名乗る人と話がまとまっても、本人へ支払いや引渡しを求められるかは別の問題です。
名刺や肩書があることだけでは、その取引を任されたと決まりません。一方、権限があるように見える事情によって本人の責任が問題になる「表見代理」の規定もあります。権限の有無、本人の追認、表見代理の条件を分け、単に「権限がなかった」という説明だけで全てを終わらせないようにします。
追認を待つ側の選択
相手方が本人の返事を待ち続けるしかないわけではありません。本人へ相当な期間を定め、追認するかどうかの確答を求めることができます。これを催告といいます。この催告に対し、本人が期間内に確答しなければ、追認を拒絶したとみなされます。無回答を承認と扱う仕組みではありません。
また、本人が追認する前なら、相手方には契約を取り消す道があります。ただし、契約した時に代理権がないと知っていた相手方は、この取消しを使えません。後になって権限がないと分かった場合と、初めから知って契約した場合を区別します。
追認がされると、別段の意思表示がない限り、原則として契約時にさかのぼって効力が生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません。追認を求めたこと、追認されたこと、実際に代金が支払われたことは、それぞれ異なる出来事です。
無権代理人の責任も条件付き
代理人を名乗った人自身にも責任を問える場合があります。代理権を証明した場合や本人の追認を得た場合を除き、民法117条は、相手方の選択に従って契約の履行又は損害賠償の責任を負うと定めます。本人の契約上の義務と、無権代理人自身の責任を混ぜないことが大切です。
この責任には適用されない場合もあります。相手方が権限のないことを知っていた場合、相手方の過失で知らなかった場合、代理人を名乗った人が行為能力の制限を受けていた場合などです。ただし、相手方に過失があっても、代理人自身が無権限だと知っていた場合には、その過失を理由とする除外にはなりません。
したがって、代理人だと言われたという一点だけで、本人か代理人のどちらかへ必ず全額を請求できるとはいえません。誰が契約を認め、誰が何を知り、どの責任の条件を満たすのかを、契約内容とやり取りに沿って確認します。
- 本人
契約を追認するか判断する
- 相手方
確答を求める催告や、条件付きの取消しを検討する
- 無権代理人
第117条の条件を満たせば履行・賠償の責任が問題になる
三人の役割の比較です。表見代理や相手方の認識によって適用が変わります。
機械を買った三人の関係
架空の例
AさんがBさんの代理と名乗り、Cさんから機械を10万円で買いました。しかしBさんは購入を任せていませんでした。表見代理も成立しないと仮定すると、Cさんが請求書を送っただけではBさんの支払義務は生じません。
CさんがBさんへ相当な期間を定めて追認の返事を求め、Bさんがその期間内に答えなければ、追認を拒んだ扱いです。追認前にCさんが取消しを選べるかは、契約時に無権限を知っていたかでも変わります。さらにAさん自身への履行・賠償の請求は、AさんとCさんの認識等を踏まえた別の判断になります。
持ち帰る見方
- 本人への契約の効力と、無権代理人自身の責任を分ける。
- 返事を求める催告では、無回答は追認拒絶と扱われる。
- 取消しや賠償には、相手方や代理人の認識等の条件がある。
次に広がる疑問
- 契約の合意が成立することと、本人へ効力が届くことを分ける
- 行為能力の制限を受ける未成年の契約の取消し条件を読む
- 法律上の代理権と、仕事を任せるときの監督の問題を比べる
順番に読んでいる方へ
出典
民法(法令API本文)(デジタル庁(e-Gov法令検索))https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/129AC0000000089
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
本人に効力が届く条件
代理人が権限内で本人のためであることを示して行う意思表示は本人へ直接効力が生じる。無権代理の契約は本人が追認しなければ本人に効力を生じない。
- 対象
- 日本の民法(2026年6月24日施行の改正を反映した本則)。過去の行為では経過措置により適用される規定が異なる場合がある。
- 条件
- 他人の代理人としてした契約。
- 例外・限界
- 109・110・112条の表見代理を満たす場合は別に検討する。
民法(法令API本文)(デジタル庁(e-Gov法令検索))https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/129AC0000000089
追認を待つ側の選択
相手方は相当期間を定め本人に追認の確答を求められ、期間内の無回答は拒絶とみなされる。追認前に取消しも可能だが、契約時に無権限を知った相手は取り消せない。
- 対象
- 日本の民法(2026年6月24日施行の改正を反映した本則)。過去の行為では経過措置により適用される規定が異なる場合がある。
- 条件
- 催告先は本人、取消しは追認前。
- 例外・限界
- 追認は原則契約時に遡るが第三者の権利を害せない。
民法(法令API本文)(デジタル庁(e-Gov法令検索))https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/129AC0000000089
無権代理人の責任も条件付き
無権代理人は代理権の証明や本人の追認がなければ相手方の選択で履行または損害賠償責任を負う。相手方の悪意・過失や行為能力の制限には適用除外がある。
- 対象
- 日本の民法(2026年6月24日施行の改正を反映した本則)。過去の行為では経過措置により適用される規定が異なる場合がある。
- 条件
- 相手方の過失による不知では代理人自身の悪意のただし書を確認。
- 例外・限界
- 代理人と名乗れば常に本人か代理人に全額請求できるわけではない。
民法(法令API本文)(デジタル庁(e-Gov法令検索))https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/129AC0000000089