国際関係

相手国が条約に違反したら、こちらも全部守らなくてよい?

相手の違反を理由に、こちらの義務がすべて自動的に消えるわけではありません。条約法上の「重大な違反」に当たるか、二国間か多国間か、誰との関係で何を終了・停止するかを確認します。人道的な人の保護規定には特別な歯止めがあります。

基本の用語

終了は将来の条約関係を終えること、運用停止は一定の義務の適用を止めることです。ここでは1969年ウィーン条約法条約が適用される国家間の書面条約の制度を読みます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

どんな違反かを先に確かめる

第60条の重大な違反とは、条約法条約が認めない条約の否認、又は条約の趣旨・目的の達成に不可欠な規定への違反です。小さな不備が見つかったという説明を、そのまま重大な違反に置き換えません。何を約束し、どの規定がなぜ不可欠なのかが必要です。

二国間条約で一方が重大な違反をした場合、他方は終了又は全部・一部の運用停止の根拠として援用できます。「援用できる」は、違反の発生だけで条約が消えるという意味ではありません。予定する措置の範囲も区別します。

損害の回復を求める国家責任の問題と、条約関係をどうするかは別の問いです。賠償を要求したという報道だけでは、条約を終了させる主張も行ったか分かりません。対象条約、違反とされた行為、求める対応を対応させます。

多国間では関係と措置が分かれる

多国間条約では、違反国以外の当事国が全員一致で合意すれば、違反国との関係又は全当事国間で、所定の停止や終了を行えます。ある一国が不満を表明しただけで、関係のない国どうしの義務まで終える制度ではありません。

特に影響を受けた国は、自国と違反国の関係で全部・一部の停止を援用できます。また一国の重大な違反が、すべての国のその後の履行上の立場を根本的に変える性質の条約では、違反国以外の国が自国について停止を援用する規定があります。

全員一致の措置、特に影響を受けた国の措置、条約の特殊な性質による措置では、主体と範囲が違います。「多国間条約の違反」とまとめず、どの立場の国が、誰との間で、終了と停止のどちらを主張したかを読みます。

保護規定と手続を飛ばさない

第60条は条約自身が違反時の対応を定める場合の規定を害しません。さらに第1〜3項は、人道的な性質の条約に含まれる人の保護規定、特に保護対象者への報復を禁じる規定には適用されません。相手が守らないから人への保護も外す、とはいえません。

第65条は、予定する措置と理由を他の当事国へ通知することを求めます。他国が異議を出した場合には、平和的な手段で解決を求めます。違反を主張した時点と、根拠や手続を満たして停止・終了する時点を分けます。

条約法条約の時間的適用や関係国の留保も確認します。ニュースの結論を評価するには、個別条約の規定と具体的事実が必要です。ここでの一般則だけで実在の違反や終了の有効性まで判定することはできません。

重大な違反への対応で比べる三つ
  • 二国間

    相手国が終了・全部又は一部の停止を援用

  • 多国間

    主体と関係に応じた所定の措置

  • 保護規定

    人道的な人の保護に第60条1〜3項を使わない

重大な違反の要件、条約固有の規定、通知手続を満たすかは別に確認します。

三国の条約で一国が違反したら

A・B・C国が共同観測を約束した架空の例です。A国が中核となる観測情報の提供を拒み、B国が重大な違反だと主張しました。まずその義務が条約の目的に不可欠かを調べます。

B国が特に影響を受けたとしてA国との関係の停止を求める話と、B・C国が全員一致でより広い措置を合意する話は別です。B国の発表だけでB・C国間の義務まで消えたとは読みません。

持ち帰る見方

  • 重大な違反の内容を、条約の目的と規定から確かめる。
  • 多国間では国の立場と措置の範囲を分ける。

次に広がる疑問

  • 条約から脱退すると言えば、その日に義務はなくなる?
  • 国が国際法に違反したら、どんな責任が生じる?
  • 時代が変わったら、古い条約は一方的にやめられる?

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

どんな違反かを先に確かめる

重大な違反は許されない条約の否認又は趣旨目的に不可欠な規定への違反で、二国間条約では相手国が終了又は全部・一部の停止の根拠として援用できる。

対象
1969年条約の基本規定。第4条の時間的適用による:第60条1–3項
条件
重大な違反という第60条3項の定義、二国間・多国間、特別影響を受けた国等の立場による。第65条通知。
例外・限界
人道的な人の保護規定には第60条1–3項不適用。固有の違反条項を害さない。
  • Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf

多国間では関係と措置が分かれる

多国間では他の当事国の全員一致による措置、特に影響を受けた国の相手との停止等を分け、どの国も条約全部を一方で消せるとしない。

対象
1969年条約の基本規定。第4条の時間的適用による:第60条2項
条件
重大な違反という第60条3項の定義、二国間・多国間、特別影響を受けた国等の立場による。第65条通知。
例外・限界
人道的な人の保護規定には第60条1–3項不適用。固有の違反条項を害さない。
  • Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf

保護規定と手続を飛ばさない

条約固有の違反時規定を害さず、人道的条約の人の保護規定には第60条1–3項を適用しない。援用には理由・措置の通知手続がある。

対象
1969年条約の基本規定。第4条の時間的適用による:第60条4–5項・65条
条件
重大な違反という第60条3項の定義、二国間・多国間、特別影響を受けた国等の立場による。第65条通知。
例外・限界
人道的な人の保護規定には第60条1–3項不適用。固有の違反条項を害さない。
  • Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf