国際関係
一つの商品の生産が何か国にも分かれるのはなぜ?
商品を丸ごと一つの国で作る代わりに、部品、加工、組立などを場所ごとに分担することがあります。工程に必要な費用や能力が違うからです。ただし、遠くの工程に頼ると、そこでの停止が次の工程にも届くため、安さと供給を続ける条件の両方を考えます。
基本の用語
供給網とは、材料や部品、サービスが生産から販売へ届くつながりです。付加価値は、仕入れたものに加工などで新しく加えた価値。完成品の売値の全てが、最後の組立場所で生まれた価値ではありません。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 外国と取引すると、誰が得をする?比較優位・分業と分配の違い
完成品だけが貿易されるわけではない
国境を越えるのは店で売る完成品だけではありません。原材料、部品、途中まで加工した品物、設計や物流などのサービスも取引されます。OECDは、原材料や部品などが、同じ商品の生産過程で国境を複数回越えることを説明しています。
例えば、材料を作る場所、部品を加工する場所、組み立てる場所を分ければ、一つの商品の完成までに複数の国が関わります。工場名や「製造国」の表示一つだけでは、材料の調達先や途中の工程がどこにあるかまで分かりません。工程を順に追うと全体が見えてきます。
工程ごとに、作りやすい場所が違う
企業の活動の一部を海外へ移すことを、オフショアリングと呼びます。COREの教材は、費用の低い場所へ生産を移す例を示しています。同じ企業の海外拠点へ移す場合も、別の企業に生産を委ねる場合もあり、海外生産と外部委託は同じ意味ではありません。
工程ごとに必要な材料や設備、働く人の能力が違うと、分けて生産する選択が考えられます。一方、輸送や連絡にも費用がかかるため、「賃金が安い国なら何でも任せる」とは限りません。これは分業の選択を考える見方で、特定企業の立地理由を一つに断定する説明ではありません。
輸出額と、そこで生まれた価値は違う
ある国が輸入した部品を組み立てて輸出すると、輸出額には、部品の価値も含まれます。その輸出額全体をその国で新しく生まれた価値と読むと、前の工程の価値まで含めてしまいます。国境を何回通ったかと、各工程でどれだけ価値が加わったかを分けます。
OECDの付加価値貿易のデータは、価値がどこで生まれたかを捉えるために用意されています。「この国への輸出額が大きい」という見出しでも、最終的な購入者や、どの国の工程で得られた価値かは別の確認です。取引の総額と付加価値は異なる問いに答えます。
安さと、止まったときの備えを比べる
供給網には、災害、地政学上の緊張、通信への攻撃などのリスクもあります。部品が一つ欠ければ組立ができないという条件なら、小さな部品の停止でも全体へ伝わります。調達先の数だけでなく、代わりの部品を使えるか、在庫がどれだけあるかも見ます。
国内へ戻せば必ず安定する、海外なら必ず危険だ、とは言えません。同じ災害で複数の調達先が同時に止まることも考えられます。OECDも国内回帰だけで供給網の強さが保証されるとはしていません。安さ、代替のしやすさ、復旧までの時間を一緒に比べる必要があります。
部品一つの停止を考える場合にも、使い道を見ます。欠けても別の部品へ置き換えられる商品と、特定の部品がなければ完成できない商品では、同じ供給停止でも影響が違います。架空の工程図では簡単に矢印でつながりますが、実際の代替や品質確認に必要な条件は個別に調べます。
- Aの材料
100の価値を生む
- Bの加工品
100に50を加え、150で次へ
- Cの完成品
150に50を加え、200で完成
税・輸送費等を省いた架空の値。途中の輸出額を全て新しい価値として足さない。
材料から完成品までを追う
A国で材料100の価値が生まれ、B国で50の加工価値が加わり、C国で50の組立価値が加わる架空の例です。税・運送費・在庫の変化を省きます。AからBへ100、BからCへ150の品物が輸出され、Cでは200の完成品になります。
途中の輸出額100と150を足した250は、最終製品200の価値とは一致しません。同じ材料の価値が途中の取引に繰り返し含まれるからです。この足し算は、どの国の生産性や利益が高いかを計算したものではありません。
考えるときの注意点
- 工程の数字と国名は架空です。実際の国際産業連関表ではありません。
- 政策や個別企業の最適な調達先をこの概説だけで決めることはできません。
持ち帰る見方
- 商品は途中の工程でも国境を越える。
- 輸出額には、前の工程の価値も入る。
- 供給網の強さは代替と復旧の条件まで見る。
次に広がる疑問
- 付加価値を足すGDPの考え方を知る
- 材料と加工から原産地条件を考える
- 取引が制限される経路を追う
順番に読んでいる方へ
出典
Global value and supply chains(OECD)https://www.oecd.org/en/topics/global-value-and-supply-chains.html
確認日:2026-10-04
The Economy 1.0 — Unit 18 The nation and the world economy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy/v1/book/text/18.html
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
完成品だけが貿易されるわけではない
国際供給網では原材料・部品・サービスが工程の途中で国境を複数回越えることがある。
- 対象
- OECDのGVC概念説明
- 条件
- 工程と国境通過を分ける
- 例外・限界
- 全商品が多国間分業されているという意味ではない
Global value and supply chains(OECD)https://www.oecd.org/en/topics/global-value-and-supply-chains.html
工程ごとに、作りやすい場所が違う
費用差を理由に企業の活動の一部を海外へ移すことがあり、企業内移転と他企業委託の両方がある。
- 対象
- CORE offshoring概念
- 条件
- 費用差は立地動機の一つ
- 例外・限界
- 費用だけで全企業の配置を説明しない
The Economy 1.0 — Unit 18 The nation and the world economy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy/v1/book/text/18.html
輸出額と、そこで生まれた価値は違う
輸出の総額と生産工程で追加された価値は区別し、供給網の強さは災害等への対応条件で考える。
- 対象
- OECD TiVAとリスクの説明
- 条件
- 架空の部品・加工例で二重加算を説明
- 例外・限界
- 国内回帰や調達先数の増加だけで必ず安定するとは言えない
Global value and supply chains(OECD)https://www.oecd.org/en/topics/global-value-and-supply-chains.html
安さと、止まったときの備えを比べる
輸出の総額と生産工程で追加された価値は区別し、供給網の強さは災害等への対応条件で考える。
- 対象
- OECD TiVAとリスクの説明
- 条件
- 架空の部品・加工例で二重加算を説明
- 例外・限界
- 国内回帰や調達先数の増加だけで必ず安定するとは言えない
Global value and supply chains(OECD)https://www.oecd.org/en/topics/global-value-and-supply-chains.html