経済の基礎

為替介入をすると、国内のお金も必ず増える?

外貨購入で国内へ供給する資金を、別の取引で吸収すれば、合わせた国内流動性への効果は相殺できます。これが不胎化です。資金効果の相殺と、中央銀行が持つ資産の構成、為替相場が実際にどう動いたかは、それぞれ別に見ます。

基本の用語

流動性はここでは金融機関などが決済に使う資金を指します。中央銀行が自国通貨で外貨を直接買う取引と、国内の資金を吸収する別の操作を同じ通貨・期間で比べる、単純な取引モデルを考えます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

外貨の売買で、国内の資金も動く

中央銀行が外貨を買い、相手へ自国通貨を支払うと、その直接取引は国内の資金を供給する方向に働きます。外貨を売って自国通貨を受け取る逆の取引は、国内の資金を吸収する方向になります。

外貨を得たというだけでは、どの方法を使ったかは分かりません。外国通貨を借りたり、交換と将来の逆取引を組み合わせたりする方法は、直接購入とは資金や負債への作用が違う場合があります。

別の取引で、国内への資金効果を相殺する

外貨購入で供給した自国通貨と同額を、別の国内市場取引で吸収する設定なら、二取引の国内流動性への効果は打ち消し合います。RBAの説明は、不胎化を国内市場取引や為替スワップによる相殺として扱います。

国内証券の売却は、資金吸収を考える一つの具体例です。日本銀行の公開市場操作の説明にも、保有する国庫短期証券の売却による資金吸収があります。ただし、同じ資金吸収という働きがあっても、各国の為替介入で誰が決定し、どの取引を使うかという制度まで同じとは限りません。

資金の純増減と、資産の構成を分ける

同額の外貨購入と保有国内証券の売却を組み合わせれば、資金効果を相殺しながら、中央銀行の外貨資産が増え、国内資産が減る設定になります。保有資産の構成まで元に戻るわけではありません。

また、外貨を持つリスクや費用が相殺だけでなくなるとは言えません。国内流動性の純増減という問いから、民間の預金や貸出、あらゆる価格まで全て不変だと広げることもできません。

流動性を相殺しても、相場の結果は別に確かめる

相殺したという記録は、国内流動性の資金効果を説明します。為替が動かなかった、あるいは意図した方向へ必ず動いたという証拠ではありません。資金操作の仕組みと、価格の結果を分けます。

RBAの原著記事は、相場の変化が介入を呼ぶ逆因果や、介入の目的によって評価が変わる問題も挙げます。同時に相場が動いたことだけで効果を決めず、介入前の状況、市場条件、何を目的としたかを確かめる必要があります。

架空の例同じ期間の二取引と、資金効果の差引き
  • 外貨を購入

    自国通貨100万円を供給する。

  • 保有国内証券を売却

    自国通貨100万円を吸収する。

  • 国内流動性の差引き

    この二取引では0。資産構成は変わる。

同じ通貨・決済期間で合わせる二取引。評価変動、手数料、ほかの操作を省き、資金の純増減と資産構成を比べています。

外貨購入と国内証券の売却を合わせる

架空の例

中央銀行が外貨を買うために100万円の自国通貨を支払い、同じ期間に保有国内証券を100万円で売って自国通貨を受け取ると置きます。評価変動や手数料、ほかの操作を省く設定です。

国内流動性への供給100万円と吸収100万円は、合わせると差し引き0です。一方、外貨資産は増え、保有国内証券は減ります。資金の純増減が0でも、中央銀行が何を持つかは変わります。為替の結果を知るには、この二取引の計算とは別に相場の動きと条件を確かめます。

持ち帰る見方

  • 外貨売買と、国内資金を相殺する別取引を合わせて見る。
  • 流動性の相殺、資産構成、為替の結果を分ける。

次に広がる疑問

  • 資金を供給・吸収する市場操作を読む
  • 通貨の売買と交換比率を読む
  • 固定為替と自由な資金移動の制約を読む

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Foreign Exchange Reserves and the Reserve Bank’s Balance Sheet (Bulletin, December 2012)(Christian Vallence / Reserve Bank of Australia)https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2012/dec/pdf/bu-1212-7.pdf

    確認日:2026-10-05

  • Foreign Exchange Market Intervention (Bulletin, December 2011)(Vicki Newman, Chris Potter, Michelle Wright / Reserve Bank of Australia)https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2011/dec/pdf/bu-1211-7.pdf

    確認日:2026-10-05

  • オペレーション(公開市場操作)にはどのような種類がありますか?(日本銀行)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/seisaku/b34.htm

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

外貨の売買で、国内の資金も動く

中央銀行が自国通貨を支払って外貨を直接購入すると、その取引は国内の資金を供給する方向に働く。外貨を売って自国通貨を受け取る取引は、逆に資金を吸収する方向として考える。

対象
中央銀行が自国通貨と外貨を売買し、別の資金操作で国内流動性への効果を相殺する単純な取引モデル。
条件
自国通貨で決済する直接の売買を考え、他の操作や評価変動を別にする。
例外・限界
借入れやスワップによる外貨取得は、同じ資金効果とは限らない。
  • Foreign Exchange Reserves and the Reserve Bank’s Balance Sheet (Bulletin, December 2012)(Christian Vallence / Reserve Bank of Australia)https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2012/dec/pdf/bu-1212-7.pdf

別の取引で、国内への資金効果を相殺する

不胎化は、外貨売買による国内流動性への影響を、別の国内市場取引などで相殺する操作である。外貨購入に伴う資金供給と同額を吸収する設定なら、二つを合わせた流動性の増加は相殺される。

対象
中央銀行が自国通貨と外貨を売買し、別の資金操作で国内流動性への効果を相殺する単純な取引モデル。
条件
同じ期間・通貨の決済額で、相殺する二取引の資金効果をそろえる。
例外・限界
相殺の手段は一つに限られず、実際の操作の期限や決済条件は異なる。
  • Foreign Exchange Market Intervention (Bulletin, December 2011)(Vicki Newman, Chris Potter, Michelle Wright / Reserve Bank of Australia)https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2011/dec/pdf/bu-1211-7.pdf

  • オペレーション(公開市場操作)にはどのような種類がありますか?(日本銀行)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/seisaku/b34.htm

資金の純増減と、資産の構成を分ける

流動性の資金効果を相殺しても、中央銀行が保有する外貨資産や国内資産などの構成は変わりうる。資金の純増減と、どの資産を持つかは別の問いである。

対象
中央銀行が自国通貨と外貨を売買し、別の資金操作で国内流動性への効果を相殺する単純な取引モデル。
条件
外貨の購入と国内保有証券の売却を組み合わせるモデルでは、外貨資産が増え国内資産が減る。
例外・限界
流動性の相殺だけから、外貨リスク・費用・民間の預金や貸出まで全部不変とはいえない。
  • Foreign Exchange Reserves and the Reserve Bank’s Balance Sheet (Bulletin, December 2012)(Christian Vallence / Reserve Bank of Australia)https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2012/dec/pdf/bu-1212-7.pdf

  • Foreign Exchange Market Intervention (Bulletin, December 2011)(Vicki Newman, Chris Potter, Michelle Wright / Reserve Bank of Australia)https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2011/dec/pdf/bu-1211-7.pdf

  • オペレーション(公開市場操作)にはどのような種類がありますか?(日本銀行)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/seisaku/b34.htm

流動性を相殺しても、相場の結果は別に確かめる

不胎化で国内流動性への影響を相殺したことと、為替にどんな効果があったかは別である。介入の効果を調べるには、介入に至る相場の変化や市場条件、目的も区別する必要がある。

対象
中央銀行が自国通貨と外貨を売買し、別の資金操作で国内流動性への効果を相殺する単純な取引モデル。
条件
資金操作の機序と、介入の実際の結果を分けて読む。
例外・限界
不胎化なら為替が必ず不変、または必ず意図した方向へ動くとはいえない。
  • Foreign Exchange Market Intervention (Bulletin, December 2011)(Vicki Newman, Chris Potter, Michelle Wright / Reserve Bank of Australia)https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2011/dec/pdf/bu-1211-7.pdf