国際関係
国債の返済条件は、債権者全員が賛成しないと変えられない?
国債の契約に集団行動条項があれば、所定の多数の承認で返済条件を変更し、反対や欠席の債権者も拘束する仕組みがあります。ただし、必要な割合や集計方法は契約次第です。国債全てへ一律に75%という法律が適用されるわけではありません。
基本の用語
債券の返済条件と変更手続は契約に定めます。多数決の基準は、債権者の人数と保有元本額のどちらかで意味が違います。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 国債で支出すると、何が将来へ残る?借入・利払い・借換えと持続性
多数決で、反対者も含めた変更を可能にする
返済条件の変更へ全員の同意が必要なら、少数の不同意者が残ることで変更が難しくなる場合があります。集団行動条項は、あらかじめ定めた承認条件を満たす変更が、反対者等にも効力を持つ仕組みです。多数の債権者の意思と、契約の拘束範囲をつなぎます。
具体的に、ICMAの2015年英法モデルは、元利金額、支払日などの重要事項の単一系列の変更について、残存元本額75%以上の承認を定めます。人数の75%ではありません。正しく成立した決議は、賛成しなかった人や会合に出なかった保有者も拘束します。
ここでの割合はモデル契約条項の例です。実際の国債がどの条項を採用したか、重要事項に何が入るか、会合や書面決議の条件は何かを確認します。モデルが公表されていることだけで、全ての既発債の契約が書き換わったとはしません。
一系列の多数と、複数系列の集計は違う
国が満期の異なる複数の債券系列を発行している場合、系列ごとに合意を求める方法と、系列をまたいで集計する方法で結果が違います。一系列では反対が多くても、合計では賛成が大きいという組合せを置けます。対象となる系列の範囲が条件です。
ICMAモデルの一段階方式は、所定の同一適用等の条件を満たす提案に、対象系列をまとめた残存元本額75%以上を求めます。二段階方式では合計66と3分の2%以上に加え、各系列で50%超の条件があります。二つは同じ多数決ではありません。
一段階の数字だけを取り出して、どんな変更でも合計75%ならよいとは言えません。同一適用などの要件がどの提案に当てはまるかも読みます。対象から外れる債券や、別の契約の債務まで同じ決議で当然に変わるという説明もしません。
誰の保有を、議決の分母へ入れるか
議決では賛成額だけでなく、議決対象となる残存額の分母も必要です。ICMAモデルは、発行者やその支配下の主体などが保有する債券を、所定の条件で除外します。発行者自身の支配する保有を、独立した債権者の賛成と同じように加算するのを避ける規定です。
実際の判定では、支配の定義、対象保有、価額の換算、決議の手続を契約で確かめます。賛成保有額の一覧だけで、必要割合を計算できるとは限りません。元本のうち何が分母に入り、どの系列で集計するかをそろえます。
返済条件の変更に合意したことと、債務が無条件に消えたことも別です。どの金額や日付が、どんな手続で変更されたかを読むのが出発点です。変更後の返済能力や価格への効果は、契約の多数決条件だけから決まるものではありません。
仮の一系列の例では、元本70を持つ一人の賛成が、10ずつ持つ三人の賛成より大きな額になります。人格や意見の重要さを比較したのではなく、契約が元本額を議決の単位にした結果です。人数での多数と額での多数が違うことを確認してから、複数系列の方式ではどの範囲の元本を合計するかへ進みます。
- 三人が賛成
保有10+10+10=30。基準75に届かない。
- 二人が賛成
保有70+10=80。額の基準へ届く。
議決対象元本100。ICMAモデルの重要事項の書面決議と手続充足を仮定。
人数と保有額がずれる一系列
架空の例
ICMAモデルの重要事項の書面決議を採用し、議決対象の残存元本が100と仮定します。四人の保有額が70、10、10、10なら、10ずつ持つ三人だけが賛成しても合計30です。四人中三人という人数の75%では条件を満たしません。
70の人と10の人が賛成すれば合計80で、75の額の基準へ届きます。これは手続等も満たす一系列の仮定です。発行者の支配保有の除外や複数系列の条件を確認せず、実際の国債の可決を判定する例ではありません。
持ち帰る見方
- 集団行動条項は、契約で定める多数決の仕組み。
- 人数ではなく保有元本額、系列の集計方法を読む。
- 議決資格と分母、手続を確認してから割合を計算する。
次に広がる疑問
- 信用格付けが高い債券なら、損をする心配はない?
- 社債の利回りが上がったら、会社の信用が悪くなった?
出典
ICMA Standard Aggregated Collective Action Clauses(May 2015)(International Capital Market Association)https://www.icmagroup.org/assets/documents/Resources/ICMA-Standard-CACs-Pari-Passu-and-Creditor-Engagement-Provisions---May-2015.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
多数決で、反対者も含めた変更を可能にする
ICMA2015英法モデルでは元利金額や支払日等の重要事項の変更を単一系列の残存元本額75%以上で承認し、反対・欠席者も拘束する条項を置く。
- 対象
- 2015年モデル契約条項であり、全現行国債への法律ではない
- 条件
- 実際の債券契約が採用した条項・対象シリーズ・議決資格・基準による
- 例外・限界
- 多数決は保有元本額基準。発行者支配保有の除外、単一/複数系列の違い、一律75%としない
ICMA Standard Aggregated Collective Action Clauses(May 2015)(International Capital Market Association)https://www.icmagroup.org/assets/documents/Resources/ICMA-Standard-CACs-Pari-Passu-and-Creditor-Engagement-Provisions---May-2015.pdf
一系列の多数と、複数系列の集計は違う
モデルは複数系列をまとめる集計方式を用意し、一括75%の方式には同一適用等の条件、二段階方式には合計と各系列の基準がある。
- 対象
- 2015年モデル契約条項であり、全現行国債への法律ではない
- 条件
- 実際の債券契約が採用した条項・対象シリーズ・議決資格・基準による
- 例外・限界
- 多数決は保有元本額基準。発行者支配保有の除外、単一/複数系列の違い、一律75%としない
ICMA Standard Aggregated Collective Action Clauses(May 2015)(International Capital Market Association)https://www.icmagroup.org/assets/documents/Resources/ICMA-Standard-CACs-Pari-Passu-and-Creditor-Engagement-Provisions---May-2015.pdf
誰の保有を、議決の分母へ入れるか
議決対象となる残存額には発行者等が支配する保有を除く規定があり、債券契約の議決資格と手続を確かめる必要がある。
- 対象
- 2015年モデル契約条項であり、全現行国債への法律ではない
- 条件
- 実際の債券契約が採用した条項・対象シリーズ・議決資格・基準による
- 例外・限界
- 多数決は保有元本額基準。発行者支配保有の除外、単一/複数系列の違い、一律75%としない
ICMA Standard Aggregated Collective Action Clauses(May 2015)(International Capital Market Association)https://www.icmagroup.org/assets/documents/Resources/ICMA-Standard-CACs-Pari-Passu-and-Creditor-Engagement-Provisions---May-2015.pdf