お金と金融
銀行口座を作るとき、なぜ本人確認が必要?
口座の名義と実際の取引の当事者を確かめ、犯罪で得た財産が別の名義や取引を通って移されることを防ぐためです。本人確認だけでなく、取引の目的や職業などの確認、記録の保存も法律上の仕組みに含まれます。確認されたことと犯罪認定は別です。
基本の用語
日本の犯罪収益移転防止法では、銀行などの特定事業者に一定の確認義務があります。銀行口座の開設を中心に見ますが、すべての金融取引で同じ項目を同じ方法で確かめる制度ではありません。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 振込をすると銀行の間では何が動く?顧客の預金と、銀行の決済用口座を分ける。
口座の名義と取引の目的を確かめる
預貯金口座の開設は、取引時確認の対象となる取引の一つです。通常の個人の取引では、氏名、住居、生年月日などの本人特定事項に加え、取引を行う目的や職業を確認します。名義が誰かという情報と、どんな取引のためかという情報を組み合わせます。
制度の目的は、犯罪によって得た財産の移転を防ぐことです。正しい名義だけを書けば、犯罪収益の移転に使われる可能性がなくなるとはいえません。その人の属性や申告した目的と、実際の取引の様子を合わせて見るための確認です。
確認方法や対象項目は、個人・法人、通常の取引・高いリスクのある取引などで異なります。どの手続でも同じ書類一枚で済むと決めることはできません。口座開設が法律上の対象であることと、具体的な書類の組合せを分けて理解します。
手続する人と取引の当事者が違う場合
手続する人が、常に取引の当事者とは限りません。誰が取引の意思決定を行い、利益が実際に誰へ帰属するかを合わせて顧客を判断します。名義の人が書類を持参したという事実だけでは、実際の取引の当事者まで決まりません。
代理人が手続する場合などには、顧客の確認に加え、手続する人の本人と、その人が顧客のために手続する権限を確かめます。本人の証明と、他人を代理する権限の証明は別の問いです。法人の取引では、法人を実質的に支配する人の確認なども関わります。
口座開設後も記録と確認が続く
対象取引の確認に応じない場合、特定事業者は応じるまでその取引の義務の履行を拒むことができます。本人確認は手続が終わったことを飾る形式ではなく、取引を進める条件に関わります。永久に取引できないという一律の説明ではありません。
確認した内容の記録と、実際の取引の記録には保存義務があります。確認記録は契約が終了した日などから7年間、取引記録は取引をした日から7年間という違いがあり、少額取引などの例外もあります。「7年」という数字だけで起算点を同じにしません。
確認情報を最新に保つ措置や、条件に応じた疑わしい取引の届出も制度の一部です。資金の流れをたどれるようにし、疑いのある情報を捜査などへつなぎます。確認や届出は、その人が犯罪を行ったと確定する判決ではありません。
口座の名義を貸すことは確認を崩す
他人になりすまして使う目的の通帳などの取得や、その目的を知った譲渡、正当な理由なく対価を得る譲渡などには、法律上の罰則があります。口座を売ったり、実際の利用者を隠すために名義を使わせたりする問題は、口座開設時の名義が正しかっただけでは解消しません。
一方、適切な権限を確かめた代理手続まで、一律に不正な名義貸しと呼ぶことはできません。誰が何の目的で利用し、どの権限で行動しているかが重要です。名義の文字列だけでなく、取引の実態を見るという制度の考え方につながります。
本人の証明と、代理の権限を分ける
架空のAさんが、自分のための口座手続をBさんへ頼む場面を考えます。Bさん自身の氏名などを確認しても、それだけではBさんがAさんのために手続してよいかは分かりません。Aさんについての確認と、Bさんの本人・代理権限の確認を分けます。
Aさんの名前を使いながら、実際はBさんが自分のために取引を決め、利益も受け取る場面なら、同じ「Bさんが手続した」でも実態が違います。誰が当事者なのかを、名前だけで決められない理由です。この設定だけで個別の犯罪成立を判定する例ではありません。
持ち帰る見方
- 名義、取引の目的、実際の当事者を合わせて確かめる。
- 確認の記録・取引の記録と、犯罪の確定を区別する。
次に広がる疑問
- 取引の合意とその実行を分ける
- 前払いの残高がどんな権利かを読む
順番に読んでいる方へ
出典
犯罪による収益の移転防止に関する法律(e-Gov法令検索/法令所管府省)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/419AC0000000022
確認日:2026-10-04
犯罪収益移転防止法の概要(警察庁JAFIC)https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20260807.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
口座の名義と取引の目的を確かめる
犯罪収益移転防止のため、銀行等は法律上対象となる取引で取引時確認を行う。預貯金口座の開設は対象取引の一つで、通常の自然人顧客では氏名・住居・生年月日、取引目的、職業などを確認する。
- 対象
- 日本の犯収法第1・4条と警察庁概要第3〜5章
- 条件
- 銀行の口座開設を中心に説明
- 例外・限界
- 全ての金融取引で同一項目・同一方法ではない。法人・代理人・高リスクの扱いは別
犯罪による収益の移転防止に関する法律(e-Gov法令検索/法令所管府省)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/419AC0000000022
犯罪収益移転防止法の概要(警察庁JAFIC)https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20260807.pdf
手続する人と取引の当事者が違う場合
顧客は名義だけでなく、取引の意思決定や利益の帰属を総合して判断される。代理人等が手続する場合は顧客の確認に加え、手続する人の本人と権限を確かめ、法人では実質的支配者等も対象となる。
- 対象
- 日本の警察庁概要第4章と法第4条
- 条件
- 顧客・代表者・法人の実質的支配者を区別
- 例外・限界
- 国・上場企業等の例外がある。全代表者が法的代表権を持つとは限らず委任等もある
犯罪による収益の移転防止に関する法律(e-Gov法令検索/法令所管府省)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/419AC0000000022
犯罪収益移転防止法の概要(警察庁JAFIC)https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20260807.pdf
口座開設後も記録と確認が続く
確認に応じるまで銀行等が対象取引の義務の履行を拒むことができる。確認記録と取引記録の作成・保存、確認情報を最新に保つ措置、条件に応じた疑わしい取引の届出も制度の一部である。
- 対象
- 日本の犯収法第5〜8・11条
- 条件
- 確認と取引記録の目的を説明し、顧客の有罪判定とは区別
- 例外・限界
- 確認記録は契約終了等から7年、取引記録は取引日から7年と起算が異なる。少額取引等例外。永久拒否や全ての取引の犯罪認定ではない
犯罪による収益の移転防止に関する法律(e-Gov法令検索/法令所管府省)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/419AC0000000022
犯罪収益移転防止法の概要(警察庁JAFIC)https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20260807.pdf
口座の名義を貸すことは確認を崩す
他人になりすますための預貯金通帳等の取得や、その目的を知った譲渡、正当な理由なく対価を得た譲渡等には犯収法の罰則がある。名義だけ整っていても、実際の利用者を隠すことの問題はなくならない。
- 対象
- 日本の犯収法第26条
- 条件
- 不正譲渡の目的や対価・正当理由という法定条件を付ける
- 例外・限界
- あらゆる代理手続や家族の預かりを一律犯罪としない。罰則年数・額と将来施行予定措置は本記事に使わない
犯罪による収益の移転防止に関する法律(e-Gov法令検索/法令所管府省)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/419AC0000000022