国際関係

外国で被害を受けた人のために、母国は相手国へ請求できる?

母国が、外国国家の違法行為による自国民の損害について国際的な請求をする仕組みを、外交的保護と呼びます。日常の領事支援とは異なり、国籍や現地の救済手続などが問題になります。ILCの条文草案による整理では、国家が行使する権利として位置付けられています。

基本の用語

領事の支援と、国家が国際法上の責任を請求することは異なります。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

人への支援と国家の請求は違う

海外で弁護士の情報を得たり、旅券の発給を受けたりする領事支援と、外交的保護は同じものではありません。国連国際法委員会、ILCの2006年条文草案は、外国国家の国際違法行為による自国民等への損害について、その責任を外交活動や平和的な紛争解決の手段で援用することを外交的保護として整理しています。

草案は国家の権利として行使を位置付け、重大な損害などの場合の考慮や被害者の意見への配慮を推奨します。被害を申し出れば母国が必ず国際請求するという個人の当然の権利とはしていません。また、この文書はILCが採択した草案であり、全体が普遍的な条約として発効したものではありません。実際の法的請求は、適用される国際法と特別な条約を確認します。

請求する国と被害者の国籍を結ぶ

草案は国籍国による保護を原則とし、個人については損害の時点から正式な請求の時点まで国籍が継続することを基本にします。都合のよい国籍を後から得れば、どんな過去の被害もその国の請求にできる、という整理ではありません。一方、国家承継などに関する例外もあり、二つの時点の国籍とその変化の理由を分けて確かめます。

重国籍の場合には第三国への請求と、本人も国籍を持つ国への請求を区別します。無国籍者や認定された難民には、合法かつ通常の居住などを条件とする別の整理があります。ただし、難民の国籍国が与えた損害への請求へ、この難民の特則は適用しません。国籍や居住という言葉一つだけで、どの国が請求できるかを決めないようにします。

現地の救済と特別な手続を確かめる

草案第14条は原則として、被害者が相手国の利用可能な司法・行政上の救済を尽くす前に国際請求をしないと整理します。国家へ請求を持ち上げる前に、現地の制度で救済する機会を考えるためです。本人の苦情申立て、現地の裁判、母国からの国際請求は、別の主体と段階になります。

ただし、有効な救済が合理的に利用できない、相手国に帰せられる不当な遅延がある、救済の利用を明らかに妨げられている場合などの例外も挙げます。救済手続の名前が存在すれば無意味な申立てを永久に続ける、という整理ではありません。投資保護などの特別規則との関係もあるため、外交的保護だけで利用できる全手続を説明したことにはなりません。

同じ損害についても、被害者の現地での訴え、領事による連絡支援、母国の国際請求は、別の主体が行う対応です。母国が相談を受けていることから国際請求を決定したとは言えず、現地での救済が続いていることから領事支援を受けられないとも言えません。草案の概念と条件は、これらの対応を区別して理解する手がかりになります。個別事件では、利用する手段とその法的な根拠を対応させます。

母国への相談から請求までの架空の例

A国民がB国で行政処分を受け、国際法に違反し損害が出たと主張します。A国の領事機関が弁護士への連絡を助けることと、A国がB国の責任を国際的に追及することは別です。相談の受理だけでは国家の請求が始まったとは言えません。

草案の整理で検討するなら、どの義務への違反か、関連する時点の国籍、B国で利用できる救済とその結果を確かめます。救済が有効に利用できない場合の例外や、特別条約の手続も別に調べます。被害の訴えと請求の条件を結び付けて考えます。

持ち帰る見方

  • 領事支援と、国家による国際法上の請求を分ける。
  • ILC草案の地位を踏まえ、国籍・救済・特別規則を読む。

次に広がる疑問

  • 海外で困ったら、大使館は何をしてくれる?
  • 国が国際法に違反したら、どんな責任が生じる?

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出典

  • Draft articles on Diplomatic Protection(2006年)(United Nations International Law Commission)https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/draft_articles/9_8_2006.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

人への支援と国家の請求は違う

ILCの2006年草案は、外国国家の国際違法行為による自国民等への損害について母国が責任を援用する外交的保護を定義し、その行使を国家の権利として整理する。

対象
2006年ILC採択条文草案。成立した普遍的条約ではない
条件
草案として概念・条件を説明。実際の請求は国際法と特別条約による
例外・限界
国籍継続・重国籍・無国籍/難民・国内救済例外・投資特別条約を区別
  • Draft articles on Diplomatic Protection(2006年)(United Nations International Law Commission)https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/draft_articles/9_8_2006.pdf

請求する国と被害者の国籍を結ぶ

草案は個人の国籍の継続を原則とし、重国籍や無国籍者・難民の保護に特別な条件を置く。

対象
2006年ILC採択条文草案。成立した普遍的条約ではない
条件
草案として概念・条件を説明。実際の請求は国際法と特別条約による
例外・限界
国籍継続・重国籍・無国籍/難民・国内救済例外・投資特別条約を区別
  • Draft articles on Diplomatic Protection(2006年)(United Nations International Law Commission)https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/draft_articles/9_8_2006.pdf

現地の救済と特別な手続を確かめる

草案は原則として国内救済完了を要求し、有効な救済が合理的に利用できない場合等の例外を挙げ、投資保護など特別規則との関係を定める。

対象
2006年ILC採択条文草案。成立した普遍的条約ではない
条件
草案として概念・条件を説明。実際の請求は国際法と特別条約による
例外・限界
国籍継続・重国籍・無国籍/難民・国内救済例外・投資特別条約を区別
  • Draft articles on Diplomatic Protection(2006年)(United Nations International Law Commission)https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/draft_articles/9_8_2006.pdf