数字と報道
賛成率が同じなら、100人中の賛成人数はいつも同じになる?
同じ賛成確率を置いても、100人中の賛成人数は標本ごとに変わります。固定回数、独立、同じ確率という条件の下で、その成功回数を表すのが二項分布です。平均回数と実際の回数を分け、調査が模型の条件に合うかを確認します。
基本の用語
確率pは一回の結果についての数字、成功回数Xはn回の試行をまとめた数字です。ここでの成功は数える側の結果の名称で、良いことという意味ではありません。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 世論調査の数%の差は、どこまで信じられる?標本誤差と、非回答などの偏りを分ける。
- 検査が陽性でも、病気のある人の割合が違うのはなぜ?「病気なら陽性」と「陽性なら病気」は分母が違う。
回数と成功の意味を固定する
賛成か反対かの二結果を、100回の試行で数えるとします。各回の賛成確率pが同じで、結果が独立なら、賛成回数は二項分布で表せます。回数を先に固定すること、二結果に分けること、独立で確率一定という条件を一組として考えます。
二結果は調べたい問いに合わせて定義します。賛成を成功と呼ぶことは、その意見が正しいという判断ではありません。無回答をどちらに含めるかが変われば、確率の対象も変わります。三つの選択肢をそのまま二結果の模型へ入れないようにします。
同じ世帯の回答が互いに関わる、対象ごとに確率が異なる、といった条件なら基本の模型とずれます。無作為調査という名称だけで、すべての試行が同じ確率の独立試行だと確定しません。実際の抽出や対象の数え方を別に確認します。
平均と散らばりを分ける
二項成功回数の平均はnpです。100回、確率0.6なら期待回数は60ですが、必ず60回になるわけではありません。Xは0から100までの整数で、その各回数が起こる確率を分布として持ちます。平均一つと分布全体を区別します。
分散はnp(1−p)、標準偏差はその平方根です。100回、p=0.6なら分散24、標準偏差は約4.90回です。これは模型の下で回数が散らばる尺度で、毎回60±4.90回に必ず収まる上下限ではありません。範囲の確率には別の計算が必要です。
回数の平均と割合の平均も単位が違います。60回という平均を100で割ると0.6になります。調査結果の賛成割合を見たときは分母の人数を残します。同じ60%でも、試行数が違えば模型が与える成功回数や割合のばらつきは違います。
人数の確率を合計する
「70人以上」なら70から100までの回数の確率を足します。「70人を超える」なら71からです。二項模型の計算は、ちょうど何回かという確率と、複数回数をまとめた確率を区別します。少数の境目では一人の違いにも意味があります。
「成功6回」を「6人が常に成功する」と読むこともできません。模型は固定した回数の結果をまとめ、その回ごとの成功者の同一性までは示しません。誰の状態が続くかを知りたい問いでは、回数だけでなく対応した観測が必要です。
先に仮定したpと、標本から推定した賛成割合も同じ役割ではありません。既知の確率で回数を予測する問いと、未知の母集団割合を調査から推定する問いを分けます。後者では推定の方法と不確かさを別に考える必要があります。
二項分布は模型の条件を置いた計算道具です。回答の偏りや質問の誤解を、回数の確率計算で除いたことにはなりません。報告を読むときは、何を成功と数え、何回試し、同じ確率と独立性をなぜ置けるかを言葉にします。
10試行の平均回数と全成功(架空)
独立な10試行で、各回の成功確率を0.5とします。成功回数の平均は10×0.5=5回、分散は10×0.5×0.5=2.5です。平均5回でも、結果が4回や6回になることはあり得ます。
全10回成功の確率は0.5を10回掛けて約0.000977です。これは一定確率の試行についての計算で、現実の10人の意見が独立で同じ確率だと確認した結果ではありません。
持ち帰る見方
- 二項模型の回数・独立性・確率一定を実例の調査条件へ照合できる。
- 実際の調査の依存や成功確率の違いを模型の計算だけで消せない。
次に広がる疑問
- 試行回数を固定せず、一日の出来事数を考える模型は?
順番に読んでいる方へ
出典
Introductory Statistics 2e §4.3 Binomial Distribution(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/4-3-binomial-distribution
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
回数と成功の意味を固定する
二項分布は固定したn回の独立試行で成功確率pが一定という模型で、成功回数を数える。
- 対象
- 試行回数を固定し、独立かつ同じ成功確率を仮定した成功回数。
- 条件
- 二結果、試行数固定、独立、同一成功確率。
- 例外・限界
- 成功という名前は望ましい結果という価値判断を含まない。
Introductory Statistics 2e §4.3 Binomial Distribution(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/4-3-binomial-distribution
平均と散らばりを分ける
二項成功回数の平均はnp、分散はnp(1−p)である。
- 対象
- 二項模型の成功回数の平均と分散。平均の単位は回、分散は回の二乗。
- 条件
- 上記二項模型。
- 例外・限界
- 期待回数は毎回実現する回数ではない。
Introductory Statistics 2e §4.3 Binomial Distribution(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/4-3-binomial-distribution
人数の確率を合計する
二項模型の成功回数は0からnの整数で、少なくとも何回という確率は該当する回数の確率を足して求める。
- 対象
- 固定した試行回数のうちの成功回数についての確率。
- 条件
- 整数回数を定義し、以上/超/以下を区別。
- 例外・限界
- 実際の調査の依存や成功確率の違いを模型の計算だけで消せない。
Introductory Statistics 2e §4.3 Binomial Distribution(Barbara Illowsky / Susan Dean(著者原教材、OpenStax))https://openstax.org/books/introductory-statistics-2e/pages/4-3-binomial-distribution