国際関係
条約を結ぶときの思い違いがあれば、同意を取り消せる?
思い違いがあっただけでは足りません。条約を結ぶ時に存在すると想定した事実や状況が、同意の不可欠な基礎だったかを確かめます。自ら誤りに寄与した場合や、誤りの可能性に注意すべき事情があった場合には、この理由を使えません。
基本の用語
条約の意味をどう読むかと、結ぶ時の同意に欠陥があったかは別です。ウィーン条約法条約の錯誤の規定を読み、判断を後から変えたことと区別します。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 国内の手続に違反した条約は、国際的にも無効になる?履行の国内法理由と同意の欠陥を分ける。
どの思い違いが同意の基礎だったか
第48条は、国が条約を結んだ時に存在すると想定した事実又は状況の誤りを扱います。それが条約に拘束される同意の不可欠な基礎を成していた場合、その国は錯誤を同意の無効の理由として援用できます。援用とは、その根拠を主張に用いることです。
まず、どんな事実を前提にしたのか、実際にはどうだったのかを分けます。その違いが見つかっても、合意内容の中心と結び付かなければ、不可欠な基礎という条件を説明できません。些細な誤記が一つあったという情報と、国の同意を支えた事実が違ったという情報は別です。
締結後の出来事や政策判断の変化を、締結時にあった事実の錯誤へ置き換えません。「現在なら賛成しない」という意見より、当時何を想定して同意したかがこの条文の問いです。
錯誤の説明では「前提を知らなかった」と「前提について誤った事実を想定した」も分けます。条文が問いにしているのは締結時に想定した事実・状況です。合意に何も影響しない周辺情報と、なければその同意を支えられない基礎を並べると、どの部分について証拠が必要かが明確になります。単に後悔したという発言から、その基礎を作らないことが大切です。
自分の行動と文言の誤りを分ける
第48条2項は、その国が自らの行動で錯誤に寄与した場合と、誤りの可能性に注意すべき事情があった場合を除きます。前提が違ったことに加え、国自身がどう行動し、どのような事情に置かれていたかが必要です。
例えば不確かな資料を使ったというだけで、直ちに錯誤の条件を満たしたとも、必ず除外されたとも決められません。どの情報を持ち、どの行動が誤りへ寄与したのかを具体化します。結果だけから締結時の注意の条件を推定しない読み方です。
一方、条約の文言だけの誤りは、第48条3項では有効性に影響せず、第79条で扱います。印字や文章の誤りを直す問いと、事実の錯誤による同意の無効を主張する問いを、同じ「間違い」でまとめません。
知った後の受入れと主張手続を読む
錯誤の事実を知った後の態度も関わります。第45条は、有効性を明示的に受け入れた場合や、行動によって黙認したとされる場合に、無効理由を援用する権利を失い得ると定めます。最初の事情だけでなく、その後の合意や行動も読みます。
第65条では、主張する国が予定する措置と理由を他の当事国へ通知します。他国が異議を示した場合には、平和的な手段による解決を求めます。政府の発表があることと、国どうしの争いが解決したことは別の段階です。
実在する条約では、条約法条約第4条の時間的適用や関係国の留保も確かめます。判断の材料は、締結時の前提、同意との関係、国自身の行動、知った後の態度、主張の手続という順に整理できます。
地図の前提と誤記を比べる架空の例
A国とB国が施設を共同利用する条約で、ある区域に水源があることを合意の不可欠な基礎にしたと仮定します。実際にはその水源がなかった場合、A国がどの事実を想定し、それが同意をどう支えたかを調べます。自らの寄与や注意すべき事情も残る問いです。
別に、施設名の綴りが一文字違っていたとします。こちらは文言の誤りの問いです。二つを同じ誤りとして扱わず、この設定だけで条約全体が無効になったとは決めません。
持ち帰る見方
- 何を誤認したかに加え、同意の基礎、自らの行動、知った後の受入れを対応させます。
次に広がる疑問
- 文章の意味を読む一般則を確かめる
- 締結権限の欠陥との違いを読む
- 相手の詐欺で同意した場合を比べる
順番に読んでいる方へ
出典
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
どの思い違いが同意の基礎だったか
締結時に存在すると想定した事実又は状況に錯誤があり、それが同意の不可欠な基礎だった場合、国は同意の無効の理由として援用できる。
- 対象
- 1969年条約法条約第48・45・65条
- 条件
- 締結時に想定した事実・状況と同意の不可欠な基礎
- 例外・限界
- 自ら錯誤へ寄与又は錯誤可能性を知るべき事情、文言のみの誤り。第4条の時間的適用、関係国・留保を個別確認。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
自分の行動と文言の誤りを分ける
自らの行動で錯誤へ寄与した国や錯誤の可能性に注意すべき事情があった国には第48条1項は適用されない。条文の文言のみの誤りは有効性に影響せず第79条で扱う。
- 対象
- 1969年条約法条約第48・45・65条
- 条件
- 締結時に想定した事実・状況と同意の不可欠な基礎
- 例外・限界
- 自ら錯誤へ寄与又は錯誤可能性を知るべき事情、文言のみの誤り。第4条の時間的適用、関係国・留保を個別確認。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
知った後の受入れと主張手続を読む
事実を知った後に有効性を明示的に受け入れ又は行動から黙認とされると第45条の援用権を失い得る。第65条は予定措置と理由の通知、異議があれば平和的解決を求める。
- 対象
- 1969年条約法条約第48・45・65条
- 条件
- 締結時に想定した事実・状況と同意の不可欠な基礎
- 例外・限界
- 自ら錯誤へ寄与又は錯誤可能性を知るべき事情、文言のみの誤り。第4条の時間的適用、関係国・留保を個別確認。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf