財政と暮らし
財政見通しの数字は、将来の予算として決まっている?
財政見通しは、将来の経済や政策に条件を置いて計算した結果です。その年の予算が既に決まったことや、将来その数字が実現する保証とは違います。成長率、金利、歳入歳出の仮定、集計の範囲を読むことが、試算の意味を知る入口です。
基本の用語
予算は支出等を認める計画、実績は起きた結果、試算は置いた条件から求める見通しです。政策目標も、この三つとは別に示すものです。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 予測の幅と、複数のシナリオは何が違う?点予測・将来値の予測区間・平均の推定区間・前提を変えるシナリオを区別する。
三つのケースは、異なる前提の結果
内閣府の2026年7月30日提出の中長期試算は、成長戦略実現ケース①、成長戦略実現ケース②、現状投影ケースの三つを示しています。成長戦略の効果がどの程度現れるか等について、異なる条件を置いています。名前が「実現」でも実現が確認済みという意味ではありません。
それぞれに生産性、投資、労働参加等の想定があり、経済の姿と財政の姿を関連付けて計算します。表の末尾の債務比率だけを見るより、どの条件からその結果になったかを追うことが大切です。経済の前提を変えたまま財政の数字だけを比較すると、差の理由を見失います。
三つ並んでいることは、それぞれが3分の1の確率で起きることを意味しません。内閣府は、試算にはさまざまな不確実性があり、後の年度ほど不確実性が大きいことに留意を求めています。条件の違いを示すケースと、確率を付けた予測区間を区別します。
税収・支出・金利は、置いた条件で変わる
財政の計算では、税収等がマクロ経済の姿と整合的に推移するという想定を置きます。経済が成長するケースの税収を、成長しないケースにもそのまま持ってくることはできません。所得や消費等の変化と税収の関係を、一組の条件として読みます。
歳出についても、社会保障には高齢化や物価・賃金等、ほかの一般歳出には物価・賃金等の想定があります。追加財政支出について、具体的な内訳が未確定の部分を機械的に仮定する箇所もあります。試算表に数字が入っていても、その額が国会で各年の事業予算として議決されたとは限りません。
債務の利払いには金利も関わります。成長の想定が有利に働く一方、金利上昇が負担を増やす場合もあるので、一つの条件だけを変えて結論を断定しません。資料の主要な想定や脚注を確かめ、どの要因を同時に動かしているかを見ます。
黒字の指標と、債務の範囲をそろえる
基礎的財政収支、PBは利払い等を除く政策的経費を税収等で賄えているかを見る指標です。PB黒字を、利払いを含むすべての収支が黒字になった意味へ置き換えてはいけません。国の一般会計と、国・地方を集計した指標でも範囲が異なります。
この7月試算の国・地方の公債等残高は、普通国債、地方債、交付税特別会計借入金等の一定の長期債務を集計し、財政投融資特別会計国債や政府短期証券等を含めていません。別枠管理分の経費・財源を除く扱いもあります。見出しの「債務」を、政府の負債をすべて網羅した数字と受け取らないようにします。
対GDP比なら、分子の債務額と分母のGDPの両方が変わります。比率が下がることと債務額自体が減ることも区別します。資料の版、集計範囲、前提、指標の定義をそろえてから、政策目標との距離や別ケースとの差を読むと、試算の条件を落とさずに考えられます。
成長の前提を変えた二つの町の模型
架空の町で、現在の債務を100万円とします。将来も債務が100万円で、地域の所得総額が100万円から125万円へ増えたと仮定すれば、所得総額に対する比率は100%から80%へ下がります。所得総額が100万円のままなら比率も100%です。
比率の差は、債務返済の実績ではなく、分母の前提の差から生じています。税収、金利、支出を省いた算術で、内閣府のケースや自治体の将来を再現した予測ではありません。
持ち帰る見方
- 試算値と予算・実績・目標を分ける。
- 成長、金利、税収と支出の仮定を一組で見る。
- PBと債務比率の集計範囲を確認する。
次に広がる疑問
- 国債の返済と利払いを読む
- 試算と国会が議決する予算を区別する
順番に読んでいる方へ
出典
中長期の経済財政に関する試算(令和8年7月30日)(内閣府)https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/shisan/2607hontai.pdf
確認日:2026-10-04
基礎的財政収支とは何ですか。何が分かりますか(財務省)https://www.mof.go.jp/faq/budget/01ad.htm
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
三つのケースは、異なる前提の結果
2026年7月内閣府試算は成長戦略の効果の発現条件が違う三ケースを示す条件付きモデル試算。
- 対象
- 内閣府2026年7月30日提出の国・地方の中長期経済財政試算の三ケース
- 条件
- 7月30日提出版、2040年度までの推計。
- 例外・限界
- ケース名に実現保証・確率の意味を付けない。
中長期の経済財政に関する試算(令和8年7月30日)(内閣府)https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/shisan/2607hontai.pdf
税収・支出・金利は、置いた条件で変わる
試算の歳出には高齢化・物価賃金、追加支出等の仮定、歳入にはマクロ経済との整合的な税収仮定を置く。
- 対象
- 内閣府2026年7月版試算の将来の税収・歳出・金利の条件付き想定
- 条件
- 対象版の政策・経済想定を併読。
- 例外・限界
- 仮置きの配分を採決済み予算・実証効果としない。
中長期の経済財政に関する試算(令和8年7月30日)(内閣府)https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/shisan/2607hontai.pdf
黒字の指標と、債務の範囲をそろえる
国・地方のPBと公債等残高比の範囲、別枠管理分、一般会計収支と利払いを区別して読む。
- 対象
- 内閣府2026年7月版の国・地方のPB・公債等残高指標と国の一般会計収支の比較
- 条件
- SNA国地方指標と国一般会計の違い。
- 例外・限界
- 全政府債務の網羅や将来全債務消滅を意味しない。
中長期の経済財政に関する試算(令和8年7月30日)(内閣府)https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/shisan/2607hontai.pdf
基礎的財政収支とは何ですか。何が分かりますか(財務省)https://www.mof.go.jp/faq/budget/01ad.htm